【指導参考事項】
1.課題の分類  新得畜試 肉牛・肉質
2.研究課題名  肉用牛の肉量、肉質に関する試験
3.期   間  昭和51〜55年
4.担   当  新得畜試・種畜部・肉牛科
5.予算区分  道単
6.協力分担  滝川畜試飼料科、畜大畜産物保蔵研究室

7.目 的
 肉用牛の肥育方式は、最終差物である牛肉の量と質から評価しなければならない。このためには、肉量・肉質に関する研究を積み重ねる必要がある。

8.方 法
 1)とうもろこしサイレージ給与が牛枝肉の肉質に及ぼす影響……D種 24頭
 2)放牧肥育と舎飼肥育で仕上げた枝肉の比較……H種、A種、B種 各8頭
 3)放牧利用の肥育方式を用いて生産した枝肉の発育過程における肉質の推移……H種、A種、B種 各32頭
 4)と殺前の異常興奮が肉量・肉質に及ぼす影響……H種 3頭、A種 2頭
 5)正肉量の推定……D種 121頭、B種 45頭、H種 81頭、A種 44頭
 6)飼養法の差異が肉量に及ぼす影響……D種 8頭

9.主要成果の概要
 1)ホルスタイン去勢牛にとうもろこしサイレージを仕上げまで給与しても肉質に対して不良な影響を及ぼすことはなかった。
 2)放牧牛に濃厚飼料を補給して生産した枝肉の背脂肪は明らかに黄色化下。
 3)と殺前に異常興奮した体はPHが高く、肉色も黒ずむ傾向が見られた。
 4)冷と体重のみを用いて簡便に正肉量の推定が可能であった。
 5)とうもろこしサイレージを給与して仕上げた枝肉は精肉の歩留りが高く、分離脂肪が少なかった。

10.主要成果の具体的数字
表1. とうもろこしサイレージ給与
  枝肉等級 胸 最 長 筋 背 脂 肪
粗脂肪
%
赤味 保水力
%
クッキング
ロス %
柔らかさ 反射率
%
赤味 黄味 融点
C区 2.5 8.1 22.0 69.8 12.8 3.6 42.1 8.1 12.5 30.2
H区 2.3 6.5 22.4 71.4 13.1 3.0 43.8 8.9 13.2 33.9
注)C区:とうもろこしサイレージ仕上げまで自由採食、H区:乾草給与

表2. 舎飼肥育と放牧肥育
    枝肉等級 胸 最 長 筋 背 脂 肪
粗脂肪
%
赤味 保水力
%
クッキング
ロス %
柔らかさ 反射率
%
閉眼 融点
H種 G区 1.7 2.4 20.5 65.0 20.6 3.6 43.0 黄−橙 30.0
H区 1.7 3.9 25.8 60.2 20.5 3.0 46.7 29.6
A種 G区 1.7 5.3 21.6 71.7 19.1 3.6 49.7 28.6
H区 2.0 5.5 24.8 70.0 17.9 3.7 54.8 29.4
B種 G区 1.7 4.8 19.7 61.8 17.7 3.5 41.0 黄−橙 32.0
H区 1.9 5.2 20.5 62.3 14.5 3.6 45.3 31.4
注) G区:濃厚飼料を補給して放牧仕上げ、H区:舎飼乾草給与

 表3. と殺前の異常興奮が肉質に及ぼす影響
と殺No. 品種 月令 体重
枝肉
等級
胸 最 長 筋
粗脂肪
%
赤味 PH 保水力
%
クッキング
ロス %
柔らかさ
1 H 28.7 583 2.3 3.8 20.5 6.2 89.8 - 3.6
2 H 29.1 500 2.0 2.2 20.7 6.4 86.0 - 3.2
3 A 26.3 524 2.3 4.9 11.6 6.2 87.3 7.7 3.7
4 H 18.2 372 1.0 2.1 12.1 6.3 86.1 8.0 3.6
5 A 18.8 505 1.7 4.2 10.6 6.1 86.1 10.0 3.8

 表4. 正肉量の推定
品種 頭数
冷と体重 推定式 標準
誤差
相肉
係数
平均 標準偏差
D種 121 327 ±47 Y=0.72X+7.3 4.5 0.99
B種 45 233 ±67 Y=0.76X 8.9 0.99
M種 81 271 ±66 Y=0.76X+2.7 6.6 0.99
A種 44 239 ±64 Y=0.80X-5.9 8.8 0.99
 注)Y:正肉量、㎏  X:冷と体重、㎏

 表5. 飼養法の差異が肉量に及ぼす影響
  冷と体重
格付 冷 と 体 重 ㎏ 枝肉仕分け割合 %
精肉 余剰脂肪 スジ 精肉 余剰脂肪 スジ
濃飼多給区 375 2.8 237 54 61 16 63.2 14.4 16.3 4.3
とうもろこし区 321 2.0 210 36 57 13 65.4 11.2 17.7 4.0
注)濃飼多給区:16.4か月令 体重646㎏・とうもろこし区:25.8か月令 体重625㎏

11.今後の問題点
 1)とうもろこしサイレージの通年給与による肉質への影響
 2)精肉量の推定
 3)冷蔵庫中における肉色、及び保水力の経時変化

12.成果の取扱い(指導上の注意事項)
 1)出荷前に生草給与を避ける必要があるが草サイレージ給与については検討していない。
 2)正肉量の推定に当って濃厚飼料多給で仕上げたと体については誤差が若干大きくなると思われるので注意すること。