食用ユリにおける組織培養技術の利用 Ⅲ 育成種球の生産力に関する試験 食用ユリ 繁殖 北海道中央農試 期 間 昭和55〜56年 予算区分 道単 協力分担 1.担 当 中央農試園芸部 |
2.目 的
組織培養により得られた種球の生産力を検討し、優良種球の増殖技術および栽培技術確立の資料とする。
3.試験研究方法
(1)生産力の比較
①供試品種 「芦別在来」
②供試材料の来歴
ア.処理区(組織培養育成種球) 1978.8茎頂培養 79.4鉢上げ 79.6網室定植 80.11
堀り上げ、調査、調整後再度植込み
イ.対照区(80.秋 養成球植付け) 81.4堀り上げ→種球入手
③耕種概要
植付5月2日、摘らい7月10〜18日、収穫9月28日、栽植 株間10㎝、20㎝間隔2条植、約10㎝の高畦、植付〜7月中旬までは二重寒冷紗、7月中旬以後は寒冷紗1枚。
④調 査
調査は個体単位で実施した。球重はすべて根つぎの状態で測定したため、等級別割合の分類は球重から一率10%削減した数値を用いた。参考としていくつかの産地の等級別割合を検討に加えた。また、aあたり収穫球数1500、1等級1箱(8K9詰)7000円としてaあたり収量、aあたり粗収入を算出した。
(2)育成種球の肥大程度
供試品種「白銀」、79〜80年茎頂培養によって得られた種球を二重寒冷紗ハウス内に植込みりん茎の肥大程度を観察した。植込み80年11月、収穫81年10月19日
4.結果および考察
(1)生産力の比較
処理区の球重は対照区の約2倍となった。これは生育量の増大と生育期間の延長による結果と思われる。等級別割合も明らかに上位等級の割合が増加した。組織培養により育成した種球を利用することにより収量で1.5〜2倍、粗収入で2〜3倍程度の増収を期待できるものと思われる。
(2)育成種球の肥大程度
植込み時の球重と収穫時の球重の間に二次の曲線回帰式を得た。すなわち、種球が大きくなるに従って収穫時の球重は増大するが、増加率は漸減する。
5.主要成果の具体的数字
表1 生産力の比較
項 目 | 調査個体数 | 球 重 (g) | 草 丈 (cm) | 着らい期 (月日) |
枯凋期 (月日) |
枯凋程度 (指数) |
りん茎の | 球重増化率 (倍) |
発病株率 (%) |
||||
区 別 | 調整前 | 植付時 | 6.19 | 7.10 | 9.28 | 重さ(g) | 分球数 | ||||||
処理区 | 30 | 38.0 | 28.6 | 45.3 | 84.0 | 99.3 | 7.15 | 9.28< | 2.3 | 152.7 | 1.6 | 5.34 | 0 |
対照区 | 40 | 50.7 | 31.0 | 45.4 | 79.0 | 81.4 | 7.9 | 9.14 | 5.0 | 76.5 | 2.2 | 2.47 | 100 |
表2 等級別割合
処理区別 | 等 級 別 割 合 (%) | aあたり算定 | |||||||
天 190g以上 |
特 190g〜130 |
1等 130g〜95 |
2等 95g〜70 |
3等 70g〜50 |
4等 50g〜30 |
収 量 (kg) |
粗収入 (千円) |
||
処 理 対 照 | 6.7 | 50.0 | 33.3 | 6.7 | 3.3 | - | 202 | 240 | |
- | 5.0 | 37.5 | 52.5 | 5.0 | 104 | 60 | |||
56年度 見込 |
芦別 | 0.2 | 13.5 | 24.4 | 31.3 | 23.0 | 5.5 | 134 | 111 |
夕張 | 0.3 | 1.5 | 13.5 | 25.0 | 31.0 | 21.4 | 97 | 63 | |
岩見沢 | 2.0 | 11.0 | 21.0 | 31.0 | 20.0 | 11.0 | 128 | 109 |
図1 種球の肥大程度
<参考>生育異常による廃棄個体数
年度 | 1980 | 1981 | |||
定植年次 | 前年 | 当年 | 前々年 | 前年 | 当年 |
定植数 | 254 | 89 | 347 | 87 | 264 |
生存数 | 228 | 87 | 304 | 79 | 239 |
廃棄数 | 11 | 0 | 9 | 8 | 6 |
廃棄率(%) | 4.8 | 0.0 | 3.0 | 10.1 | 2.5 |
6.普及指導上の注意
組織培養育成種球を使用することにより高い収益性を期待することができる。生育異常株を抜き取ることにより、ウイルス汚染株を極めて低率に押さえることができる。
したがって育成種球の増殖、利用にあたっては生育異常株、ウイルス症状株のぬき取りの徹底に努める。