【指導参考事項】
道東地方におけるオーチャードグラスの耐寒性とその安定維持に関する試験成績
根釧農試 草地科

目 的
 道東地方における冬枯れ原因の確認と相互の関連性について、とくに耐寒性の側面より検討する。また、従来の冬枯れ対策法は単播草地についてのものが多かったため、今回は、混播草地におけるオーチャードグラス(Or)の冬枯れ被害の軽減と生産性の維持法について検討する。

試験研究方法
 1.Orの冬枯れ原因とその関連性についての試験および冬枯れの程度が生産性におよぼす影響についての試試験(昭48〜50年):冬枯れ実態調査と除雪、防除など越冬条件の調節により、冬枯れをひき起す原因を確認した。模擬越冬試験により冬枯れ要因相互の関連性について検討した。なお、種々の程度に冬枯れした草地について、その生産性を検討した。
 2.冬枯れ発生におよぼす施肥と利用条件の影響についての試験(昭48〜56年):耐凍性および耐雪腐病性におよぼす無機成分含量、分げつ態勢。貯蔵炭水化物、混播マメ科草、最終刈取り時期について検討した。
 3.混播草地におけるOrの維持管理法(昭53〜56年):8月下旬の追肥を前提とした場合の春のN施用量、K20施用量,塩基追肥の有無,最終刈取り時期などの各要因がOrの越冬性と生産性の維持におよぼす影響について検討した。

結果の概要・要約
 1.道東地方における冬枯れ原因は凍害、雪腐病害、冠水害に大別されるが、根本的な原因は”寒さ”の害すなわち耐寒性にもとずく場合が多いものと考えられる。また、冬枯れの発生は早春の再生分げつ茎数の減少を通して年間の収量に影響をおよぼすため、早春の再生分げつ茎数を目標として1,300本/㎡以上、最低でも600本/㎡以上確保するような対策が必要である。
 2.8月下旬に発生した分げつ茎は耐凍性にまさり、分げつ密度の高い株の冠部は低温にさらされにくかった。また8月下旬施用のN、P205、K20にはいずれも分げつ発生効果が認められた。
 3.混播草地におけるOrの維持の要点は①第1に8月下旬の追肥であり、この場合の注意として、Nは4kg/10a、P2O5は従来の春1回施肥をやめて、8月下旬にも施用すること、K20はNの倍量を供給すること。②10月上旬の完全採食はひかえること。③春のN施用量は秋の利用条件や再生分げつ茎数により適宜増量すること。④土壌の塩基含量を下回らないように適宜補給することである。

主要成果の具体的数字

図1.道東の冬枯れ原因関連図


図2.分げつ令と耐凍性の関係
 A:8月下旬以前に発生した分げつ(6〜7葉)
 B: 〃 に発生した分げつ(3〜4葉)
 C:晩秋に発生した分げつ芽(1〜2葉)
 (1)−17℃/16時間処理(昭53、12月)
 (2)−15℃/16時間処理(昭56、11月)


図3.P2O5の施肥時間が8月下旬の葉基中P%と分げつ芽の発生に及ぼす影響


図4.混播草地の管理条件がOr早春再生分げつ茎数(1)、年間平均マメ科率(2)、年間合計乾物収量(Or+Lc)(3)、におよぼす影響
 A:Nの倍量K2O、塩基施用、11月上旬利用 B:Nと同量K20、塩基.無施用、10月上旬利用。)(1)(3)は春のN施用量4〜12kg/10aの平均、(2)はN8㎏/10a区

指導参考上の注意事項
 1.排水不良な低地へのOrの導入はさけること。
 2.8月下旬の追肥前には、できるだけ完全に採食させる。不食地が多い場合は掃除刈りをして、施肥効率とその後の利用効率を高めること。
 3.本試験は放牧草地を対照として行ったが、早春の草生密度を高める手段としては、採草地についても適応しうる。