【指導参考事項】

1.課題の分類　　新得畜試　肉牛　飼養 2.研究課題名　　放牧ととうもろこしサイレージ利用による黒毛和種 　　　　　　　　　　　去勢牛の育成・肥育 3.期　　　間　　昭和54〜56年 4.担　　　当　　新得畜試・種畜部肉牛科 5.予算区分　　道　費 6.協力分担　　な　し

7.目　的
　北海道の立地条件を生かした黒毛和種の牛肉生産を進めるため、放牧ととうもろこしサイレージを組み合せた黒毛和種去勢牛の育成肥育方式を検討する。

8.方　法
　1)供試牛　　黒和種去勢牛　8頭
　2)給与とうもろこし　　品種：ワセホマレ、熟期：育成期、黄熟初期、肥育期、


舎飼育成期：とうもろこしサイレージ、乾草自由採食、濃厚飼料体重比0.2%、O.4%給与
放牧育成期：濃厚飼料　2.5㎏/1日補給
肥育前期：とうもろこしサイレージ、乾草自由採食、濃厚飼料体重比0.6%、1.2%給与
肥育後期、飼い直し区：濃厚飼料、乾草自由採食
とうもろこし区：とうもろこしサイレージ、乾草自由採食、濃厚飼料体重比1.2%給与

9.主要成果の概要
　①放牧ととうもろこしサイレージを組み合すことにより1.6t程度の濃厚飼料で370㎏程度の枝肉生産ができた。
　②とうもろこしサイレージを仕上げまで給与しても背脂肪の黄色化は認められなかった。
　③枝肉格付は「中」と「並」であった。
　④とうもろこし給与の方が赤肉割合が高く、脂肪割合が低い傾向を示した。
　⑤肥育後期の飼い直し効果は認められなかった。

10.主要成果の具体的数値　　　　　　（サイレージとうもろこし＝Csi)
表1.　育成期の飼養結果

区　分	開始時		舎飼育成終了時		放牧育成終了時		飼料摂取量
	体重 ㎏	月令 月	体重 ㎏	D・G ㎏	体重 ㎏	D・G ㎏	Csi t	乾草 ㎏	濃飼 ㎏
0.2%区	236	8.0	348	0.62	448	0.62	3.3	50	470
0.4%区	241	8.0	378	0.76	452	0.46	3.3	30	630

表2.　肥育期の飼養結果

区　　分	開始時 体重 ㎏	肥育前期終了時		肥育後期終了時		通算 D・G ㎏
		体重 ㎏	D・G ㎏	体重 ㎏	D・G ㎏
0.6%−飼い直し区	452	510	0.74	602	0.79	0.77
0.6%−とうもろこし区	465	537	0.93	638	0.87	0.89
1.2%−飼い直し区	444	517	0.95	603	0.74	0.82
1.2%−とうもろこし区	439	530	1.18	620	0.77	0.93

表3.　肥育期の飼料摂取量

区　　分	肥　育　前　期			肥　育　後　期					通　　算
	Csi t	乾草 ㎏	濃飼 ㎏	Csi t	乾草 ㎏	濃飼 ㎏	左片大 ㎏	ビート パルプ ㎏	Csi t	乾草 ㎏	濃飼 ㎏	左片大 ㎏	ビート パルプ ㎏
0.6%−飼い直し区	1.8	60	190	0.2	80	860	150	50	2.0	140	1050	150	50
0.6%−とうもろこし区	1.8	60	190	1.6	20	820	-	20	3.4	80	1010	-	20
1.2%−飼い直し区	1.6	40	340	0.2	80	860	150	50	1.8	120	1200	150	50
1.2%−とうもろこし区	1.6	40	340	1.6	20	820	-	20	3.2	60	1160	-	20

表4.　と殺・枝肉調査結果

区　　分	枝肉量 ㎏	枝肉 歩留り %	格　　付			皮下脂肪 ㎝	ロース芯 面　　積 ㎝3
			等　級	脂肪交雑	脂肪の質
飼い直し区	354	62.9	並〜中	0〜1	中	0.9	42.1
とうもろこし区	375	63.3	並〜中	0〜2	中	1.7	46.3

表5.　正肉・体構成・精肉調査結果

区　分	正肉量 (㎏)	枝肉構成　(%)			体構成　(%)			正肉構成　(%)		精肉 単価 円/100g
		正肉	脂肪	骨	赤肉	脂肪	骨	精肉	脂肪
飼い直し区	276	77.6	9.7	12.1	50.5	38.3	10.6	76.7	15.0	295
とうもろこし区	293	78.2	9.1	11.8	52.8	35.9	10.6	80.4	14.4	292

11.今後の問題点
　1)資質系統の素牛を用いた場合の産肉性及び肉質の検討
　2)とうもろこしサイレージの通年給与による肥育方式の検討

12.成果の取扱い(普及指導上の注意事項)
　1)本試験の供試牛は、体積系統の素牛である。黒毛和種においては系統が異なると産肉性や肉質が異なると言われており、この点を留意する必要がある。
　2)とうもろこしは単位面積当りの栄養収量及び栄養摂取量から、黄熟期以上の調製、給与が望ましい。