【普及奨励事項】
1.課題の分類  分類番号 Ⅶ-a  整理番号 951-1
2.場 所 名   北海道農業試験場
          北海道立中央、上川、天北、北見、十勝、根釧農業試験場
3.新品種候補系統名  てん菜「Dihill」

4.来 歴
 「Dihill」はスエーデンのヒレスヘグ種子会社で育成された品種であるが、昭和53年に北海道糖業株式会社が輸入した。
昭和53年からはHill mono829と言う系統名で試験を行ったが、昭和57年からはDihillと言う品種名で試験を続けた。その経過概要は次の通りである。
 (1)昭和54年:北農試、北海道十勝農試、北見農試において輸入品種検定試験を行った。
 (2)昭和55年〜58年:北農試、北海道立中央、上川、天北、北見、十勝、根釧農試において系統適応性検定試験を行った。
 (3)昭和55年:北農試において、抽苔耐性特性検定試験及び褐斑病抵抗性特性検定試験を行った。
 (4)昭和56年〜57年:北海道立十勝農試、北見農試において栽培特性検定試験を行った。
 (5)昭和57年〜58年:北海道立中央農試において耐湿性検定試験を行った。

5.特 性
 「Dihill」は二倍体単胚一代雑種で、草丈はやや低く、葉姿はやや開平型である。
 根形は円錐で、露肩はやや少なく、分岐根も少ない。
 抽苔耐性が強く、当年抽苔はない。
 褐斑病に対しては「モノヒル」と同様に弱い品種である。
 過湿ほ場における湿害のための根腐症状は「モノヒル」に比べて多く、耐湿性の弱い品種である。
 「Dihill」の根重は「モノヒル」と同程度の成績を示しているが、過湿ほ場での根重の低下が著しい。
 根中糖分はいづれの地域においても「モノヒル」に比べて指数で4%前後高く、「モノミドリ」並かやや高い成績を示している。

6.試験成績
     てん菜系統適応性検定試験(昭和55年〜昭和58年)
場 所 品 種 根 重
(t/10a)
根中糖分
(%)
糖 量
(kg/10a)
対モノヒル比
根  重 根中糖分 糖  量
北農試
(直播)
Dihill
モノヒル
ノバヒル
モノミドリ
5.59
6.02
5.61
5.14
17.68
17.18
17.48
17.70
991
1,036
985
911
93
100
93
85
103
100
103
103
96
100
95
88
中央農試
(Ⅰ)
(移植)
Dihill
モノヒル
ノバヒル
モノミドリ
6.88
7.45
7.00
6.56
16.26
15.85
15.98
16.54
1,120
1,178
1,117
1,085
92
100
94
88
103
100
101
104
95
100
95
92
中央農試
(Ⅱ)
(移植)
Dihill
モノヒル
ノバヒル
モノミドリ
6.11
6.14
5.65
5.29
17.70
17.12
17.75
17.91
1,082
1,046
1,004
946
100
100
92
86
103
100
104
105
103
100
96
90
上川農試
(移植)
Dihill
モノヒル
ノバヒル
モノミドリ
5.62
5.79
5.72
4.95
18.14
17.36
17.90
18.03
1,021
1,007
1,023
891
97
100
99
85
104
100
103
104
101
100
102
88
天北農試
(移植)
Dihill
モノヒル
ノバヒル
モノミドリ
4.43
4.79
4.78
4.21
17.06
16.62
16.92
16.55
756
796
811
697
92
100
100
88
103
100
102
100
95
100
102
88
北見農試
(直播)
Dihill
モノヒル
モノミドリ
4.28
4.34
3.85
18.09
17.32
17.48
778
758
673
99
100
89
104
100
101
103
100
89
十勝農試
(直播)
Dihill
モノヒル
モノミドリ
5.10
5.36
5.57
18.13
17.51
18.04
927
940
827
95
100
85
104
100
103
99
100
88
十勝農試
(移植)
Dihill
モノヒル
モノミドリ
5.60
5.59
4.67
16.54
16.26
17.22
927
908
804
100
100
84
102
100
106
102
100
89
根釧農試
(移植)
Dihill
モノヒル
モノミドリ
4.41
4.79
4.06
17.39
16.74
16.97
767
803
691
92
100
85
104
100
101
96
100
86

7.配布可能種子量   2,000Kg

8.栽培適地及び普及見込面積
 道東地域(根釧地方を除く)及び道央地域(上川・留萌地方を除く)の湿害の恐れの無い地帯の既存品種と配合して栽培する。
    3,000ha

9.栽培上の注意
 (1)根中糖分の低下の原因となる極端な多肥栽培はさける。
 (2)過湿により根腐症状の発生が多いので、湿害の恐れのあるほ場や転換畑等での栽培はさける。
 (3)褐斑病に弱いので、防除を徹底すること。