【指導参考事項】
1.課題の分類  ネズミ 野菜
2.研究課題名  施設促成栽培イチゴの野ネズミ害対策試験
3.期   間  (昭和55〜56年)
4.担   当  中央農試病虫部発生予察科
5.予算区分  道 費
6.協力分担  厚真町農業経営センター

7.目 的
 施設促成栽培イチゴにおける野ネズミによる被害実態を明らかにし、その防除対策を講ずる。

8.試験研究方法
 (1)アンケート調査(現地厚真町農家)
 (2)被害実態調査(同上)
 (3)野ネズミ類生息状況調査(同上)
 (4)殺そ剤喫食試験調査(同上)

9.試験結果の撮要・要約
 (1)アンケート調査
 ①32戸の農家から回答があり、94%の農家でネズミがいて、97%が多少の被害を受けている。納屋及びビニールハウスで被害が多く、作物ではイチゴの被害が多い。
 ②66%の農家が毎年なんらかの手段を用いて防除を試みているが、あまり効果がえられないとして、より有効な防除法を求めている。
 (2)被害実態調査
 ①イチゴ果実表面の種子のみが剥離され摂食される被害が最も多く、これはハツカネズミによるものであり、府県でも報告されてる一方、果肉が大きくかみとられる被害はドブネズミによるものであるが、この割合は少なかった。
 ②5月初旬以降、一番果の種子が稔実したものから順に被害を受け、6月下旬頃まで継続する。昭和55、56年は被害果率が4%以下にとどまったが、多発年の昭和53年は15%に達するハウスもあった。
 (3)野ネズミ類生息状況調査
 ①昭和55年の捕獲調査では加害種のハツカネズミは捕獲されなかったが、生息数が少なかったこと及び調査時期が不適当であったためと考えられる。
 ②落下糞数による観察では昭和56年は前年よりハツカネズミがやや多かったと考えられる。
 (4)殺そ剤喫食試験調査
 ①ハウス内へのネズミの浸入時期は、イチゴの生育が早いハウスほど早く、開花盛期以降に多くなる。
 ②有効成分、剤型の異なる5種類の殺そ剤の中で、ダイファシン系粒剤が量および頻度ともに最も多く喫食された。硫酸タリウム液剤を含浸させた小麦粒もほぼ同程度嘆食され、またクマリン系粉末剤を粉衣した小麦粒も比較的よく喫食された。
 ③上記3種の殺そ剤はハウス内に侵入したネズミ類の駆除に有効であったと考えられ、
その後の被害果の発生をほぼ抑えた。

lO.主要成果の具体的数字
 (1)ハウス内外におけるネズミ類の生息状況及びイチゴ被害果率(昭和55年、厚真町)
項目・地区 豊 川 美 里 東 和
捕獲数 被害果率 捕獲数 被害果率 捕獲数 被害果率
4月22〜24日 0 O% エゾヤチネズミ 1
カラフトアカネズミ 1
O% 0 O%
6月4〜6日 0 O% 0 3.2% 0 1.6%
 注 捕獲数は各地区ともパンチュートラップ50個3日間の捕獲、被害果率は5mおき5果、40ケ所計200果調査

 (2)イチゴの生育期、被害果率および殺そ剤喫食量(昭和56年、厚真町)
項目・地区 7 8 1 4 9 2 3 5 6 10  
5.21までの無毒餌喫食量 - - 39g 25g 0 0 0 0 0 0  
イチゴ
生育期
5.13  
5.29  
6.5  
6.12  
被害果率
%
5.29 0 2 4 0 0 0 0 0 0 0  
6.5 0 0 1.5 0.8 0 0 0 0 0 0  
6.12 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 平均
殺そ剤 ダイファシン系粒剤 7.5g 5.3 6.4 6.4 8.2 0 5.4 0 10.4 5.6 5.5
クマリン系粉末剤 1.2 10.3 9.4 0 0.9 0 0.3 0 0 0.5 2.3
硫酸タリウム液剤 3.2 7.8 9.3 7.7 3.7 0 2.6 0 0 5.0 3.9
りん化亜鉛粒剤 0 0 0.1 0 0.2 0 0 0 0 0 0.03
クマリン系粒剤 0 0 0 0.7 0 0 0 0 0 0.5 0.12
 注 Ⅰ:開花始、Ⅱ:開花盛期、Ⅲ:果実肥大期、Ⅳ:収穫始、Ⅴ:収穫盛期
 各地区ごとに各殺そ剤をハウス内に2ケ所配置、6月12日までの総喫食量を示した。

11.今後の問題点
 ハツカネズミの発生量の予察方法

12.成果の取扱い
 (1)一番果の開花始頃にネズミの入れる穴をあけた容器に殺そ剤を入れて、10m間隔で株間に配置する。適時点検して減少していたら補充する。
 (2)殺そ剤は子供や家畜がいたずらしないように注意し、必要のない時は早めにかたずける。
 (3)ダイファシン系粒剤:2-ジフェニルアセチル-1.3-インダンジオン0.0050%(ヤソヂオン)。硫酸タリウム液剤:硫酸タリウム2%(液剤タリウム大塚)。クマリン系粉末剤:クマテトラリル0,75%(エンドックス)。