【指導参考事項】
北海道におけるイチゴの高収益栽培技術
イチゴ  作型・栽培一般
道南農試
Ⅱ 二季目無加温半促成指向における秋期ハウス保温効果
 期  間  昭和54年〜56年、
 予算区分  道単、
 協力分担関係  なし
1.担  当  管理科 今野 寛・園芸科 沢田一夫

2.目  的  夏秋どり収穫後〜収穫中の株について、ハウス保温による生育期間の延長で腋芽充実をはかり、花房数増加による収量性の向上をはかる。

3.試験方法
  短日処理時期 秋期保温期間 摘要(夏秋どり後の立芽数)
54年度 6月20日 無(露地)
60日
30日
3芽
55〜56年度 5月20日
6月20日
前年に同じ 2芽
3芽

※ 秋期保温法=各年度とも9月11日からハウスにビニールを被覆し、それぞれの期間を保温した。温度管理は、54年は全体被覆で換気扇20℃セット、11月以降15℃セットとした。55年〜56年度は日中側面開放で自然通風換気とし、11月以降全体被覆で換気扇15℃セットとした。

4.結果および考察
 (1)無加温半促成や露地栽培など休眠が完全に覚醒する作型では、年内における株充実が収量に大きく影響するが、無加温半促成指向では年内にハウスパイプを施設し、ビニールも用意してあることから、それらを活用して晩秋に保温し生育期間の延長=株能率の向上をはかることができる。
 (2)収量は、54年度は保温によって減収し長期保温はさらに減収したが、その収量構成要素では上物果数および一果重の減少に起因している。この低下要因は保温期間中の高温経過による株疲れ現象によるものと思われる。保温期間中の最高温度は、54年度は換気扇のみの換気のため、日中外気温との較差が12℃〜5℃もみられ、10月末まで50日間も23℃〜30℃の高温に経過しており、これが株疲れ現象を招いたと考えられた事から、55〜56年度は、10月末まで日中は側面を開放し自然通風をはかった。その結果、花房数増加効果が大きく、それに伴う上物果数増加によって長期保温ほど多収性を示した。
 (3)保温に要する労力は、10アール当でビニール展張と除去収納作業に72時間を要するが、1時間当労働報酬を仮に800円で試算しても、粗収入は無保温(24万円/a)に比し60日保温でl14%、80日保温でl18%の高収益性が認められた。
 (4)秋冷の早い寒地においては、腋芽充実→花房数増加→上物果数増加など収量構成要素を高めるために、秋期ハウス保温法は効果の高い技術と判断された。

5.主要成果の具体的データー

秋期保温における温度較差(55〜57年半旬)

    収量構成要素と時期別収量

6.今後の問題点

7.成果の取扱い(普及指導上の注意事項)
 (1)保温前期(10月末まで)のハウス内温度は、株疲れ防止のために日中20℃程度に換気する。
 (2)保温後期(11月)のハウス内温度は、不時出蕾防止のために日中15℃程度に換気する。
 (3)ビニールフィルムは、展張および除去作業に簡易で且つ破損しないように妻面にフィルム止具(ピニペットなど)を取付けることが望ましい。