【普及奨励事項】
1.課題の分類  分類番号 Ⅶ-a  整理番号 951-1
2.場 所 名   北海道農業試験場
3.新品種候補系統名  てん菜「北海41号」

4.来 歴
 「北海41号」はてん菜研究所で育成された材料を基にして、北海道農試てん菜部においてベアクロス法により育成された単胚二倍体単交配一代雑種であり、種子親には細胞質雄性不稔が利用されている。
 昭和52、53年に北海道内3か所の現地選抜ほ試験に供されてその優れた生産性と高品質性が認められた。次いで、昭和54、55、56年には全道の試験場における8か所の系統適応性検定試験と、製糖会社による4か所の試験に供され、同時に昭和55、56年には全道16か所の現地試験に供されてその地域適応性が検定された。また、昭和54、55、56年には各種の特性検定試験に供されてその特性が調査された。

5.特 性
 「北海41号」は二倍体単胚一代雑種で、草丈は高く、葉姿は直立型である。根形は円錐形で、露肩は中程度で、分岐根は少ない。
 抽苔耐性は「モノミドリ」よりやや弱く、年により当年抽苔することがある。
 褐斑病に対しては「モノミドリ」と同様に抵抗性が強いが、炭疽病菌に対しては一般栽培品種に比べて弱い傾向がある。
 根重は場所により、また年次により多少ふれる事もあるが、「モノミドリ」よりも多収で、「ハイラーべ」及び「カーベメガモノ」と同程度かそれ以上の根重を示す。
 根中糖分は現在栽培されている総べての品種よりも糖分の高い、高糖性の品種である。 有害性窒素、ナトリウム及びカリウムの有害性非糖分は、良品質と云はれている「モノミドリ」よりも更に低く、製糖歩留りの高いすぐれた品種である。

6.試験成績
 てん菜系統適応検定試験(昭和54年〜昭和56年)
場 所 品 種 根  重
(t/10a)
根中糖分
(%)
糖  量
(kg/10a)
対 モ ノ ミ ド リ 比
根  重 根中糖分 糖  量
北 農 試 北海41号 5.15 17.59 905 117 103 120
モノミドリ 4.40 17.14 752 100 100 100
モノヒル 5.11 16.94 863 116 99 115
カーベメガモノ 4.43 16.80 743 101 98 99
ハイラーべ 4.74 17.08 808 108 100 107
中央農試
北海41号 7.06 17.15 1209 110 101 112
モノミドリ 6.44 16.78 1079 100 100 100
モノヒル 7.23 16.15 1167 112 96 108
中央農試
北海41号 5.62 16.21 908 115 101 106
モノミドリ 5.37 16.00 857 100 100 100
モノヒル 6.21 15.50 961 116 97 112
上川農試 北海41号 5.31 17.52 936 119 102 122
モノミドリ 4.45 17.18 770 100 100 100
モノヒル 5.11 16.74 860 115 97 112
カーベメガモノ 4.91 16.68 827 110 97 107
天北農試 北海41号 4.29 17.35 744 114 102 116
モノミドリ 3.77 17.02 643 100 100 100
モノヒル 4.48 16.78 752 119 99 117
カーベメガモノ 4.02 16.76 674 107 98 105
ハイラーべ 4.11 16.90 694 109 99 108
北見農試 北海41号 4.50 18.39 828 111 102 112
モノミドリ 4.07 18.09 740 100 100 100
モノヒル 4.69 17.66 829 115 98 112
カーベメガモノ 4.13 17.91 737 101 99 100
ハイラーべ 4.45 18.11 809 109 100 109
十勝農試 北海41号 5.35 18.51 992 116 102 118
モノミドリ 4.63 18.21 843 100 100 100
モノヒル 5.44 17.80 970 117 98 115
カーベメガモノ 4.84 17.72 866 105 98 103
ハイラーべ 5.01 17.98 900 108 99 107
根釧農試 北海41号 5.03 17.59 889 110 101 111
モノミドリ 4.57 17.49 801 100 100 100
モノヒル 5.36 17.11 919 117 98 115
ハイラーべ 4.82 17.32 837 105 99 104

7.配布しうる種子量  53.OKg

8.採用予定県  北海道

9.栽培適地及ぴ普及見込面積  道央、道南
 とくに褐斑病、低糖分が問題となる地帯に好適する。
 6,000ha

10.栽培上の注意
 1)多肥による増収効果は少ないので、施肥基準を遵守すること。
 2)Phoma菌、炭疽病菌等による種子感染性病害の見られる場合があるので、採種栽培において病害防除を徹底し、原料栽培にあたっても褐斑病に準じた防除を行うこと。