【指導参考事項】
転換畑における秋まき小麦の雪上施肥について
道立中央農試 化学部土壌改良第一科
〃 稲作部栽培第一科
〃 畑作部畑作第一科
農務部農業改良課
(昭和54〜56年)
目 的
秋まき小麦に対する追肥は、融雪後起生期(4月下旬)に行なわれるのが一般的であるが転換畑においては圃場の乾燥が遅れ、また他の農作業との競合もあり、融雪後の追肥作業に困難をともなう場合がある。これを回避する方法として堅雪期(3月中〜下旬)における雪上からの追肥が考えられ、この試験ではその効果を検討することを目的とする。
試験方法
A.雪上施用肥料の雪中および土壌中における動態調査(土壌改料第一科・栽培第一科)
B.雪上追肥の効果試験(土壌改良第一科、栽培第一科、関係各普及所)
C.肥料の種類と雪上追肥の効果に関する試験(栽培第一科)
試験成績
転換畑の秋まき小麦に対する雪上追肥の有効性を、一般慣行の起生期追肥の場合と比較検討した結果を要約すると下記のとおりである。
(1)雪上に施用した肥料成分は溶液となって極めて短時日のうちに雪中を下部に移動して土壌面に到達する。そしてそのほとんどが極く表層の土壌に保持され横への移動はほとんど認められない。
(2)雪上追肥区は起生期追肥区より早めに効果が現われ、多くの試験事例からみて雪上追肥区の増収効果は起生期追肥区と同等とみなされる。
(3)雪上追肥の肥料としては、硫安とNKC-20で同様の効果が認められ、硝安では劣った。
(4)雪上追肥の時期による効果の差をその時の積雪深でみると、試験を行った7〜70㎝の範囲ではとくに相異は認められなかった。また、土壌の種類による効果の差も認められなかった。
(5)以上の結果、平担な転換畑においては、雪上追肥法は起生期追肥法と同等の効果があり、農作業が競合したり、排水不良などのため起生期追肥作業の困難なところでは有効な追肥法といえる。
主要成果の具体的数字
図1 積雪深と施用窒素の動態(試験Ⅰ)
表1 施用Nの回収(4月16日)(試験Ⅰ)
無機能N | 回収率 | |
①無追肥区 | 16.6 | - |
②雪上追肥区 | 61.5 | - |
②−① | 44.9 | 89.8% |
表2 生育と収量(試験Ⅰ)
5月1日 | 6月16日 | 7月29日 | 子実重 | 子実歩合 | |||||||
草丈 | 茎数 | 乾重 | 草丈 | 茎数 | 乾重 | 草丈 | 茎数 | 乾重 | |||
無追肥区 | (cm) 14.4 |
(本) 255 |
(g/㎡) 103 |
76.4 | 60.0 | 655 | 94.6 | 47.2 | 673 | (kg/10a) 304 |
(%) 45.2 |
起生期追肥区 | 14.9 | 242 | 128 | 79.8 | 70.5 | 803 | 104.1 | 58.8 | 1,000 | 436 | 43.6 |
雪上追肥区 | 16.4 | 239 | 160 | 80.2 | 72.7 | 863 | 104.3 | 57.2 | 1,034 | 445 | 43.0 |
表3 窒素の吸収(試験Ⅰ) (100個体)
N(g) | 吸収 全N(g) |
|||
(1) | (2) | (3) | ||
無追肥区 | 0.17 | 1.05 | 0.20 | 1.42 |
起生期追肥区 | 0.23 | 1.16 | 0.44 | 1.83 |
雪上追肥区 | 0.33 | 1.25 | 0.29 | 1.87 |
表4 肥料の種類による
追肥の効果*(試験Ⅱ)
子実重(kg/10a)
追肥時期 | ||
起生期 | 雪上 | |
硫安 | 469 | 448 |
NKC-20 | 473 | 445 |
硝安 | 477 | 433 |
図2 追肥時の積雪深と追肥の効果(全試験)
(起生期または融雪期追肥区の収量を100として)
註)○:化学部土壌改良第一科
×:稲作部栽培第一科
・:農業改良普及所
指導上の注意事項
(1)雪上追肥を行う場合、まきムラを防止するため、肥料に着色剤を混じて施用すると便利である。
(2)追肥量は北海道施肥標準に準拠すること。