【指導参考事項】
1.課題の分類  8-(3) 農業施設 野 菜
2.研究課題名  温風集熱器を内設した太陽熱育苗温室
3.期  間:昭和55〜56年度
4.担  当:北農試機械化第3研究室
5.予算区分:経 常
6.協力分担関係:伊達市

7.研究目的:
 温風型ソーラーシステムを温室内に設置した場合の太陽熱利用効率を明かにして、この種のソーラーシステムの温室への利用方法を検討する。

8.試験研究方法:
 (1)供試ソーラーシステム:伊達市農業センター・太陽熱利用育苗温室、面積60㎡、コレクター10㎡×2枚、玉石蓄熱槽4.4m3、ブロック蓄熱槽2.5m3
 (2)期間:56年1月〜4月上旬
 (3)調査項目:日射量、システム各部温度、温室各部温度、外気温度。
 (4)栽培作物:たいな、育苗(とまと、はくさい、きゅうり)。

9.結果の概要・要約:
 (1)期間中の月平均日射量は、室蘭気象台の過去10ケ年のそれと比較して大差なかった。
 (2)温室内の水平面日射量は3月の平均で1517KcaL/㎡であり、全天日射量の55.5%であった。
 (3)温室内設置の温風コレクターの1日当りの集熱効率は、期間中の平均で58.6%であった。また、温室内への日射の透過率が60%前後であるため、全天日射量に対する効率は35.6%であった。
 (4)有効集熱面積18.54㎡のコレクターの月別日平均集熱量は、1月から4月まで、それぞれ9.3、13.2、18.0、20.3McaL/dayであった。
 (5)月別日平均蓄熱量はそれぞれ8.4、10.9、12.6、13.7McaL/dayであり、集熱量に対する割合は90.5、82.4、70.3、67.6%てあった。
 (6)月別日平均放熱量はそれぞれ8.8、10.6、12.7、14.1McaL/dayであり、この放熱により夜間11.5㎡の2重被覆トンネル2床を加温し、外気との温度差10℃以上が得られた。
 (7)供試のシステムでは、栽培床直下に蓄熱槽を設け、日中温室内の余熱をフアンにより集蓄熱している。それによる月別日平均集熱量は3.3、4.2、4.7、5.6McaL/dayてあった。
 (8)システム全体で集熱した太陽エネルギーは、温室面積当りの全天日射量に対し、月別てそれぞれ15.7、15.1、13.8、12.8%であった。

10.主要成果の具体的数字
表 供試温風型ソーラーシステムの試験結果
1 2 3 4(上旬)
①全天日射量 KcaL/㎡D 1341 1929 2736 3364
  (室らん気象召) 1276 1951 3140 3707
②ハウス内水平面日射量 KcaL/㎡D     1519 2045
③ハウス内傾斜面日射量 KcaL/㎡D 803 1254 1624 1983
McaL/18.54㎡D 14.9 23.2 30.1 36.8
⑤コレクタ集熱量 McaL/D 9.3 13.2 18.0 20.3
集熱時間 hr/D 5.1 6.8 8.9 9.7
集熱効率A ⑤/④×100% 62.4 56.9 59.8 55.2
集熱効率B ⑤/(1×18.54)×100% 37.5 37.0 35.4 32.6
⑥ファン集熱量 McaL/D 3.3 4.2 4.7 5.6
集熱時間 hr/D 3.6 5.3 5.5 6.0
⑦総集熱量 ⑤+⑥McaL/D 12.7 17.4 22.7 25.9
⑧総集熱効率 ⑦/(①×60)×100% 15.7 15.1 13.8 12.8
⑨総集熱効率 McaL/D 8.4 10.9 12.6 13.7
蓄熱時間 hr/D 5.1 6.8 8.9 9.7
蓄熱率 ⑨/⑤×100% 90.5 82.4 70.3 67.6
⑩第1蓄熱槽放熱量 McaL/D 8.8 10.6 12.7 14.1
放熱時間 hr/D 9.2 8.7 9.6 12.0
放熱率 ⑩/⑨×100% 104.2 96.8 100.1 102.7


図 太陽熱利用システム概略図

11.今後の問題点:(1)温室被覆材の日射透過率の向上。
           (2)日中の温室内余熱の積極的蓄熱利用。

12.次年度の計画:なし