【指導参考事項】
てん菜導入による草地の生産性向上に関する現地実証試験
(昭和52〜56年)
道立上川農試・畑作科、土壌肥料科

目　的
　低位生産草地の更新を行う場合に、てん菜導入による再草地化の効果を検討し、併せて草地跡てん菜の生産性向上対策について実証的に検討を行う。

試験方法
　試験地および土壌：上川郡剣渕町五区　五十嵐　賢　暗赤色土(1101)湯島　統
　供試ほ場の来歴：昭47年迄てん菜作付等普通畑利用、昭48年混播牧草地化
試験処理：

　*導入2作系列のてん菜区には堆肥区と30%の増肥区を設定した。
栽培法：てん菜、とうもろこし、牧草等は標準耕種撮要に準じた。
　混播草種、OG、MF、RC、LC　(無更新区にはALfが混播されている)の4草種。土壌改良資材もその都度、適切に施用する。

試験成果の概要
　(1)実証ほのてん菜収量は隣接農家ほ場よりも多収であった。導入2作型のてん菜連作区は、とうもろこし〜てん菜区に比較して若干、根重が低下したけれども30%程度の増肥によって、とうもろこし〜てん菜区並の収量が得られた。
　(2)56年の乾草収量については牧草無更新区がアルファルファ混播草地のため、更新草地の牧草収量と直接対比できないが、更新草地間では差がなかった。
　(3)更新時に鋤込みされる牧草根量(乾物)は約1.3t/10aであり、1年間経過すると凡そ70%が分解された。その結果、土壌中の養分はNをはじめとしてP2O5、CaO、へMgO等が富化した。
　(4)牧草更新に際して、てん菜、とうもろこし等を1〜2作導入後の土壌の化学性についてみると、とうもろこし〜てん菜区の可給態−Nがやや低く、てん菜2作区の有効態−P2O5等が若干高い。その他の土壌養分は概ね富化している。なお、牧草体成分含有率についてみると、とうもろこし〜てん菜区のN含量がやや低く、てん菜2作区のP2O5含量か高い傾向を示している。
　(5)導入作物の養分収支はてん菜、とうもろこしともにNとK2Oの吸収量が大きい。したがっててん菜については頸葉還元や堆肥施用により収支バランスをとる必要があり、とうもろこしについては全種物体の利用ということもあり、後作についての充分な配慮が必要と考えられる。なお、P2O5は土壌にかなりの量が富化される。

主要成果の具体的データ
収量成績(てん菜)　　(54年)
処　　理 10　a　当　り
頸葉重t 根重t T/R 糖分% 製糖量㎏ 根重比 糖量比
1. てん菜2作 無堆肥 普 2.79 3.81 0.73 15.58 594 (100)81 (100)83
2. 増 2.94 4.77 0.62 14.53 694 (125)102 (117)97
3. 堆　肥 普 2.94 4.02 0.73 14.72 592 (106)86 (100)83
4. 増 3.45 4.41 0.78 14.55 642 (116)94 (108)90
5. とうもろこし
〜てん菜		 無堆肥 普 2.79 4.38 0.64 15.64 678 (100)94 (100)95
6. 増 3.30 4.47 074 14.79 658 (102)95 (97)92
7. 堆　肥 普 3.00 4.44 0.68 14.97 665 (101)95 (98)93
8. 増 3.30 4.44 0.74 14.39 639 (101)95 (94)89
9. てん菜初年目 2.85 4.69 0.61 15.30 714 100 100

(牧草)　　　　　　　　　　　　　　　　　　(56年)　(㎏/10a)
　 一番草 二番草 計 乾草重
比率(%)
イネ科 マメ科 計 イネ科 マメ科 計 イネ科 マメ科 計
1. 牧　　草 生 3,195 975 4,170 638 610 1,248 3,833 1,585 5,418 　
無　更　新 乾 525 143 668 133 130 263 658 273 931 126
2. 牧　　草 生 2,525 1,200 3,725 1,098 215 1,313 3,623 1,415 5,038 　
直　接　更　新 乾 360 118 478 215 43 258 575 161 736 100
3. て　ん　菜　跡 生 3,105 1,020 4,125 980 190 1,170 4,085 1,210 5,295 　
牧　　草 乾 440 98 538 201 38 239 641 136 777 106
5. て　ん　菜　2　作 生 2,665 1,300 3,965 965 155 1,120 3,630 1,455 5,085 　
跡　牧　場 乾 385 124 509 202 31 233 587 155 742 101
4. とうもろこし 生 2,586 1,080 3,660 973 180 1,153 3,559 1,260 4,819 　
〜てん菜跡牧場 乾 365 100 465 198 36 234 563 136 699 95

養分収支　　　　　　(53〜54年)　　　　(㎏/10a)
項　　目 年次 施　　肥　　量 吸　　収　　量 収　　　支
処　　理
N P2O5 K2O N P2O5 K2O N P2O5 K2O
3.てん菜1作区 53年 − − − − − − − − −
54年 18.8 23.8 18.2 19.9 6.0 29.7 △1.1 17.8 △11.5
計 18.8 23.8 18.2 19.9 6.0 29.7 △1.1 17.8 △11.5
4.てん菜2作区 53年 19.3 23.8 18.2 31.9 6.9 28.3 △12.6 16.9 △10.1
54年 18.8 23.8 18.2 17.6 6.0 26.9 1.2 17.8 △8.7
計 38.1 47.6 36.4 49.5 12.9 55.2 △11.4 34.7 △18.8
5.とうもろこし
〜てん菜区		 53年 8.0 16.0 11.2 18.2 4.7 13.7 △10.2 11.3 △2.5
54年 18.8 23.8 18.2 18.4 6.5 27.1 0.4 17.3 △8.9
計 26.8 39.8 29.4 36.6 11.2 40.8 △9.8 28.6 △11.4