【指導参考事項】
1.課題の分類 2.研究課題名 麦わら飼料化のためのアンモニヤ処理法 (常温スタック方式) 3.期 間 昭52〜62 4.担 当 北農試、草開発一部 5.予 算 経常 6.協力分担 |
7.目 的
麦わらなど繊維の多い飼料を苛性ソーダのようなアルカリ剤の中に浸漬すると、消化率が高くなることは早くから知られていたが、アンモニヤをアルカリ処理剤として用いるようになったのは、比較的最近のことである。常温スタック方式は農家で実施できる方法であるが、わが国では実際規模で行なわれた実験例がほとんどなく、実施方法について不明の部分が多いので、実用化のための指針をつくるために実施した。
8.試験研究方法
麦わらの水分、密閉、温度、アンモニヤの添加量など処理効果に及ぼす要因を明らかにするために、実験室規模及び実際規模で試験を行った。
9.試験結果の概要
(1)水分の効果:麦わらに水を添加して水分含量を高めると、アンモニヤの結合割合と消化率が比例的に高くなった。
(2)密閉の効果:完全に気密にして密閉した方力、アンモニヤの回収率と消化率が高くなる。
(3)温度の効果:5℃よりも25℃および35℃で処理した方が、顕著に消化率が高くなった。
(4)添加量の効果:3%の添加でめん羊による消化率が顕著に高くなった。
(5)肉用牛の摂取量:アンモニヤ処理した麦わらの法を多く摂取した。
結論:乾燥した場所に火山灰などを敷いて、丸太などのスノコの上に梱包した麦わら堆積し、水を添加して水分含量を25%とし、ピ二ールをかぶせて裾を砂などで密閉し、乾物当りアンモニヤを3%添加し、夏期に実施して秋まで放置する。製品の給与は、当面は中または中の下程度の乾草と同等とみて用いればよい。
10.主要成果の具体的図表
飼料成分と消化率に及ぼす水分と温度の効果(乾物中%)
処理 | 粗蛋 白質 |
ADF | ADF CP |
CWC | ヘミセル ローズ |
リグ ニン |
ケイ酸 | インビトロ消化率(%) | |
CWCD | ADMD | ||||||||
NH3無処理 | 3.9 | 52.5 | 0.9 | 76.9 | 24.4 | 6.8 | 4.7 | 41.8 | 41.9 |
処理水分14% | 9.3 | 53.1 | 1.2 | 76.8 | 23.6 | 6.7 | 4.5 | 60.0 | 56.7 |
〃 〃 25〃 | 11.1 | 54.2 | 1.5 | 72.8 | 18.6 | 7.0 | 4.5 | 67.2 | 62.6 |
〃 温度5℃ | 8.7 | 54.1 | 1.1 | 76.9 | 22.8 | 6.8 | 4.4 | 61.2 | 56.8 |
〃 〃 15℃ | 9.3 | 53.7 | 1.2 | 77.2 | 24.5 | 7.0 | 4.5 | 62.1 | 57.3 |
〃 〃 25℃ | 10.4 | 53.4 | 1.3 | 74.0 | 20.6 | 6.8 | 4.3 | 67.7 | 62.6 |
〃 〃 35℃ | 11.5 | 53.6 | 1.5 | 71.8 | 18.2 | 6.6 | 4.6 | 65.9 | 62.0 |
〃 〃 60℃ | 11.1 | 54.6 | 1.7 | 74.1 | 19.5 | 7.1 | 4.7 | 61.2 | 59.6 |
消化率に及ぼす添加量の効果(%)
処 理 | 乾物 | 粗蛋 白質 |
粗脂肪 | NFE | 粗繊維 | DCP | TDN | |
NH3無処理 | 41.5 | 0 | 38.1 | 41.4 | 55.3 | 0 | 42.9 | |
NH31%、水分25% | 45.4 | 23.1 | 32.0 | 39.8 | 63.2 | 1.4 | 45.3 | |
NH32%、 〃 | 45.4 | 27.5 | 25.4 | 40.9 | 62.6 | 1.9 | 45.3 | |
NH33%、 〃 | 51.9 | 37.6 | 56.2 | 44.6 | 71.0 | 3.4 | 51.9 | |
NH33%、水分14% | 46.2 | 20.0 | 49.4 | 40.9 | 64.4 | 1.3 | 46.4 | |
信頼区間 | F415 | 17.36** | 93.64** | 9.37** | 2.57 | 25.35** | 146.67** | 14.48** |
0.01 | 3.7 | 5.9 | 17.2 | 4.7 | 4.6 | 0.4 | 3.7 | |
0.05 | 2.8 | 4.3 | 12.4 | 3.4 | 3.3 | 0.3 | 2.7 |
11.今後の問題点
アンモニヤ処理によってDCPやTDN含有率が高められた分だけ、これらの含有率が低い濃厚飼料を用いることができるような飼料の流通体制にすることが必要である。
肉用育成肥育の場合は、この飼料を大量に用いることができるような体制(たとえば牛肉の等級格付けを変えることなど)を考慮する必要がある。
12.指導上の注意事項
肉用繁殖牛の場合は、問題なく基礎飼料として多給できる。
現在の濃厚飼料多給方式による育成肥育の場合でも、給与乾草のすべてをこの飼料で代替えできる。
乳用育成牛、搾乳牛の場合は、給与乾草の半量程度代替えできるだろう。
アンモニヤボンベの取扱いは、取扱資格者の指導を受け、必ず屋外で行い、逆しての注入はしないこと。