【指導参考事項】
1 課題の分類  野菜 流通技術 予冷
2 研究課題名  夏野菜の流通技術改善試験
          1 ホウレンソウ、ニンジンの品質保持における予冷条件に関する試験
          (2)ニンジンの品質保持に関する試験
3 期  間  昭和57〜62年 継・中・完
4 担  当  中央農試園芸部加工料
5 予算区分  道  単
6 協力分担  な  し

7 目  的
 夏期高温時に生産されるニンジンの品質保持をはかるため、温度条件と予冷方法を明らかにする。

8 試験研究方法 品種 ニューレッドコアチャンテネー 栽培法標準による
(1)温度条件 0、5、10、15、20、30℃
(2)差圧予冷 ①差圧予冷:風温5℃、静圧5mmAq、普通予冷:5℃
         ②風温0、5、10℃、静圧10㎜Aq、予冷後温度0、5、10、15、20、30℃
         ③風温5℃、静圧10、15、20mmAq
(3)真空予冷 ①到達圧力5、6、7、8、9、10トール、到達圧力保持時間10、15、20分
         ②排気速度3,000、1,800、1,500L/分、9トール、15、20分

9 結果の概要
(1)温度条件
 ①温度が高いほどしおれ(しなび)、表皮の白変や黒変、腐敗が早かった。温度別品質保持期間は、0℃:12日間、5℃:8日間、10℃:8日間、15℃:4〜8日間、20℃:4日間、30℃:2〜4日間であった。
 ②ニンジンの品質保持をはかるためには0〜10℃の低温に保つ必要があり、高くても15℃を越えないようにしなければならない。
(2)差圧予冷
 ①差圧予冷の冷却効率はきわめて高かった。初温18℃のニンジンの品温半減時間は差圧予冷(風温5℃)では50分であったが、普通予冷(5℃)では6時間40分であった。
 ②品温効果は風温が低いほど早かった。静圧10mmAqで初温21〜22℃のニンジンを冷却したところ、品温が10℃降下するのに要した時間は、風温0℃では30分、5℃では45分、10℃では1時間30分であった。冷却速度と品質保持の点からみて適正風湿は0〜5℃と考えられる。
 ③差圧ファン運転時間は、風湿0℃の場合は1〜2時間、5℃の場合は1時間30分〜3時間で十分であった。長時間運転すると、しなびや黒変が生じるおそれがある。
 ④ニンジンの標準的な差圧予冷条件は、静圧10mmAq、風温O〜5℃、風湿95%以上、差圧ファン運転時間1〜2時間(風湿0℃)または1時間30分〜3時間(風温5℃)、保冷温度0〜10℃(上限は15℃)である。
(3)真空予冷
 冷却効率はきわめて低かった。冷却が進んだ場合は、表皮の白変や黒変、表皮下1〜4mmの部位の水浸状化が生じ商品性がなくなった。

10 主要成果の具体的数字
項目 風温 予冷後温度 0℃ 5℃ 10℃ 15℃ 20℃ 30℃
日数/規格 M S M S M S M S M S M S
腐敗
(根部)
0℃ W 4 5   5   5   5   5   4.9  
8 5   5   5   5   4.9   4.7  
12 5   4.9   4.9   4.9   4.5   3.0  
D 4 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 4.9 4.8
8 5 5 5 5 5 5 5 4.9 4.9 5 - 4.3
12 5 4.9 5 4.9 5 5 5 4.8 4.9 4.7 3.9 3.4
5℃ W 4 5   5   5   5   5   4.9  
8 5   5   5   4.9   4.9   4.4  
12 5   4.9   4.9   4.9   4.5   3.0  
D 4 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5
8 5 5 5 5 4.9 5 5 5 4.9 5 5 4.6
12 5 5 5 5 4.9 5 4.9 4.8 4.7 4.9 4.0 4.2
10℃ W 4 5   5   5   5   5   5  
8 5   5   5   5   5   4.7  
12 5   5   5   4.9   4.8   3.6  
D 4 5 5 5 4.9 5 5 5 5 5 4.9 5 4.9
8 5 5 5 4.9 5 5 4.9 4.9 4.8 4.9 4.8 4.7
12 5 5 5 4.9 4.8 4.8 4.9 4.9 4.7 4.8 4.3 3.8
無予冷 W 4 5   5   5   5   4.9   4.8  
8 5   5   5   5   4.7   4.4  
12 5   5   5   4.7   4.2   2.3  
D 4 5 5 4.9 5 5 5 5 5 5 4.8 4.9 4.6
8 5 5 4.9 5 5 5 5 4.9 5 4.8 4.2 4.0
12 5 5 4.9 5 5 5 4.9 4.8 4.7 4.4 3.0 3.2
注 W:水洗後乾燥しないうちに箱づめ D:水洗後完全に乾燥してから箱づめ
 無5〜著1として5段階評価


図1 差圧予冷と強制通風予冷の冷却速度の比校


図2 風温別冷却速度

11 今後の問題
  ①栽培条件と予冷適性
  ②輸送中の昇温防止

12 普及指導上の注意
  ①打撃や圧迫をうけた部位は、低温下で黒変しやすいので取扱い、選別に注意する。
  ②湿度が低いとしなびやすいので、乾燥した場所に放置してはならない。