【指導参考事項】
北海道におけるイチゴの高収益栽培技術
イチゴ  作型・栽培一般
道南農試
Ⅰ 夏秋どり時期による二季目作型対応
期   間  昭和54年〜56年、
予算区分  道単、
協力分担関係  なし
1.担   当  管理科 今野 寛・園芸科 沢田一夫

2.目的  夏期冷涼な寒地の気候特色を活用し、短日条件を与えて強制的に花芽分化をうながし夏〜秋の端境期に生産する。さらにこの株の管理によって翌春に既存作型の露地・無加温半促成・加温半促成と組み合せて再生産する二季どり作型を設定し、寒地イチゴ栽培の優位性を最大限に活かした高収益性栽培の確立をはかる。その一環として夏秋どり後の株充実程度による二季目適応作型を検討する。

3.試験方法
54年度 55〜56年度
短日処理時期 夏秋どり後
の立芽数
作型組み合せ
秋期+春期
短日処理時期 立芽数
夏秋後
春期 作型組み合せ
秋期+春期
4月20日※
5月20日※
5月20日
6月20日
1・2・3芽
1・2・3芽
1・2・3芽
2・3・放任
露地+露地
露地+無加温半促成
露地+加温半促成
ハウス+無加温半促成
ハウス+加温半促成
5月20日
6月20日
2芽
3芽
3芽
放任
露地+露地
露地+無加温半促成
ハウス+無加温半促成
ハウス+加温半促成

4.結果および考察
 (1)短日処理による花成誘起には、短日と低温環境が必須であるが、腋芽充実度も大きな要因であり、春期のハウス促進育苗によって早期からの短日処理が可能となる。露地栽培に引続き生産でき、短日処理を順次実施することにより果実が凍害を受けるまで(11月下旬)生産可能である。その粗収益を表に示した。短日処理時期によって生育中の温度環境が大きく異なるため、収量・収益性に大差がみられるが、それぞれ端境期生産・継続出荷・労力分散などにおける作型としての収益性水準である。

 (2)これら夏秋どり収穫終了時に摘芽を実施し、二季どり適応性を露地・無加温半促成・加温半促成において検討した。二季どり栽培の利点としては、①苗確保のための親株ほや育苗ほが不要である。②したがってその管理労力や定植作業も不要であり、二季どりは夏秋どり後の摘芽やその他労力に10アール当75時間を要するが、一季どりが定植まで225時間要するのに比し33%に省力でき、全栽培期間の管理労力は51%に省力できる。③またマルチフィルムは、二季目が露地栽培では風による破損で二季使用が不可能な場合が多いが、無加温や加温半促成など二季目ハウス利用の栽培では、若干補修する程度で二季使用が可能であり省資材につながる。などがあげられる。

 (3)露地指向における処理時期別の収量は4月・5月処理など夏秋どりが自然環境での花芽分化期以前に終了する時期のものは株充実が進むため多収水準であるが、6月処理は低収を示しており夏秋どり中に花芽分化がおこなわれることや、夏秋多収水準での果実肥大負担1こよる腋芽充実の遅延が原因と考えられる。

 (4)無加温半促成指向においては、処理時期が遅いものほど花房数・着果数が少なくなる傾向がみられるか、果重は担果能力によって逆傾向を示しており、結果的に収量差は認められなかった。

 (5)加温半促成指向では、花房数・着果数には処理時期による一定の傾向は認められないが、上物果数・一乗重は処理時期の遅いものほど多大となり、収量は露地と逆傾向で処理時期が遅いほど多収となった。加温栽培は半休眠状態で生育停止することなく茎葉や根が発達するが、その程度が岩株(在ほ期間の短かい)ほど活力の高いことに起因すると考えられる。

 (6)以上、短日処理時期による二季目作型適応性は、露地指向には4月〜5月処理、無加温半促成指向には全処理時期、休眠利用の加温半促成指向には6月処理が適応している。

 (7)夏秋どり後の立芽数は3作型共通して、各処理時期ともに強度の制限は即、花房数減に結びつき減収した。また芽数が多いと多収となるが、一面被覆度を高めることによる果実品質えの影響もあり、さらに一季どり収量水準などからも考慮すると4月〜5月処理は2芽立、6月処理は3芽立が適当である。

 (8)二季目作型において、それぞれ適応している処理時期について一季どりと粗収益を比較すると、露地栽培では極めて高い収益増が認められ、また無加温半促成や加温半促成では同水準であるが、省力・省資源などを考慮すると、二季どり栽培は高収益性の栽培法といえる。

5.主要成果の具体的データー
 (1)夏秋どり
年度 短日処理時期 出蕾株
率(%)
収穫始
(月日)
花房数
(本/株)
果数(ケ/株) 収穫(時期別kg/a) 平均一
果重(g)
上物 くず 100日 120日 140日
54 4月20日※ 91 7.24 2.1 10 7 3 20 13.1 45.9 0.8 59.8 8.7
5月20日※ 100 8.5 4.1 8 7 10 25 20.6 30.2 0 50.8 7.8
5月20日 95 8.17 2.7 8 6 9 23 11.5 33.6 0 45.1 7.9
6月20日 100 9.25 4.8 17 9 3 29 9.3 86.3 33.8 129.4 9.4
55 5月20日 100 8.12 3.4 12 15 4 31 36.1 7.4 1.7 45.2 6.8
6月20日 100 9.18 5.4 28 15 2 45 30.6 55.0 24.2 109.8 7.2
56 5月20日 100 8.12 2.5 12 15 4 31 45.2 4.2 0 49.4 7.1
6月20日 100 9.10 2.2 16 8 2 26 41.9 21.7 3.4 67.0 7.4

 (2)二季目

 (3)粗収益(千円/a)



短日処理時期 平均 ハウスおよび
短日処理経費
差引計
4月20日※ 104.4 8.6 95.8
5月20日※ 100.8 8.6 92.2
5月20日 89.7 5.2 84.5
6月20日 204.0 5.2 195.8


二季どり 一季どり 一季対比(%)
183.4
274.6
434.9
136.5
277.2
440.6
134
99
99

6.今後の問題点

7.成果の取扱い