【指導参考事項】
1.課題の分類  水田作
2.研究課題名  水田用葉色票に関する試験
3.期 間  昭和54〜56年
4.担 当  北海道道農試稲2研
       中央農試稲作部圃場管理科
       道南農試作物科
       上川農試水稲栽培科
5.予算区分  受託、道費
6.協力分担  中央農試稲作部栽培第1科
         士別、当麻、旭川、冨良野
         各地区農業改良普及所

7.試験目的
 水稲の窒素栄養の診断に利用できるかどうかを検討する。

8.試験方法
 「イシカリ」「キタヒカリ」を共通品種とし、その他に「しおかり」「空育110号」 「ともゆたか」を供試した。
各年共化成肥料を用い基肥、追肥を含めて10水準の窒素施肥量で栽培した。昭和56年はその地に塩安基肥区、硫安基肥区、追肥施用区なども設けた。葉色は最上位展開葉を単葉測定法で1区5枚以上と測定し、平均値で示した。幼穂形成期および止葉期を共通の測定時期とした。葉色測定後各位から3株を採取し、株全体の生葉身の窒素含有率をインフライザーで分析した。

9.試験結果の要約
 1)葉色の測定の仕方に群落測定法(圃場全体の葉色を測定する)と単葉測定法(個々の葉の葉色を測定する)とがあるが単葉測定法の方が正確に測定できる。葉色の測定は最上位展開葉を単葉測定法でおこなう。
 2)品種、生育時期、場所、環境、年次などにかかわらず葉色が濃い程、葉身の窒素含有率は高い。次式によって葉色から葉身窒素含有率をおおまかに推定できる。
 「イシカリ」(「しおかり」、「ともゆたか」、「空育110号」):幼形期 Y=-0.214+0.752X止葉期 Y=0.387+0.546X
 「キタヒカリ」:幼形期 Y=0.467+0.671X 止葉期 Y=0.886+0.488X 但し Y:葉身N% X:葉色 推定精度 ±0.4〜±0.5% 道南は再検討。
 3)次の葉色値をめやすとして窒素過剰イネをある程度見分けることができる。「イシカリ」:幼形期6.5、止葉期6.0、「しおかり」:幼形期6.0、止葉期5.5、「キタヒカリ」:幼形期5.0、止葉期4.5、この値を越えるとほとんどは窒素過剰状態である。 

10.主要成果の具体的データ

      葉色に対する葉身窒素含有率の回帰

11.普及指導上の注意事項
 1)色票に不慣れな場合、読み取り値に0.5程度の個人差が生じることがある。読み取り値の個人差をできるだけ小さくするために測定前に複数の人で目ならしをおこない正しい判定眼をやしなうことが大切である。また、品種や生育時期によって葉色に対応する葉身窒素含有率は異なるので調査対象となる品種や生育時期の特性によく慣れておくことも大切である。
 2)色票の利用法の一例として窒素過剰状態の診断のめやすを示したが、この指標で全ての窒素過剰イネが見分けられるわけではない。これ以下の葉色でも窒素過剰状態のイネが含まれるので窒素栄養の診断は葉色以外の診断指標も考慮して総合的におこなわなければならない。