【指導参考事項】
1.課題の分類  牛 家畜衛生
2.研究課題名  肉専用種の下痢症子牛に対する投薬器を用いた経口電解質液の治療効果
3.期   間  昭和58〜59年
4.担   当  新得畜試 衛生科 肉牛科
5.予   算
6.協力分担   なし

7.目   的  肉専用種の子牛下痢症の治療に経口電解質液を応用し、投与方法並びに治療効果について検討する。

8.試験研究方法
1)経口電解質液の投与方法の検討
 (1)投薬器の試作
 (2)経口電解質液の投与方法
 (3)投薬器使用時の安全性
2)経口電解質液の治療効果の検討
 (1)下痢症子牛の血液性状
 (2)経口電解質液による下痢治療試験
 (3)経口電解質液の投与が下痢症子牛の病態に与える効果

9.主要成果の概要
 1)導尿カテーテル、Y字コネクタ、イルリガートル等を組み合せ、子牛用経鼻投薬器を作製した。投薬器の使用により簡単且つ確実に経口電解質液2Lを約3分間で胃内に投与できた。
 2年間で延約300頭の下痢症子牛に対し投薬器を用いて経口電解質液を投与したが,投与時の事故は1例もなく、また6頭には通常投与量(2L)の倍量(4L)を1〜5日間続けて一回に投与したが、臨床的な異常はまったく認められなかった。
 2)下痢症子牛の血液成分は正常子牛に比べて血液pH,血液PC02,血漿HCO3-,血清Glucose,血清Na,血清Caの低下,PCV,BUNの上昇が認められた。
 下痢子牛を同時期無作為に経口電解質液を1日1回投与する群(38頭)と投与しない群(35 頭)に分けて下痢持続期間を比較した結果、経口電解質液の投与により下痢持続期間が短くなった。
 水様性下痢が3日以上続いた子牛の臨床症状ならびに血液成分の推移により、経口電解質液は下痢症子牛に対し生体内の脱水および電解質の不均衡の改善ないしは悪化を防ぐ効果のあることが認められた。

10.成果の具体的数字


 図1.下痢持続期間の比較 




 図2.水様性下痢が3日以上続いた子牛の血液成分ならびに臨床スコアの推移

11.今後の問題点
 1)子牛下痢症の原因別による経口電解質液の治療効果の検討
 2)経口電解質液と抗生物質等の止潟剤との併用効果の検討
 3)子牛下痢症の治療プログラム作成

12.成果の取扱い
 1)経口電解質液は発生初期の下痢症に特に有効と思われ、脱水等の症状が進行している時は、他の補液療法を実施すること。
 2)吸引能力の無い初生子牛に対する初乳等の給与にも今回の投薬器は利用できる。