【指導参考事項】
1.課題の分類  水稲・病害  病害虫  中央農試稲作部
2.研究課題名  イネ紋枯病の防除時期
3.期   間  昭和55〜56年
4.担   当  栽培第二科
5.予算区分  道費
6.協力分担

7.目 的
 機械移植栽培の普及など栽培条件の変化に伴う紋枯病の発生生態の変化をふまえて防除時期の見直しをはかる。

8.試験研究方法
(1)供試薬剤   抗生物質剤:パリダマイシンA3%液剤
有機ひ素剤:メタンアルソン酸鉄(MAF)6.5%液剤
(2)耕種条件   機械移植栽培(昭55:ゆうなみ稚苗、出穂8月11日、昭56:ともゆたか中苗、出穂8月12日)
(3)発病条件   試験区の発病条件を均一にするため、自然発病が始まる時期にあわせて稲わら培養菌を人工接種。
(4)区制・面積 1区25㎡ 3連制(昭56)またはL16分割区法(昭55)。

9.結果の概要・要約
(1)防除時期
 1)紋枯病の発生は、かつては7月上旬から認められることがあり、このため防除時期は7月中旬〜8月中旬とされてきた。
 2)最近は用・排水路並にほ場整備、機械移植の普及などの栽培条件の変化によって、初発期は早くても7月中句末、通常7月下旬で、8月上旬になることもしぱしばある。
 3)防除の目安となる病茎率10%前後となるのは、早くて7月末、普通8月上旬である。
 4)紋枯病防除のねらいは1茎当り健全葉3枚を確保することにあるが、病斑が第3葉鞘に達するのは早くて7月末、普通8月上旬である。
 5)従って防除時期は、7月中旬からでは早過ぎ、初発後の7月下旬から8月中旬までとするのが妥当と考えられる。

(2)防除剤の種類と防除適期巾
 1)有機ひ素剤は発生初期からの防除で効果が高いが、開花期頃の散布は散布量・濃度を誤ると薬害を生じることがあり、薬害のない、バリダマィシン剤を後期散布に適するとしてきた。
 2)しかし、今日では紋枯病の発生時期が遅くなって、防除適期巾がせばまり、有機ひ素剤とバリダマイシン剤との間に防除適期の差はほとんどなく、同一と考えられる。

10.主要成果の具体的数字
昭55
供試薬剤 使用濃度 散布月日 病株率(%) 病株10株 全体の
被害度
収量
10a当り
玄米重
倍数(倍) 成分(%) 7/24 7/31 8/7 7/24 7/31 8/8 9/22 被害基率 被害度
1バリダマイシンA液剤 500 0.006 0 12 8 20 87.4 54.4 10.9 282
2   〃   0 6 0 28 85.1 47.8 13.4 286
3   〃   0 2 8 32 89.6 45.7 14.6 327
4   〃     0 6 0 40 81.6 54.1 21.6 305
5   〃   0 24 28 48 79.5 38.6 18.5 298
6   〃     1 32 32 60 90.0 56.7 34.0 351
7   〃     3 38 64 60 90.5 54.8 32.9 340
8 M A F液剤 1 36 68 70 90.1 59.8 41.9 323
9    〃 2,000 0.00325 0 2 0 18 90.2 48.1 8.7 272
10   〃   1 6 8 22 94.5 48.3 10.6 318
11   〃   0 0 8 26 63.2 29.7 7.7 324
12   〃     0 16 16 30 93.1 52.0 15.6 358
13   〃   0 34 38 44 96.2 52.4 23.1 344
14   〃     1 36 40 62 98.2 61.0 37.8 375
15   〃     4 36 60 62 96.8 60.6 37.6 408
16 無 散 布 0 38 72 76 100 72.6 55.2 379

昭56
供 試 薬 剤 使用濃度 散布時期・量(L) 病株率 B
発病株
10株の
被害度
全体の
被害度
(A×B/100)
収量(10a当)
希縮
倍数
(倍)
成分
(%)
7/24 8/3 8/11 8/2 A
10/2
精玄
米重
バリダマイシンA液剤 500 0.006 100 100 16.0 22.7 33.1 8.0 404 107
100 100 34.0 10.7 32.1 3.4 417 110
M A F 液 剤 2,000 0.00325 100 100 32.0 42.7 36.3 16.3 412 109
100 100 37.3 53.3 43.7 23.2 413 109
無  散  布 - - 36.7 66.0 63.7 41.9 378 100
 LSD    0.05 10.3 25 (7)

11.今後の問題点

12.次年度の計画(成果の取扱い)
 (1)防除時期を7月下旬〜8月中旬に変更する。
 (2)バリダマイシンAとメダンアルソン酸鉄との間に防除適期巾の差はなく、同一と考えられるので防除基準の注意事項4(バリダマイシン剤は、有機ひ素剤の適期より10曰くらい遅くから散布する)を削除する。