【指導参考事項】
1.課題の分類 6-(6) 野菜(果菜) 2.研究課題名 簡易CA貯蔵装置利用によるアールス系メロンの貯蔵効果 3.期 間 昭和55年〜 4.担 当 中央農試 農業機械部 5.予算区分 道 費 6.協力分担 (ホクレン農号総合研究所) |
7.目 的
道内では、加温によるメロンの抑制栽培を行い、11月末〜12月にメロンの出荷を行っている。しかし、近年の石油エネルギーの高騰によって、生産コストが極めて高いものになってきているため、現地から、8月〜10月にかけて、加温なしで栽培・収穫し、貯蔵によって出荷調整したいとの欲望が強く出されている。そこでメロンの貯蔵方式、貯蔵性、及び経済性などの調査・検討を行った。
8.試験方法
1)期間及び場所:昭和55,56年 9月〜12月,洞爺村農協野菜予冷庫
2)供試施設:山本ニューCAストーレジによるCA貯蔵庫
・ガス発生機:CAG2型,・ガス・スクライバー:CAS5型
3)供試メロン品種:アールス系サンデー(交配後50〜65日)
4)試験区 ・昭和55年:①普通冷蔵②CA貯蔵2区
・昭和56年:CA貯蔵のみ(日持ち区は4区)
5)調査項目:ガス濃度,温湿度,メロン品質,電力・プロパン消費量,市場価格etc
表1 供試施設仕様
CA貯蔵庫 | ガス発生機 |
・寸法:1800W×3700L×2400Hmm | ・型式:CAG2型 |
・方式:山本ニューCAストーレジ方式 | ・ガス発生量:7〜14m3/hour |
・フィルム:クラレV-200 | ・LPG消費量:1.2kg/hour |
ガス・スクラバー | ・型式:CAS-5型・フィルム:V-200 ・CO2除去能力:400kg(リンゴ時) |
9.結果の概要
1)プルダウン(ガス濃度調整)性能の調査結果を表2に示す。プルダウン所要時間は、発生ガス濃度により異なるが、供試施設(容量:16.5m3)で5〜6時間で終了している。また、予冷により、メロン温度を17℃から6℃まで下げるのに必要な時間は、約14時間であった。
2)C-A庫内は、貯蔵中に、呼吸により、CO2は増、O2は減となるのでガス濃度の微調整が必要である。そのための、ガススクラバーのCO2除去、マイクロポンプによるO2供給性能を表3に示す。気密ファイルは、ガス透過量のきわめて小さいものを使用した。
3)メロンのCA貯蔵条件(ガス濃度、温度)は、予備試験により、O2:3%(3〜6%),CO2:11%(10%),1℃に設定した。庫内のガス濃度、温度分布は、プルダウン中は差があるが、終了後は、ガス濃度は全く差がなく、温度差は、0.5℃以内であった。また風速分布は庫内通路中央で0.1〜0.7m/cec、コンテナ内部で0.01〜0.1m/cecであり、撹拌は十分であった。
4)メロンの入庫方法は、1コンテナに8コ(6コ)のメロンを入れ、10段積みとして入庫した。入庫メロンの総数は、55年度は、12戸の農家から720コ、56年度は、10戸の農家から932コであった。各年度の貯蔵試験結果を図1,2、表4,5に示した。昭和55年度の結果から、普通予冷よりもCA貯蔵の方が、また交配後の日数の短い方が貯蔵期間が長いことが認められた。昭和56年度の結果から、貯蔵期間は30〜45日、また日持ち方法として、常温、低温、石灰液処理、活性炭処理の比較を行ったが、貯蔵期間が長くなるほど低温での日持ちが良好であった。貯蔵日数43日で、約5日の日持ちが可能であった。メロンの傷害としては、外観(カビ湿潤)のみで、肉質の変化はほとんど認められなかった。Brix計指度、全糖分の変化については、Brix計指度は、やや減少し、全糖分は、山成のカーブで、変化している。両年度とも、農家間の貯蔵性に明らかな差が認められた。この原因と考えられる各農家ハウスの土壌、管理方法、可照時間などの調査・検討を行ったが、確かなところは不明であり、今後は、貯蔵に適したメロン栽培という点から解明を行うことが急務である。
5)経済性についての検討は、①11月下旬まで加温により栽培と、②加温なしで栽培し、CA貯蔵(45日)した場合との比較を行った。その結果、メロン1kg当りの栽培コストは、①610.87円/kg、②517.47円/kg、であり、100円/kg程度の差がある。この差が主に燃料代によるものであった。
6)CA貯蔵の取扱い操作の留意点として、①収穫後速やかに予冷・プルダウンを行う。②メロンのCA貯蔵期間は、30〜45日とする。③プルダウン中にCOを発生させない。④出庫後は、ゴールドチェーンにより、流過をはかる。
10.主要成果の具体的数字
表2 プルダウン性能(昭和56年10月1日)
ガス名 | 発生ガス濃度 | プルダウン前 | プルダウン後 |
O2 | 3.5% | 20.5% | 3.3% |
CO2 | 11.4% | 0.2% | 11.2% |
表3 CO2除去、O2供給;フィルム透過量
ガス名 | 能力 %/hour |
ガス量 m3/hour |
フィルム透過量 m3/m2 |
O2(供給) | 0.35 | 0.15 | 2.18×10-4 (0.05%) |
CO2(除去) | 0.90 | 0.15 | 3.42×10-4 (0.08%) |
図1 出荷可能メロンの割合
図2 品質評価の変化(昭和55年、5段階評価)
表4 貯蔵期間中の庫内環境 昭和55年度
期間 | CA庫 | 冷蔵庫 | 日持ち5区 | O2 | CO2 |
10/22〜11/6 | 1.6℃ | 0.7℃ | 8.7℃ | 4.2% | 9.1% |
11/6〜11/19 | 2.2 | 1.5 | 6.2 | 4.2 | 9.2 |
11/19〜12/8 | 2.3 | 1.4 | 6.2 | 3.8 | 9.3 |
12/8〜12/22 | 2.0 | 1.1 | 2.3 | 4.1 | 9.8 |
表5 昭和56年度
期間 | CA庫 | 湿度* | 冷蔵庫 | 日持ち5区 | O2 | CO2 |
10/1〜10/15 | 1.7℃ | 96.2% | 0.5℃ | 14.9℃ | 3.3% | 10.8% |
10/16〜10/29 | 1.4 | 96.2 | 0.0 | 9.6 | 3.3 | 11.1 |
10/30〜11/12 | 1.8 | 96.0 | 0.7 | 7.2 | 3.9 | 10.4 |
11/13〜11/26 | 1.7 | 95.9 | 0.4 | 3.7 | 4.0 | 10.3 |
11/27〜12/2 | - | - | - | 0.4 | *湿度はCA庫内 |
図3 日持ち歩留り調査結果(昭和56年度)
(CA57日めのものは、1農家のみ。貯蔵温度は常温
区の方が低温区より低かった。)
図4 糖分の貯蔵期間中の変化(昭和56年)
11.普及上の問題点
①出庫後の取扱いに注意
②栽培条件等によるメロン貯蔵性
③酸素欠乏危険作業責任者が必要である。
④アールス系メロンに限る
12.次年度の計画
実用規模施設の導入による実用化試験及びアスパラ等の貯蔵試験