【指導参考事項】
1.課題の分類  小麦・収穣
2.研究課題名  小麦のモーア刈り地干し方式によるコンバイン収穫方法
3.期  間  昭和55〜56年度
4.担  当  北海道農試畑作部機械化栽培研究室
5.予算区分  別枠(畑地新管理)
6.協力分担関係  なし

7.目  的
 小麦の作付面積の急増に伴い,早期収穫による収穫適期の拡大と,多雨下ての穂発芽被害の抑制を図るため,モーア刈り地干し方式によるコンパイン収穫方法を検討する。

8.試験研究方法
1)供試材料:秋まき小麦(ホロシリコムギ) ドリルまき,条間18cm
  55年:収量38kg/a,稈長102cm,刈取時水分 茎稈69〜67%,穀粒49〜47%
  56年: 〃 30〃  〃 89 〃   〃     〃 66.3〃  〃 37.5 〃
2)刈取法別水分変化(56年):1m×2mの金網上にモーア刈区(厚さ3cm)とウインドローア刈区(12cm)の小麦を置き,地上高15,30cmにした。ビニルシート屋根(3m高)で降雨をしゃ断。刈取翌日及び4日後に降雨量10mm相当分の噴霧区を設定。
3)収穫方法
 a)モーア刈り−地干し−コンバイン拾上げ収穫:モーアで刈幅1.8m,刈高15cm,列幅1.2m,厚さ3cmの風乾列を作製。麦稈は刈株上で列に平行に穂が上層に並ぶ。
 b)ウインドローア刈り−地干し−コンバイン拾上げ収穫:刈幅3.6m,刈高30cmで幅1m,厚さ12cmの風乾列を作製。
 c)コンバイン直接収穫(対照区)

9.結果の概要・要約
1)降雨をしゃ断した金網上では立毛区(2と6日後に降雨)に比べて著しく乾燥が進み,茎稈の乾燥速度は刈取り4日後で8%/日(立毛区の4倍),8日後で 5%/日(3倍),穀粒は4日後て4%/日(3倍),8日後で2.5%/日(3.5倍)であった。ウインドローア刈区内部の穀粒の乾燥が表面より劣った。降雨処理の影響はモーア刈区ではほとんどなかったが,ウインドローア刈区内部では大きく,刈取り4日後の降雨はその後の乾燥を劣化させた。
2)ほ場てのモーア刈り地干しは55年は強雨に遭遇しなかったためかなり乾燥が進んだ。56年は刈取り2日後に278mmの豪雨があったが,その後の晴天により乾燥した。即ち,4日間の地干しにより,55年は茎稈含水率が30%へ(9.8%/日で立毛の10倍),穀粒は36%へ(3.1%/日,7.4倍),56年は茎稈含水率が35.5%へ(7.7%/日,4.5倍),穀粒は24.4%へ(3.3%/日,1.4倍)それぞれ乾燥した。
3)地干し後のコンバイン収穫は茎稈含水率が低いため,脱穀選別損失が0.5%以下と少なかった。特に,56年の豪雨2日後ではコンバインによる直接収穫は不能であったが,モーア刈り地干し区は全損失2%以下で収穫できた。
4)モーア刈り地干し方式は2工程作業と左り,作業能率は0.63ha/hrとコンパイン直接収穫の約半分となった。このため穀粒含水率30%以下では,コンバイン直接収穫が有利となる。本方式は穀粒含水率35〜40%の高水分早期収穫を対象とし,この場合収穫時期を慣行より約5日間早められる。

10.主要成果の具体的数字

第1図 モーアによる刈取り略図


第2図 小麦水分の変化(55年)


第3図 小麦水分の変化(56年)

モーア刈り地干し方式の利点
1)立毛状態に比べて特に茎稈の乾燥が速いため,コンバインの収穫損失が軽減される。
2)風乾列の厚さが薄いため,強雨にあっても品質劣化がなく,立毛状態に比べて収穫作業の開始が早く在る
3)約5日間の早期収穫が可能となり,穂発芽等の品質劣化を回避できる。

欠点
 1)2工程作業による能率低下
 2)コンバインに拾上げ装置を装備

11.今後の問題点
 早期収穫小麦の品質保持の確認

12.普及上の注意事項
 穀粒含水率35〜40%時にモーア刈り地干し方式とし,穀粒含水率30%以下ではコンバイン直接収穫とする。