【指導参考事項】
1.課題の分類 虫害 野菜 2.課 題 名 カイロモン利用によろタマネギパエ、タネバエの発生消長調査法 3.期 間 (昭和55〜59年) 4.担 当 北海道農試 虫害第2研究室 5.予算区分 別 枠 6.協力分担 東京大学農学部害虫学研究室 |
7.目 的
タマネギバエ、タネバエに対するカイロモン(植物起源の誘引物質)の利用法を確立すろため、タマネギりん茎より誘引物質を単離・同定し、タマネギパエ、タネバエの誘引効果を検討する。
8.試験研究方法
1.タマネギよりの誘引物質抽出
2.誘引物質の成虫誘引効果の調査
3.誘引物質の持続効果
4.誘引方法の検討
9.試験結果の概要・要約
1.タマネギりん茎より香気物質として5種のdisulfide、3種のtrisulfideが検出され、プロピルチオ基(C3H7S-)を含む物質が誘引活性を示した。これらの化合物のうち活性の最も高いDi-n-propyldisulfideのタマネギパエの誘引効果はタマネギ磨砕汁より低かった。
2.腐敗タマネギりん茎砕磨砕汁より水蒸気蒸留によろ抽出物質のうち中性面分中に移行した2-フェニルエタノールがタマネギハエ、タネパエに対しタマネギ磨砕汁よりも誘引力が優れていた。
3.標識再痩法による2-フェニルエタノールのタマネギパエの捕獲は、試験圃場内の放飼個体数2,140頭に対し、捕獲率は4.9%であった。
4.さらに誘引力の強い物質を得るため腐敗タマネギ磨砕片の酸性画分の分折により主鎖炭素数3〜5の有機酸に誘引効果があり、これらのうちn-吉草酸は2-フェニルエタノールと、混合することにより、誘引効果が増加した。その混合比は2-フェニルエタノール0.2%、n吉草酸0.05%の水溶液が最も良かった。
5.上記で開発された誘引剤は、夏季の野外条件では蒸散が激しく、頻繁な溶液補充が必要であるため蒸散制御方法として封入基材を検討し、ビームカプセル、塩化ビニールチューブ、タイゴンチューブ、シリコンゴムキャップのうち、シリコンゴムキャップが最も優れていろことが判明した。
6.シリコンゴムキャップに封入する溶液としては、2-フェニルエタノール:n-吉草酸の比が4:1の場合が最も有効であり一本溶液をシリコンゴムキャップ内に2mL入れた場合、圃場における有効期間は春季は約1か月、夏、秋季は約20日間であった。
7.本誘引材を利用したトラップの形は縦型の方が横型よりも優れていた。
8.本誘引材による誘引効果を従来のタマネギりん茎磨砕片と比較すると、タマネギバエに対しては、同等であり、タネパエに対しては優れていた。
10.主要成果の具体的数字
第1図 シリコンゴムキャップ製剤を装着したMTトラップ
第2図 誘引物質による成虫誘引数の差
11.今後の問題点
1.要防除水準の設定
2.カイロモン利用による防除法の確立
12.成果の取扱い
2-フェニルエタノール:n-吉草酸 4:1の混合液2mLをシリコンゴムキャップに入れた誘引方法はタマネギバエ、タネバエの発生消長調査に利用できる。春期約30日、夏・秋期は約20日間有効である。