【指導参考事項】
食用ユリにおける組織培養技術の利用
 Ⅱ 育成種球の鉢上げ方法に関する試験
食用ユリ 繁殖
北海道中央農
期  間  昭和55〜56年
予算区分  道単
協力分担
1.担 当

2.目 的
 鉢上げ時期、鉢上げ個体の調整方法、低温処理の効果などを検討して、鉢上げ時の活着率を高めようとする。

3.試験方法
(1)各試験に共通する鉢上げ方法
①鉢上げ材料およびその調整
 培養3ヵ月以上経過し、茎葉、新生球、根部がそれぞれ分化発達した個体、流水で十分水洗し、寒天を除去、カルスおよびカルス性組織、枯葉、障害葉などを除去する。殺菌剤(チオファネートメチル剤500倍液)に浸漬後、鉢上げ。
②鉢上げ培地
 プラスチック育苗バット(50×30㎝)にジーフィーポットまたはペーパーポットをセットし、バーミキュライトを充填する。
③鉢上げ後の管理
 鉢上げ後約1週間、水分は十分に保持する。1週間以後約1ヵ月間、ハイポネックス2000倍液でかん水、温度は5〜30℃、通気性を確保する。十分な発根(新葉の発達)を確認した後、網室内に定植する。
(2)器官の発達程度と鉢上げ活着率について
(3)茎葉、根部の調整方法について
(4)低温処理の効果について

4.結果および考察
 (1)茎葉、新生球、根部がそれぞれ十分に発達した個体は鉢上げ結果も良好であった。しかし、鉢上げ結果をもっとも大きく左右するのは新生球の発達程度であった。したがって鉢上げ可能な個体の判断は新生球の大きさを指標とすることが妥当である。(径3㎜以上)
 (2)茎葉の調整方法はあまり大きな影響はないが作業効率などから3〜5㎝程度残すことが妥当と思われる。
 (3)根部の調整方法は重要で白根色のみを残し、その他の組織、器官は可能な除り除去することが鉢上げ結果を良好にする。
 (4)鉢上げ時の低温処理は鉢上げ後の生存、生育に有効であると思われる。(処理期間は0℃で1カ月程度)

5.主要成果の具体的数字
図1 器官別発達程度と生存率

図2 調整方法と生存率

図3 低温処理の効果

備考
a:長さ2㎝程度または葉数1枚以下を不良
b:径3㎜以下を不良
c:長さ5㎜程度、または有色根、カルス性組織のみを不良
d:新葉の発達が認められる++、認められな+
e:茎葉を残す
f:水洗のみ
g:カルス、カルス性組織除去
h:有色根除去、白色根のみ残す
i:根部除去

6.普及指導上の注意
 (1)鉢上げに根部の調整方法がもっとも重要である。白色根のみを残し、その他の組織、器官は可能な限り除去する。
 (2)鉢上げ後の管理のポイントは通気性の確保と水分の保持である。ただし、十分に活着するまでは風および直射日光に弱い。