【指導参考事項】
1.課題の分類  牧草 調整利用
2.研究課題名  アルファルファを原料とした常温通風乾燥に関する実態調査
          (アルファルファの混播牧草の導入による飼料構造改善試験)
3.期  間  昭和55年〜(中間成績)
4.担  当  天北農試・草地科
5.予算区分  総合助成
6.協  力  網走支庁西紋東部農業改良普及所
        北見農試専技室

7.目 的
 天候不順による乾草収穫作業の制約をできるだけ少なくし、しかも良質の乾草を省力的に生産することを目的とする。

8.試験研究方法
 紋別市で2戸の農家を選定し、実態調査を行った。
 A農家……単播と混播の両草地を対象とし、施設は牛舎2階に設置した乾燥施設を利用した。乾燥施設を利用した。送風動力はモーターを利用した。
 B農家……混播草地を対象とし、施設は平屋建てで鉄筋パネルを利用し別棟に建築した乾燥施設を利用した。送風動力はトラクターのPTOを利用した。
供試牧草はアルファルファで55年56年共、若刈、原料を用い、常温通風乾燥を開始する前の材料の処置としてモーアコンデショナーによって刈取と圧砕を同時に行い、予乾材料として供試した。

9.試験の概要・要約
 (1)55年度は2番草で56年度は1番草できわめて不順な天候にあい高水分で梱包した。
 (2)56年度の1番草で天候不順なためA農家は梱包時水分55.5%堆積段数7段、積込重量15.3トン(出来上りで8.4トン)、B農家は梱包水分46.0〜57.4%、堆積段数、両側にわけて各4段、積込重量19.3トン(出来上りで11.2トン)で通風を行った。その結果、乾草施設内におけるTDNの減少率は5〜6%で水分ムラがみられたが醗酵カビによる損失が少なく、出来上がりの乾草TDN60〜63%で良質乾草が出来上がった。また採食性も良好であった。
 (3)葉部割合の減少率は反転回数が多くなるにつれて高まる傾向がみられ、また葉部の損耗はTDNの減少と、対応することを示した。したがって、草量、気象条件によって異なるが、脱葉を防止し効率的な反転を行う必要がある。
 (4)梱包水分50%以上で送風した際、送風后3週頃まで温度上昇の傾向がみられ、20日間以上の送風を必要としたが梱包水分30〜35%で送風した時は、のべ70時間(10日)程度の送風で十分と考えられた。
 (5)天候に恵まれた条件下で通風乾草を天日乾草を調整し、比較したところ天日乾草は仕上げまで8日間のほ場乾燥を要し、通風乾草に比べDCP21%、TDNで11%の損耗があった。
 (6)宗谷管内で行った乾草およびサイレージの分析結果と常温通風で調整した乾草の成分を比較すると、通風乾草が良質なことを示した。

10.主要成果の具体的数字
 (1)供試草地の植生
表1. 供試草地の植生
農家名 草地分類 年次 AIF割合(%) DM収量(㎏/10a)
1番草 2番草 3番草 1番草 2番草 3番草
A 単 播 55 100.0 100.0 100.0 376 292 181
56 88.6 95.0 - 3.9 175 -
混 播 55 82.0 95.0 - 309 175 -
56 56.5 30.0 - 422 182 -
B 混 播 56 65.8 75.7 - 478 267 -

表2. 積め込み重量と出来上がり量
項    目 55年A農家
1番草
56年A農家
1番草
55年A農家
2番草
56年A農家
2番草
56年B農家
1番草
56年B農家
2番草
調 整 年 月 日 6.21〜7.3 6.26〜7.19 8.10〜8.28 8.15〜8.26 6.22〜7.14 8.17〜8.26
正味乾燥日時 (日) 11 22 19 9 23 10
運  転  時  間 82.2 269.1 137.1 43.1 179.0 72.0
投 入 梱 包 数 653 867 919 469 780 788
積 込 重 量 (トン) 9.4 15.3 13.6 5.7 19.3 12.5
積 込 段 数 (段) 5 7 7 3 両側4段 7
含  水  率  (%) 35.9〜52.0 30.5〜55.5 39.2〜47.5 25.2〜30.2 46.0〜57.4 32.4
出来上がり乾燥(トン) 6.6 8.4 89 4.6 11.2 9.4
水分蒸散量 (トン) 2.8 6.9 4.8 1.1 8.0 3.1

表3. 葉部割合と飼料成分の比較
番草 草地
分類
年次 農家名 梱包時
水分(%)
葉部割合(DM中%) 乾物TDN(%)
刈取前 梱包時 減少率 刈取前 梱包 減少率
1 単播 55 A 35.9 37.1 24.4 34.2 75.6 74.0 2.1
56 A 30.5 33.6 22.1 34.2 73.3 64.4 12.1
混播 55 A低水分 35.9 36.1 24.6 31.9 75.3 69.3 8.4
A低水分 52.0 36.1 33.3 7.8 75.3 71.4 5.2
56 A 55.5 29.5 18.2 38.3 67.0 59.9 10.6
*B22日区 57.4 29.3 28.1 4.1 66.8 63.4 5.1
B25日区 46.0 29.3 22.0 24.9 66.8 61.2 8.4
2 単播 55 A 47.5 39.9 19.4 51.4 69.9 58.6 16.2
56 A 30.2 30.7 28.2 9.2 64.3 56.0 12.9
混播 55 A 39.2 37.6 23.2 38.3 71.2 57.4 19.4
56 A 25.2 36.8 34.0 7.6 64.9 59.5 8.3
B 32.4 35.0 34.1 2.6 63.2 58.4 7.6

表4. 通風乾草と天日乾草の比較 (55年度)
区 分 乾物
(%)
乾 物 中 (%)
粗蛋白 粗せんい DCP TDN
通風乾草 77.8 17.4 20.1 13.0 74.0
天日乾草 78.3 14.5 22.0 10.2 66.2

表5. 宗谷管内におけるアルファルファ乾草の飼料価値 (1番草)
年次 乾物
(%)
乾物中 (%)
蛋白 せんい DCP TDN
55 80.8 11.5 35.9 7.4 54.4
56 82.7 13.7 40.1 9.4 50.6

11.今後の問題点の検討
 (1)通風量と乾燥効果
 (2)堆積量を異にした場合の乾燥効
 (3)含水率と堆積量の限界
 (4)天候不順の際の送風技術

12.普及指導上の注意事項
 (1)乾草の飼料価値を高めるための若刈原料草を用いるようにする。
 (2)乾草施設への予乾梱包積込時含水率50%台でも良質乾草に仕上げることは可能であるが経費節減をはかる上からは、なるべく含水率をさける必要がある。但し、含水率40%以下にさげる場合は脱葉が多く養分損失をともなうので留意する必要がある。
 (3)尚、昭和35年に提出された常温通風乾燥に関する指導参考の留意点を遵守する。
  昭和35年度常温通風乾燥に関する、指導参考事項の留意点抜粋
(1)刈取り作業
 刈取り作業では単に刈取るばかりでなく、同時に圧砕する工程がマメ科草、特にアルファルファの場合は必要であり、刈取りのみでは茎部が太く、硬いために圧砕を行わないと、全体の乾燥に長時間を要することになる。そのため、刈取り后、ヘーコンデショナーの利用が有効となる。また、乾燥効果は1日のうち9〜13時が最も効果が高いといえるので、刈取りはでき得れば午前9時頃まで刈取りを終了し、11時頃に1回反転することが効果的といえる。
(2)乾燥促進作業
 乾燥促進速度は、その時の気象条件、反転回数、草量等によって異なるが、上層と下層の水分差が大きくなったときに効率ある反転を行う必要がある。ほ場で乾燥しすぎると緑色が失われ、葉は砕けて損耗しやすくなり、また水分含量が多すぎると送風によって除くべき水分が多くなり、乾燥に要する時間を長くすることになるため、通風乾燥に送りこむ水分含量は40〜45%、できれば水分50%以下に梱包するのが好ましい。
(3)乾燥施設への積み込み
 牧草はなるべく平担になるように投入し、均一の厚さ、高さになるようにする。
(4)送 風
 送風は天候、牧草の状態を考慮して行うが、乾草内部が安定するまで大体5〜7日を要する。雨天、夜間その他外気湿度がきわめて高い場合は乾燥効率を減ずるが、発熱の危険がある場合は降雨時でも送風する必要がある。また、収納時の乾牧草含水率が40%以上であれば、収納直後からの送風が必要で、その後は発熱の徴候があるか否かを点検しながら充分乾燥が終るまで送風をくり返す必要がある。また、水分が20%程度になったら乾牧草に80%以上の湿度の空気を送りこむと、逆に「戻り」の現象をおこすことがあるので、かかる条件下の送風はさけた方がよい。
(5)乾燥材料の量が同一の場合は、小さい面積に厚く積むよりも広い面積にうすく積む方が乾燥効率があがる。また、送りこんだ空気は必らず乾燥材料の中を通過するようにする必要がある。また、堆積材料から出てくる湿った空気が再び送風機に入って循環しないようにする必要がある。