【指導参考事項】
食用ユリにおける組織培養技術の利用
Ⅰ 茎頂培養技術の確立に関する試験
食用ユリ  繁殖
北海道中央農試
期  間  昭和55〜56年
予算区分  道 単
協力分担
1.担 当  中央農試園芸部

2.目 的  培地条件、培養材料などを検討し、より効率的な茎頂培養技術確立の資料とする。

3.試験方法
 (1)各試験に共通する培養方法
  ①供試品種  「白銀」
  ②培養部位  りん茎、木子、地上茎またはりん片子球の生長点部分
  ③材料の消毒方法  アンチホルミン10倍液に10分間浸漬
  ④材料摘出の大きさ径0.3〜0.5㎜
  ⑤培地条件  基礎培地:Linsmaier&Skoog(LS) NAA:0.3mg/L、シュークロース3.0%、pH:5.5、寒天0.7% ⑥培養条件 温度22±4℃ 照度300〜500Lux 14時間照明
 (2)ハイポネックス(7-6-9)利用の適否について
 (3)NAA濃度について
 (4)シュクロースまたはグルコースの濃度について
 (5)寒天濃度、pHについて
 (6)品種および培養材料について

4.結果および考察
 (1)LS培地により安定した結果が期待されるが、簡便さを考慮すればハイポネックス培地を利用することができる。濃度は0.3〜0.5%、またイノシトール、塩酸チアミンを添加することにより改善される。
 (2)NAAは0.1〜0.3mg/L、シュークロースは3〜5%で良好な結果を期待できる。またグルコースを利用する場合は4%以上必要である。
 (3)pH、寒天濃度は幅があるがpH5.0〜5.5、寒天濃度は0.7〜0.8%程度が適当と考えられる。
 (4)品種間に異った反応が見られたが、多くは培養材料の素質の違いによるものと考えられ、材料の素質を検討することにより、同一手法により、ほとんどの品種の培養が可能であると思われるが、全く目的を達せられなかった品種もあり、品種間にNAAに対する反応の違いがあることも明らかとなった。
 (5)培養材料の種類で器官の分化、発達に大きな差があった。供試する材料としては地上茎またはりん片子球が適当と思われる。また、地上茎の太、細で差が認められ、太い地上茎では分化後の発達程度が劣り、材料としては細いものが適当であると判断される。
 (6)木子は材料の殺菌も難かしく培養材料としては好ましくない。りん茎も培養材料としては、地上茎、りん片子球に劣るが利用する場合は小りん茎が有利である。

5.主要成果の具体的数字
図1 ハイホネックと器官分化


図2 NAA濃度と器官分化


図3 糖濃度と器官分化


図4 品種別器官分化


図5 材料の種類別器官分化


備考
a:鉢上げ可能な状態にまで発達したもの++、その他+
b:大きなりん茎より伸長した地上茎を太、小さなりん茎を細
c:大きなりん茎を大、小さなりん茎を小

6.普及指導上の注意
 (1)NAA濃度は慎重に調整する。1.0mg/L以上ではほとんど器官分化しない。
 (2)培養に供する材料は可能な限り新鮮なものを使う。また、地上茎またはりん片子球も清潔な培地で準備した場合に良い結果を期待できる。