【指導参考事項】
1.課題の分類 12 2.研究課題名 太陽熱給湯システムの搾乳施設への利用 3.期 間 昭和55年〜昭和56年 4.担 当 道立中央農試農業機械部 5.予算区分 道 費 6.協力分担 な し |
7.目 的
搾乳施設の省エネルギー対策として、太陽熱給湯システムを取り上げ、導入による、省エネルギーの可能性、及び寒冷地への適応性の検討を行なう。
8.試験研究方法
1)期間及び場所:昭55年9月〜56年12月
清水町羽帯 井沢牧場(北緯42°56′、東経142°54′)
2)供試施設(表1及び図1参照)
・集熱器:ソラールFH-2,4枚設置(高さ5.3m,傾斜角60°,方位角0°)
・蓄熱槽:TP-400,容量400L FRP製,ウレタンフォーム(75mm厚)断熱
・集熱媒:地下水(強制循環)
・凍結防止:差温サーモスタットによる自動制御
3)測定項目 水平面射量,外気温,各部水温使用電力量,温水使用量・温度
表1 供試集熱器仕様
項目 | 仕 様 |
集 熱 器 (コ レ ク タ ー) |
型式:1枚ガラス+ハニカム(ソラールFH-2型) |
集熱板:アルミニウム押出し型材選択吸収膜(吸収 率α≧0.94,放射率ε≦0.12)処理 |
|
透明板:3mm厚半強化ガラス(透過率τ=0.876) | |
断熱板:ガラスウール(裏面50mm,側面20mm) | |
断熱体:τ=0.94ポリカーボナイト透明ハニカム | |
集熱面積:1.94㎡ | |
重量:43kg(通水時44.5kg) | |
そ の 他 |
循環ポンプ流量:5L/min |
差温サーモスタット設定温度差:4℃ |
9.結果の概要
1)供試施設の仕様を表1に示す。コレクターは、パーラーに近接して設置したこともあり、11月下旬〜1月下旬の間、タワーサイロの影に入り、その結果、全日受熱面日射量の約14.5%(冬至)が無効となった。表2に試験期間中の帯広での気象状況を示す。
2)表3に、各月の運転結果を示した。昭和55年12月〜56年3月は1ヶ月の平均として、7月及び10月は、快晴日を含んだ1週間の平均値で示した。エネルギー換算量は、給湯負荷を1日60℃、300L、地下水温7℃として求めたものである。また受熱面日射量は、IEAの方法により推定した。
3)12月〜3月の厳冬期の平均として、集熱効率は0.36となり、受熱面日射量の36%が集熱利用され、晴天時には、50℃前後の温水が得られた。給湯負荷を60℃、300Lとすると、省エネルギー量は灯油換算で、1.3L/dayとなり、平年よりも日照不足であったが、50%〜70%近くの省エネが可能である。
4)56年7月は、外気温が高いため、快晴時には、70℃まで上昇している。使用温水量が増加した10月、及び12月は蓄熱終了温度は、快晴時でも52.5℃、40℃と低いが、集熱効率は、0.583、0.558と高くなっている。10月、12月とも蓄熱槽の温水は、その日のうちに全て使用されている。
5)試験地に於ける温水の使用状況を表4に示した。また使用電力、灯油量の比較を表5に示した。システム運転所要電力は、全期間を通して、約1.2KWh/day。パイプライン洗浄用温水器の電力量は、蓄熱槽の温水を給湯した8月までが約20KWh/day、ボイラーを通して80℃に加温して給湯した12月10.8KWh/dayとなっている。
6)取扱い上の注意点としては、①周年を通じて、タワーサイロ、防風林などの影にならないところに設置すること。②コレクターの傾斜角は冬期の集熱に重点を置く場合は60℃、通年利用ならば経緯程度とすること。③凍結防止を差温サーモスタットによって行なう場合は、高温側センサーが、ショート(鼠などによって)しない様に十分注意する。
10.主要成果
図1 供試システムの概略
表2 試験期間の帯広での気象状況
月 | 12 | 1 | 2 | 3 | 7 | 10 |
平均気温 (℃) |
-3.3 (-5.2) |
-9.4 (-9.0) |
-6.8 (-7.2) |
-2.3 (-2.4) |
(18.5) | (8.9) |
日照時間 (hr) |
133.1 (165) |
192.8 (179) |
146.4 (185) |
219.1 (220) |
(149) | (182) |
表3 太陽熱給湯システム運転結果(S55.12〜S56.12)
月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 7月 | 10月 | 12月 | ||
水平面日射量(KcaL/㎡.day) | 1,163 | 1,527 | 2,080 | 3,158 | 2,905 | 2,528 | 1,624 | ||
受熱面日射量(KcaL/㎡.day) | 1,999 | 2,593 | 3,054 | 3,940 | 2,239 | 2,965 | 3,943 | ||
集熱量(KcaL/㎡.day) | 748 | 1,036 | 1,074 | 1,283 | 886 | 1,729 | 2,200 | ||
集熱効率 | 0.374 | 0.400 | 0.352 | 0.326 | 0.396 | 0.583 | 0.558 | ||
日中平均外気温(℃) | -3.1 | -7.8 | -6.6 | -2.4 | 22.6 | 13.4 | -1.6 | ||
蓄 熱 槽 水 温 (℃) |
集熱開始時:Ts | 13.3 | 15.2 | 14.4 | 20.6 | 29.0 | 11.7 | 6.0 | |
〃 終了時:Tend | 27.8 | 35.3 | 35.3 | 45.5 | 46.1 | 37.9 | 40.0 | ||
温度上昇 | 14.5 | 20.1 | 20.8 | 24.9 | 17.1 | 26.2 | 34.0 | ||
晴天時のTend (カッコ内は晴天日数) |
48.4 (6日) |
48.5 (8日) |
53.1 (5日) |
61.9 (8日) |
70.0 | 52.5 | |||
エ ネ ル ギ ー 換 算 量 |
必 要 量 |
電力(KWhr/day) | 20.5 | 20.5 | 20.5 | 20.5 | (7/23 〜 7/30) |
(9/30 〜 10/6) |
(12/16 快晴) |
灯油(L/day) | 2.39 | 2.39 | 2.39 | 2.39 | |||||
省 エ ネ |
電力(KWhr/day) | 8.40 | 10.95 | 11.02 | 14.30 | ||||
灯油(L/day) | 0.976 | 1.272 | 1.279 | 1.661 | |||||
温水給湯先 | パイプライン洗滌用のみ (300L/day) |
パイプ ライン 洗滌+ 搾乳時 雑用水 |
同左+ 飲用水 |
表4 温水の使用量(1日あたり)
使用方法 | 温度(℃) | 使用量(L) | 時刻 |
パイプライン洗滌 | 98 | 300 | 朝晩 |
搾乳時雑用地 | 30〜40 | 400 | |
飲用*1 | (30〜40) | 5,400*2 | 朝晩 |
表5 使用電力,灯油量の比較(1日あたり)
期間 | 12月〜3月 | 7月〜8月 | 12月 |
電力(200V) | 23.8KWh | 18.8KWh | 10.8KWh |
〃(100V) | (1.2KWh) | (1.2KWh) | 1.2KWh |
灯油量 | - | - | 20.7L |
11.普及上の問題点
①既存給湯施設の保温を十分に行なう。
②農家で使用する温水量、温水温度の夏・冬別の把握。
③給湯負荷と、日射量、日照時間にあったシステム規模の決定。
12.次年度の計画
・施設全体としての熱管理技術及びシステムの確立。
・簡易集熱システムの可能性。