【普及奨励事項】
Ⅰ 摘  録
 1.「たんねもち」の特性概要
品種名 たんねもち 組合せ 道北22号/道北糯18号★★
 マツマエ/上育323号  ★★かむいもち/ささほなみ
特性 長所1.良質 2.強稈性 3.多収性
   4.糯として千粒重がやや重い。
   5.割籾の発生が少ない
短所1.登熟日数が長い
   2.穂数確保がむずかしい
採用県および
普及見込入面積
北海道(網走管内)300ha
調査地 育成地 北見農業試験場
品種名・苗の種類/
形質および項目
たんねもち 標準・
おんねもち
たんねもち 標準・おんねもち
中苗 成苗 中苗 成苗 中苗
出穂早晩性 早生の晩 早生の晩 中生の中 中生の中
熟期 中生の早 早生の晩 中生の晩 中生の中
草型 偏穂数型 穂数型 偏穂数型 穂数型
出穂期(月日) 8月2日 8月2日 (7月20日) (7月25日) 8月1日 (7月25日) (7月27日) 8月3日
成熟期(月日) 9月26日 9月25日 (9月4日) (9月5日) 9月21日 (9月3日) (9月4日) 9月21日
稈長(㎝) 64cm 61cm (62cm) (60cm) 59cm (63cm) (61cm) 59cm
穂長(cm) 16.1cm 15.1cm (16.5cm) (16.4cm) 14.8cm (14.9cm) (15.6cm) 14.8cm
穂数(本/㎡) 550本 685本 (666本) (605本) 546本 (743本) (699本) 619本
割籾歩合(%) 26 31         7         19
芒性 少・極短 中・やや短 少・極短 中・やや短
ふ先色 黄白 黄白 黄白 黄白
脱粒性
耐倒伏性 やや強〜強 やや強 やや強〜強 やや強
耐冷性(障害型) やや強 やや強 やや強 やや強
葉いもち耐病性 やや強 やや強
穂いもち耐病性 やや弱〜中 やや弱〜中
玄米重(kg/a) 56.3 47.7 (63.4) (64.3) 54 (59.5) (56.5) 49.3
〔同上比率〕 〔118〕 〔100〕 〔107〕 〔114〕 〔110〕 〔100〕 〔100〕 〔100〕
玄米千粒重(g) 20.7 20.3 (19.8) (19.9) 19.7 (19.6) (19.5) 19.5
玄米品質 上下中 上下中 (上下中) (上下中) 上下中 (上下中) (上下中) 上下上
玄米等級 2中下 2下下 (規外) (1) 2下上 (規外) (規外) 2下上
食味 中上 中上 中上 中上
食味特性 749 708 (754) (773) (739) (773)
調査年次 81〜84年の4ヶ年平均 81〜84(83年除く)の3ヶ年平均、( )は84年のみ。
注) 食味特性:アミログラムの最高粘度(82〜84年の3ケ年平均)。

2.「たんねもち」の特記すべき特徴
 糯種として良質多収である。すなわち、玄米品質と食味および加工適性は「おんねもち」並で良好である。収量は「おんねもち」を上廻る。耐倒伏性は「おんねもち」並かやや良い。割籾の発生は「おんねもち」より少ない。苗草丈の伸長程度は「おんねもち」より小さく、育苗しやすい。欠点としては、登熟日数が長いことで、熟期は「おんねもち」より遅くなる。また、穂数が「おんねもち」に比べて少ない。

3.栽培適地を拡大する理由
 現在、網走管内における糯作付面積は1,585haである。そのうち99%が「おんねもち」 なので、刈取り適期幅が狭く、刈遅れになりがちであり、割籾の発生が多いことから、品質低下をきたしやすい。加えて、「おんねもち」は、穂数が多い品種である上に、苗草丈が伸びやすく、感温性がやや大きいので、穂揃性がよくないことなどから、近年着色粒による品質低下が問題となっている。
 「たんねもち」は「おんねもち」に比べて、苗草丈の伸長程度が低く育苗しやすく、割籾の発生が少なく、感温性はやや小さく、穂数は少ないので、穂揃性が良く、着色粒の発生が少ない傾向にあり、品質上有利である。しかし、成熟期は「おんねもち」より遅く、不安定要因が残されていた。成苗を供試した試験結果では、「おんねもち」の中苗栽培に比べて、成熟期は「おんねもち」並か近くなり、安全性が高まると考えられた。
 したがって、網走管内全域の「おんねもち」に配合して作付し、危険分散および刈取り適期幅の拡大などにより、良質糯米の安定生産をはかりたい。普及予定面積は、当該地帯の糯作付面積1,585haの約20%、300haである。


注)1.縦線は栽培適地の拡大による普及見込地帯を示す。
  2.現在(1984年)の栽培適地:上川、留萌、十勝、空知、石狩、
  後志、胆振、日高、桧山北部、渡島北部およびこれに準ずる地帯。

4.栽培上の注意
 (1)「たんねもち」の栽培に当っては、成苗を用い、熟期を早めることを前提とする。