【指導参考事項】
加工トマトの作季拡大に関する試験
加工トマト  栽培 
北海道中央農試
期  間  昭和52〜56年
予算区分
協力分担
1.担  当  園芸部花きそ菜科

2.目  的
 道内での加工トマトの栽培は省力化に向けて進むことが本来の姿であると考えられる。しかし、現在の栽培形態は工場との面績契約で行われ多収するほど収入が増加する。そのため農家から加工トマト栽培法の改善が強く要請されていた。そこで収穫期間を延長するため定植期、育苗日数、トンネル被覆効果等作季拡大に関する試験を実施した。

3.試験方法
 1)(試験1)本文P2・定植期(5月15日、5月25日)、育苗日数(40日、50日)、トンネル(有、無)の3要因を組合せ、「すがの」「早生だるま」を用いて1区4.8㎡(10株)の2区制で昭和54〜56年の3ケ年実施した。栽植密度は120×40cm(208株/a)とした。
 2)(試験2)本文P8・定植期(5月中旬、5月下旬)、トンネル(有、無)、トンネル除去時期(6月10日、6月20日)を昭和52年から55年まで実施した。1区10株の3区制とした。
 3)(試験3)本文P12・時期別果実糖度の測定を昭和52年に行った。

4.結果及ぴ考察
 1)トンネル被覆効果は大きく、収穫始で15〜18日早まり、収量では234〜300Kg/a多収となった。その結果、資材費や労働費が若干多くなったが、1日当りの労働報酬ではマルチ栽培で3,292円なのに対しトンネル栽培では4,234円と約29%増加した。
 2)定植期はトンネル被覆することにより5月上旬となり、従来より10〜15日早植えすることが出来た。
 3)苗齢は50〜55日の熟苗は早期収量を多くするが、全期収量では40〜45日の若苗の方が多収となる場合が多い。
 4)収穫打切りは果実糖度が4%を割る直前であるが、9月20日頃であれば、病害虫等特に異状がない限り問題はない。
 5)トンネルを換気不十分な状態でおくことは、落花・果の原因となり減収となる。
 6)以上の結果から加工トマトのトンネル栽培は40〜45日の若苗を5月上旬に定植し、トンネル被覆して、加工トマトの適温を目標に管理すれぱ7月下旬から収穫始となり、収穫期間も15〜18日延長され、収量的にも234〜300Kg/aほど多収となることが解った。

5.主要な試験データ
(試験1) 「すがの」(昭和54〜56年平均)
区 分 苗の生育 開花始
(月日)
着果始
(月日)
収穫始
(月日)
収量(a当り) 2級率
(%)
8月/全期
(%)
1果重
(g)
未熟果
(a当り)
(kg)
定植期
(月日)
トンネル 育苗日数
(日)
草丈
(cm)
葉数
(枚)
8月内
(kg)
全期(比)
(kg/%)
1.5.15 0 50 22.8 7.8 5.23 6.5 7.27 588 1,109(190) 1.2 53 87 180
2. 〃 0 40 21.6 7.0 5.29 6.9 7.30 657 1,133(194) 0.4 58 89 328
3.5.25 0 50 24.2 7.4 6.1 6.12 8.2 383 957(164) 1.8 40 88 353
4. 〃 0 40 18.0 6.4 6.7 6.16 8.5 266 830(142) 1.0 32 89 374
5. 〃 - 50 24.2 7.4 6.4 6.22 8.14 124 687(118) 16.8 18 87 410
6. 〃 - 40 18.0 6.4 6.11 6.26 8.16 128 583(100) 11.7 22 89 389

収益性
項    目 トンネルマルチ栽培 マルチ栽培
生  産  量 1,133kg 687kg
粗  収  益 35,214円 20,628円
生  産  費 19,634円 12,134円
農 業 所 得 15,580円 8,494円
労 働 時 間 3.68日 2.58日
1日当り労働報酬 4,234円 3,292円

(試験2) 「れいぎょく」
区   別 開花期
(月日)
収 量 (10a当り) 8月/全期
(%)
1果重
(g)
良果率
(%)
奇型果率
(%)
裂果率
(%)
定植期 トンネル 8月内(比)
(kg/%)
全期(比)
(kg/%)
1.5月中旬 0 6.4 6,238(192) 8,912(109) 67 95 76.6 19.7 11.8
2. 〃下旬 0 6.11 3,021(93) 7,730(94) 39 102 65.5 15.2 19.3
3.対  照 - 6.12 3,244(100) 8,196(100) 40 109 56.7 32.2 11.1

トンネル除去時期「れいぎょく」
トンネル
除去日
(月日)
収 量 (10a当り) 個 数
(10a当り)
8月内(比)
(kg/%)
全期(比)
(kg/%)
6.10 7,081(219) 10,209(125) 105,247
6.20 5,001(155) 7,871(96) 84,634
6.30 4,612(142) 7,761(95) 94,646
7.6 1,417(44) 4162(51) 50,145
無トンネル 3,236(100) 8,196(100) 75,193

(試験3) 時期別糖度の変化(S52年)

6.今後の問題点
今後さらに安全多収のため、栽培様式、施肥量、方法につく検討の要有

7.普及指導上の注意事項
 1)定植は地温13℃以上で霜冷害を受けない条件で行う。
 2)トンネル内は昼間22〜26℃の適温を保ち。30℃以上にならない用に換気する。