【普及奨励事項】
完了試験研究成績(作成昭和60年1月)
1.課題の分類  総合農業 作物生産 夏作物 てんさい−Ⅰ−4
          北海道 畑 作 てんさい (2)
2.場 所 名  北海道農業試,験場
          北海道立中央、上川、天北、北見、十勝、根釧農業試験場
3.新品種候補系統名  てんさい「Kawe J 137」

4 来   歴
  「Kawe J 137」は西ドイツのクラインワンツレーベン種子会社で育成した三倍体単胚の一代雑種品種である。昭和46年から昭和51年に選抜育成した2倍体単胚雄性不稔系統「MS-OA-0047」と四倍体多胚花粉親系統「PS-54-124-F」とを昭和52年に交配して、三倍体単胚一代雑種の「MC-80-22」を育成した。昭和55年に日本甜菜製糖株式会社が輸入し、昭和56年から「Kawe J 137」と命名して北毎道で試験が行われた。
(1)昭和55年:日本甜菜製糖株式会社において輸入品種検定予備試験を行った。
(2)昭和56年:北農試、北海道立十勝農試、北見農試において輸入品種検定試験を行った。
(3)昭和57年〜59年:北農試、北海道立中央、上川、天北、北見、十勝、根釧農試において系統適応性検定試験を行った。
(4)昭和57年〜58年:北農試および道立各農試において褐斑病抵抗性特性検定試験及び抽苔耐性特性検定試験を行った。
(5)昭和58年〜59年:北海道立十勝農試、北見農試において栽培特性検定試験及び早期収穫適性に関する試験を行った。
(6)昭和58年〜59年:全道18ケ所において育成系統現地検定試験を行った。

5.特   性
(1)一般的性状:「Kawe J 137」は三倍体単胚一代雑種で、「カーベメガモノ」に比べて草丈はやや高く、葉姿はやや開平型である。根形は短円錐で、分岐根は少ない。
(2)当年抽苔:ヨーロッパの品種は一般的に抽苔耐性が強いが、「Kawe J 137」も「カーベメガモノ」及び「モノヒル」と同様に抽苔耐性が強く、一般栽培においては当年抽苔することは殆んどない。
(3)耐病性:てんさいの主要病害である褐斑病に対しては「カーベメガモノ」と同様に、抵抗性のない弱い系統である。その他の病害についても「カーベメガモノ」との差は認められない。
(4)根重:「Kawe J 137」の根重は年次及び場所によって多少ふれてはいるものの、「カーベメガモノ」と同程度の成績を示している。
(5)根中糖分:「Kawe J 137」は北海道に栽培されている主要品種の中では最も高く、高糖性品種と言われている「モノホート」及び「モノヒカリ」並の高糖性系統である。
(6)品質:「Kawe J 137」の有害性非糖分は「モノヒル」、「ハイラーべ」及び「カーベメガモノ」より少なく、「モノミドリ」と「モノヒカリ」の中間のf直を示し、「モノヒカリ」につぐ良品質の系統である。

6.試験成績
 てんさい系統適応性検定試験(昭57年〜59年)
場所 品種 根重
(kg/a)
根中糖分
(%)
糖量
(kg/10a)
対カーベメガモノ比
根重 根中糖分 糖量
北農試
(直播)
Kawe J 137 5.78 18.28 1,057 101 104 105
カーベメガモノ 5.75 17.56 1,009 100 100 100
モノミドリ 5.50 17.84 981 96 102 97
モノヒル 6.41 17.21 1,105 111 98 110
ハイラーベ 5.92 17.69 1,047 103 101 104
モノヒカリ 6.42 17.99 1,156 112 102 115
中央農試
(移植)
Kawe J 137 6.75 17.27 1,168 98 108 106
カーベメガモノ 6.91 15.97 1,103 100 100 100
モノミドリ 6.54 16.68 1,090 95 104 99
モノヒル 7.42 15.87 1,174 107 99 106
ハイラーベ 6.80 16.37 1,114 98 103 101
モノヒカリ 7.16 16.99 1,218 104 106 110
上川農試
(移植)
Kawe J 137 5.01 18.61 933 101 106 107
カーベメガモノ 4.96 17.56 870 100 100 100
モノミドリ 4.64 18.07 838 94 103 96
モノヒル 5.37 17.24 929 108 99 107
ハイラーベ 5.09 17.64 901 103 101 104
モノヒカリ 5.23 18.13 951 105 104 109
天北農試
(移植)
Kawe J 137 4.89 17.32 850 96 105 101
カーベメガモノ 5.11 16.43 843 100 100 100
モノミドリ 4.90 16.46 811 96 100 96
モノヒル 5.55 16.29 807 109 99 108
ハイラーベ 4.99 16.48 825 98 100 98
モノヒカリ 5.04 16.77 856 99 102 102
北見農試
(直播)
Kawe J 137 4.30 18.43 796 101 106 106
カーベメガモノ 4.26 17.45 748 100 100 100
モノミドリ 4.24 17.40 742 100 100 100
モノヒル 4.69 17.21 812 110 99 109
ハイラーベ 4.66 17.41 815 109 100 109
モノヒカリ 4.59 18.31 836 108 104 112
十勝農試
(直播)
Kawe J 137 4.88 18.19 888 98 106 104
カーベメガモノ 4.98 17.12 856 100 100 100
モノミドリ 4.74 17.57 836 95 103 98
モノヒル 5.43 16.87 920 109 99 107
ハイラーベ 5.07 17.27 878 102 101 103
モノヒカリ 5.33 17.86 954 107 104 111
十勝農試
(移植)
Kawe J 137 4.98 17.77 886 99 105 104
カーベメガモノ 5.02 16.88 848 100 100 100
モノミドリ 5.07 17.43 884 101 103 104
モノヒル 5.59 16.41 917 111 97 108
ハイラーベ 5.16 16.91 872 103 100 103
モノヒカリ 5.36 17.38 930 107 103 110
根釧農試
(移植)
Kawe J 137 4.15 18.17 757 100 107 107
カーベメガモノ 4.13 17.05 706 100 100 100
モノミドリ 4.01 17.04 683 97 100 97
モノヒル 4.67 16.85 787 113 99 111
ハイラーベ 4.25 17.11 729 103 100 103
モノヒカリ 4.29 17.33 749 104 102 106

7.配布可能種子量  1,000Kg

8.普及対象地域及び普及見込面積
 北海道一円に適応し、「カーベメガモノ」におきかえて栽培する。
 2,000ha

9.栽培上の注意
(1)本系統は「カーベメガモノ」に比べて根中糖分の高い品種であるが根中糖分低下の原因となる多肥栽培はさける。
(2)本系統は既存の輸入品種と同様に褐斑病に弱いので、栽培に当っては防除を徹底すること。
(3)その他の栽培法は「カーペメガモノ」に準ずる。