【普及奨励事項】
1.課題の分類  虫害 畑作
2.研究課題名  ジャガイモの葉巻病媒介昆虫(アブラムシ類)の生態と防除に関する試験
             Ⅱ−防除に関する試験
3.期   間  (昭和53年〜55年)完了
4.担   当  病虫予察科
5.予算区分  受 託
6.協力分担

7.目 的
 ジャガイモの葉巻病対策は保毒源の減少、媒介アブラムシ密度の減少という立場で種々の指導がなされ、かなりの効果を上げている。
 しかし、ジャガイモ上で後期に多発するM.persicae有翅虫によって惹起されるほ場間伝播(後期感染)の対策には問題を残している。
 これら問題点を解決するため、茎葉枯凋技術を利用した防除法を検討する。

8.試験研究方法
項 目・年 次 昭和54年 昭和55年
供 試 品 種 メークイン 男しゃく、メークイン、紅丸
播 種 月 日 5月10日 5月12日
施     肥 N:P2O5:K2O:MgO=7.0:11.0:9.0:3.4(kg/10a)
殺  虫  剤 エチルチオメトン粒剤4㎏/10aの施用と、無施用、チオメトン乳剤
1,O00倍液120L/10aの散布と無散布
(7月10日〜10日間かくに枯凋剤処理日まで)
枯  凋  剤 ジクワット液剤500倍液120L/10aを所定日に1日2回散布
その他管理 当場慣行       栽植密度60㎝×40㎝
枯凋剤処理期 7月20日、7月31日、8月10日、8月20日、8月31日、9月20日
収 量 調 査 9月25日 9月29日
1区24株の粒数、重量を調査
葉巻病次代病徴調査 1株1粒1区24株当翌年播種し、病徴を6月末に調査した。
区 制・面 積 1区21.6㎡         3連制

9.試験成果の概要
1.次代病徴出現率と茎葉枯凋処理時期の関係
 (1)茎葉枯凋処理時期の関係
 (2)8月10日処理が次代病徴出現率は高まる。
 (3)生育のおう盛な時期(7月20日)に処理したものでは再萌芽があり、次代病徴の出現が高まることがある。
2.次代病徴出現臨界時期と収量の関係
 (1)男しゃくでは約1割の減収であった。
 (2)メークインでは約2割弱の減収であった。
 (3)紅丸では約4割の減収であった。
3.次代病徴出現時期とM.persicae有翅虫の飛来密度の関係
 (1)次代病徴出現時期とM.persicae有翅虫の飛来密度の急激上昇期より早く来ることはなかった。
 (2)密度上昇の推移と次代病徴出現率の推移の間に大きなズレを生ずるが、これは、ウイルスの茎葉から塊茎への移行に要する時間が関係しているものと考えられる。
4.アブラムシの茎葉防除の有無と次代病徴出現の関係
 (1)アブラムシの茎葉防除が次代病徴の出現の多寡に関与している証拠は見い出せなかった。
 (2)アブラムシの茎葉防除区は増収傾向にあった。
5.茎葉枯凋処理時期と種いも腐敗の関係
 (1)塊茎の生育がおう盛な時期に(7月20日)枯凋処理したものでは劣悪な条件下では種いもの腐敗を起すことがあった。

10.主要成果の具体的データ
図-1. 次代病徴出現率と減収率の関係

図-2. 次代病徴出現率とM.persicae有翅虫の飛来密度の関係



図-3. アブラムシ茎葉防除と収量

11.成果の取扱い
 1.次代病徴の出現は現在の防除法(抜き取り、茎葉防除)の徹底だけでは防ぎ切れない場合があるので、茎葉除去処理による防止策が必要である。(試験Ⅱ−図−2)
 2.次代病徴出現0の臨界時期は.M.persicae有翅虫の飛来密度の急激上昇期より早く来ることがないので、飛来密度の急激上昇期を茎葉処理期とすれば葉巻病の後期感染をほぼ完全に防止することができる。(試験Ⅱ−図−2)
 3.しかし、紅丸のような晩生種は、飛来密度の急激上昇期では普通栽培で行うと減収が大きいので、密植の若種いも栽培法などをとることが必要である。(試験Ⅱ−図−1)

12.注意事項
 1.従来の葉巻病防除対策の徹底をはかること。(従来の知見)
 2.茎葉処理は完全に実施すること。(試験Ⅱ−図−2、昭和51年度指導参考事項)
 3.塊茎の生育のおう盛な時期の茎葉処理は収穫種いもが腐敗しやすいので、その管理に充分注意を払うこと。(試験Ⅱ−図4)
 4.茎葉処理後、2週間で黒あざ病の菌核付着塊茎が急増してくるので、茎葉処理後長期間土壌中に置かないこと。(昭和51年度指導参考事項)

13.今後の問題点
 1.感染塊茎の簡易検定法
 2.保毒虫の簡易検定法
 3.茎葉枯凋技術の改善