1.課題の分類  農薬 病害虫 中央農試病虫部
           農薬残留試験
2.研究課題名  タマネギ跡地並びに跡作物の農薬残留試験
3.期  間  (昭和57年〜59年)完了
4.担  当  病虫部 害虫科
5.予算区分  道 費
6.協力分担

7.目  的
 タマネギの栽培は固定畑的に連作される場合が多く、農薬の使用頻度は高い。近年、タマネギ生産向上手段の一環として輪作技術が導入されたことや、生鮮野菜類がタマネギ栽培跡地に作付される実態があり、タマネギ連作畑土壌の農薬残留実態の把握とともに跡作物の農薬残留解明する。

8.試験研究方法
 1)現地ほ場試験
  全道の3支庁管内(網走・上川・空知のタマネギ栽培ほ場並びにタマネギ跡地の転換作物栽培ほ場で前年度の農薬散布経歴を調査し、土壌残留と作物残留を分析調査した。
 2)高濃度処理試験
  前年又は、播種直前にタマネギ畑で使用する薬剤を土壌に処理し、吸収性の高いホウレンソウ、ニンジン、キュウリ、馬鈴しょを栽培して残留を分析調査した。

9.結果の概要と要約
1)現地ほ場での農薬散布経歴の調査から散布回数は合計で9回から23回(平均13.5回)であったが、個々の薬剤の使用回数、最終散布から収穫までの日数等は使用基準に沿ったものであった。
2-1)現地ほ場で使用されていた5殺虫剤を調査したが、土壌中に長期に残留するものは無く、跡作物でも基準値を越えなかった。
2-2)現地ほ場で使用例のないEPBP剤は高濃度処理試験(5ppm)の直後播種でホウレンソウ、馬鈴しょに基準値を越える例があった。本剤は土壌中の減衰が緩慢で、使用基準が守られないで使用した場合には跡作物で基準値を越える可能性があった。しかし、57年12月に登録が失効した。
3)現地ほ場で使用されていた6殺菌剤を調査したが、土壌中に長期に残留するものは無く、検出限界又はそれ以下であった。
4)ジチオ力ルバマート殺菌剤の共通変化生成物のエチレンチオウレア(ETU)は現地土壌、跡作物からは微量もしくは検出限界以下であった。
5)現地ほ場で使用されていた2除草剤を調査したが土壌中では微量もしくは検出限界以下であった

10.主要成果の具体的数字
表1 主要農薬の土壌中及ぴ作物への残留量 ppm
農薬名 TPN トリアジン 3)ジチオ力
ルパマート
ピリダフェ
ンチオン
ECP CVP EPBP
現地土壌1) 0.21 0.66 0.58 0.10 1.14 0.08 -




土壌 2) 2)     2)   2)
5.0 15.0 - 1.18 1.0 2.34 5.0
ホウレンソウ 0.002 <0.05 <0.07 0.02 0.012 0.02 0.036
馬鈴しょ 0.002 - - <0.002 0.002 <0.01 0.020
ニンジン - <0.05 <0.07 - - - -
登録保留基準値 1.0 10.0 0.1 0.03 0.03 0.2 0.01
 1)現地土壌の最高値
 2)処理時の理論値、他は前年処理して播種時の分析値
 3)現地ニンジン及び現地土壌で農試内にて栽培したホウレンソウ


第1図 土壌中の残留消長(5ppm)(昭和57年調査)

表2 現地ほ場土壌及びニンジンにおけるETUの残留
     ジチオカルバマート剤、前年3〜5回散布
ほ場
番号
土壌 ニンジン
6 <0.008 <0.004
7 <0.008 <0.004
8 <0.008 <0.004
10 <0.008 -
11 <0.008 -
(昭和59年調査)

表3 ETU処理直後に播種、または移植しての各作物の残留
処理 キュウリ ホウレンソウ ニンジン
10ppm 0.011 <0.004 <0.004 -
1.0ppm - - <0.004 <0.004
栽培日数 25 35 46 114

11.今後の問題点
 現地ほ場の使用例のあろペノミル、イプロジオン、チオファネートメチルの残留分析が必要である。

12.成果の取扱い
 1)タマネギに対して、登録のある農薬を安全使用基準を厳守して使用した場合、その跡地に吸収性の高いホウレンソウ、キュウリ、ニンジン、馬鈴しょ等を栽培しても、それらの作物の登録保留基準を上回る残留量は認められず安全性が確認された。
 2)農薬の使用にあたっては、安全使用基準を厳守するとともに、病害虫の発生実態に応じて効率的に使用すること。