【指導参考事項】
1.課題の分類
2.研究課題名  バルククーラー排熱回収システム
3.期  間  昭和56年度
4.担  当  中央農試・機械部
5.予算区分  道 費
6.協力分担  根釧、十勝各農試・専技室

7.目 的
 バルククーラーの排熱回収システムについて、冷却および加温性能を把握すると共に、現地における牛舎内使用湯量の調査を行い、経済性および取扱方法を検討する。

8.方 法
1)性能試験(昭56年2〜6月、中央農試・不凍実験室内にて実施)
 (1)供試システム 4銘柄6機種
   (貯乳タンク容量1500L、4種、1950L、2種、いずれもR22冷凍機付属)
 (2)試験項目
  ⅰ)運転性能 ア)冷却能力 イ)消費電力量 ウ)加温水温・量
    (隔日集荷用として牛乳の代りに32℃の温水を投入、4℃まで冷却、
    周囲温度 10〜20℃、貯湯タンク充てん水温4〜6℃)
  ⅱ)貯湯タンク保温性能(周囲温度4〜7℃、保温時間13〜18h)
2)現地調査(聞き取り、昭56年4〜6月実施)
 (1)牛舎内使用湯の用途、温度・量(根釧28戸、十勝28戸、道央7戸、天塩9戸)
 (2)排熱回収システムの利用実態(苫小牧、大樹、中標津、その他計9戸)

9.結果の概要
 1)供試システムでできる湯温は50〜60℃、湯量は冷却量375Lの時、45℃以上を50℃に換算すると、平均207Lであった。冷却性能については、従来の空冷凝縮式(室温20℃)に比し、室温15℃では消費電力量で平均5.1%増、冷却能力で平均4.6%の減であった。
 2)貯湯タンクの保温ロスは室温6℃、12時間放置で概略8〜10%であった。
 3)現地の牛舎内使用湯の温度・量は用途・搾乳頭数によって異なるが、戸別によっても大きくばらついていた。概略使用湯量は85℃換算では、搾乳頭数をnとすれば、8.4n-9.4(L/日、γ=0.58、σ=158.4)であった。
 4)排熱回収システムの利用農家では、1部で保温対策が指摘されたが、総じて省エネ効果を評価していた。
 5)試験調査結果及び、リース事業における購入費用を元に、経済性を試算すると、貯乳タンク1500L(隔日用)では、イニシャルコスト44万円、耐用年数8年として現在のエネルギー価格水準(灯油86円/L、深夜電力12.8円/KWh×税5%)においては、灯油湯沸器併用の時、年間〜4万円、深夜電力利用温水器併用の時、年間〜6万円の湯沸し経費節減となる。

10.主要成果の具体的数字
 1)供試システムの性能   〔 〕内は空冷凝縮器のみの仕様の時
機  種 A B C D E F 平均
仕様 凝 縮 器 水冷専用 空水併用 空水併用 空水併用 空水併用 空水併用  
貯乳タンク容量(L) 1,950 1,950 1,500 1,500 1,500 1,500  
貯湯タンク容量(L) 450 450 380 200 - 400 376
冷凍機(K.W.) 2.98 2.98 2.75 2.2 2.2 2.2  
性能 冷却量1000L当り
消費電力量(KWh)
16.4
[11.6]
12.8
[11.6]
15.4
[10.0]
18.3
[15.8]
17.7
[15.8]
16.7
[13.3]
16.2
[13.0]
平均冷却能力
(Kcal/h)
6,540
[8,920]
7,430
[8,920]
5,860
[9,090]
4,874
[5,430]
5,000
[5,430]
4,590
[5,010]
5,716
[7,133]
試験時室温
(℃)
12.8
[10.0]
10.8
[10.0]
16.5
[11.1]
10.5
[10.7]
10.3
[10.7]
19.2
[17.0]
134
[11.6]
回湯
収量
量(L)※1 237 196 213 217 208 171 207
容量比※2 0.632 0.568 0.568 0.579 0.555 0.456 0.552
※1.冷却量を375L(1500L隔日用)とした時にできる湯の45℃以上を50℃に換算した量
※2.冷却量に対する※1の容量比(K)

 2)現地牛舎内仕様湯量

 3)経済性

注:供試システムによる加温湯量は50℃とし、搾乳機洗浄湯を85℃(量は=3.3n+25.8L/日)、その他の用途は50℃(量は=9.9n-114.6L/日)として、50℃→85℃の加温は、灯油もしくは電力で行うという条件で経済性を検討した。

11.普及上の注意事項
 1)導入上
 (1)冷凍機はR22
 (2)産乳量は年間約200t以上(搾乳頭数で約30頭以上)冬期の乳量が著しく減少しないこと。少なくとも平均日産の75%程度以上
 (3)使用湯が著しく少ないこと。
 2)設置上
 (1)配管を合理的に
 (2)保温・凍結に留意すること。
12.次年次の計画
 なし