【指導参考事項】
1.課題の分類  C-12 イネ科牧草
2.研究課題名  肉牛放牧におけるトールフエスク及びオ一チャードグラスの家畜生産性
3.期   間  昭和52〜56年
4.担   当  新得畜試・草地飼料科、作物科
5.予算区分  道 費
6.協力分担  な し

7.目 的
 肉牛の放牧条件下でトールフエスク「ホクリョウ」及びオーチャードグラス「キタミドリ」の家畜生産性を比較検討する。

8.試験方法
 トールフエスク「ホクリョウ」及びオーチャードグラス「キタミドリ」のイネ科単一草地各1.2haを用いた。ヘレフォード育成去勢牛(放牧開始時13〜14か月令)を各5〜6頭配置し、1牧区2〜4日間滞牧で6牧区の輪換放牧を行なった。放牧圧はF/D比(1日、1頭当り現存草量)で規定し、両車種でほぼ同じにした。春、夏、秋における採食草の成分組成、in vitro消化率を、また、食道フイステルーCr2O3法によって採食量を求めた。年6回の利用で回次ごとに18時間の絶食体重を測定し、増体量を求めた。

9.主要成果の概要
 1)現存草の年間合計量はトールフエスクが多い傾向にあった。オーチャードグラスは春の草量が年間合計の約50%を占め、夏及び秋が各25%と抵下し、李節間差が大きかった。これに比べ、トールフエスクの季節割合は春:40% 夏:30%及び秋:30%と季節間で平準化していた。
 2)放牧草の細胞壁物質含量はどの季節においてもトールフエスクの方がオーチャードグラスよク少ない傾向を示した。in vitro乾物消化率はトールフエスクが平均5%高く、季節間では春が最も高く夏に低下した。しかし、両草種とも70%以上の高い消化率を示した。
 3)採食量はトールフエスクがオーチャードグラスに比べて高い噸向を示し、体重350㎏換算で各季節ともDMで約1㎏/日の差がみられた。季節間では両草種とも春が明らかに高く、夏と秋ではほとんど差は認められなかった。
 4)年間の平均日増体量はオーチャードグラスに比でてトールフエスクが約0.1㎏/日高かった。延放牧頭数は大きな差はなく、これらの結果、ha当り増体重はトールフエスクが80〜90㎏高かった。
 5)以上の結果、肉牛を同一草種に年間を通じて放牧した場合、トールフエスク「ホクリョウ」はオーチャードグラス「キタミドリ」に比較して家畜生産性が優れたいた。

10.主要成果の具体的数字
 現存草量及びF/D比
年次 草  種 現 存 草 量  (DM,㎏/10a) F/D比
(DM、Kg/10a)

(1〜2回次計)

(3〜4回次計)

(5〜6回次計)
年間合計
1980 トールフェスク 560 420 430 1,410 21.3
オーチャードグラス 580 370 300 1,250 19.5
1981 トールフェスク 410 420 430 1,260 16.8
オーチャードグラス 580 320 310 1,210 16.1

in zitro乾物消化率及び採食量 (4か年平均)
草 種 in zitro乾物消化率(%) 採食量(DM,g/㎏LW)
トールフェスク 82 76 77 32 23 23
オーチャードグラス 79 71 72 29 20 21

草種別の家畜生産性
年次 草  種 入牧時
体 重
(㎏)
終了時
体 重
(㎏)
期 間
増体重
(㎏)
平均日
増体重
(g/日)
延放牧
頭 数
(頭・日/ha)
面積当り
増体重
(㎏/ha)
1980 トールフェスク 292 382 90 675 660 446
オーチャードグラス 286 362 75 564 637 359
1981 トールフェスク 250 341 91 634 753 478
オーチャードグラス 251 327 76 531 747 397

11.今後の問題点
 1)異なる条件におけるトールフエスク草地の家畜生産性比較
 2)放牧家畜の採食量推定精度の向上

12.普及指導上の注意事項
 1)放牧利用に当っては、草種の季節生産性を生かすよう配慮し、また春の掃除刈りは早めに実施する。
 2)本試験ではイネ科単一草地を用い、施肥は年間N:20㎏、P2O5:10㎏、K2O:20㎏の条件で実施した。従って、マメ科混播や施肥水準の低い場合等検討が必要。