【指導参考事項】
天北地域の放牧草地におけるペレニアルライグラスの有効性
(昭和48〜59年)                               道立天北農試 草地飼料科、作物科

目  的
  ペレニアルライグラスを当地域の放牧草地へ導入するに際して、重要な形質である採食性、飼料価値、季節生産性および永続性について基幹草種であるオーチャードグラスと比較し、放牧用草種としての有効性を検討する。また、越冬性さらには永続性と深い係わりがある秋の利用法について検討し、有効利用を図る。

試験方法
1)放牧利用面からみたペレニアルライグラスの草種特性
  (1)採食性:乾物摂取量、草種の選択性、放牧利用率
  (2)飼料価値:乾物消化率、粗蛋白質および粗繊維含有率
  (3)季節生産性:春、夏、秋季別のオーチャードグラスとの収量比較
2)永続性について
  品種比較及び放牧試験における年間合計乾物収量の経年的推移
3)秋の利用法と翌春収量の関係
  ペレニアルライグラスの単播草地を用い以下の検討を行った。
  (1)最終番草の刈取時期および生育日数と翌春収量の関係
  (2)秋の利用法についての模擬放牧と実放牧の比較

試験成果の概要
1)1日当たりの乾物摂取量と放牧における各番草の利用率がオーチャードグラスより高く採食性に優れていた。また、各番草において生育ステージに伴う摂取量の変動も小さかった。
2)乾物消化率は各番草を通じオーチャードグラスより高く、生育ステージに伴う減少程度もやや小さかった。
3)生産性は春および夏季にオーチャードグラスより劣るが、秋季は明らかにペレニアルライグラスが勝っていた。
4)早魃時には、生育はやや劣り収量が低下する。
5)当地域における永続性は比較的優れているが、オーチャードグラスよりやや劣る。
6)越冬性と秋の利用時期の間には密接な関係があり、9月下旬までに利用を終える場合は越冬性を良く維持できる。
7)10月下旬〜11月上旬(晩秋)の利用は翌春収量を低下させるため回避することが望ましいが、利用する場合は最終番草の生育日数を約40日確保することによって翌春収量を比較的高く維持できる。
8)10月上旬〜中旬の最終利用についても、当面晩秋利用に準ずるべきと考えられる。
9)秋の窒素施肥方法については8月下旬〜9月上旬の時期の4〜8kg/10aであれば越冬性は比較的安定していると考えられるが、詳細については今後の検討が必要である。
 以上のことから、放牧草地へのペレニアルライグラス導入の有効性が認められるとともに、本草種の秋の利用法についても重要な指針が得られた。

主要成果の具体的データ

図-1.乾物摂取量(1日当)


図-2.各番草の飼料価値


図-3.生育ステージと乾物消化率


図-4.季節生産性(対OG比)


図-5.品種比較の収量推移


図-6.晩秋の刈取と翌春収量


図-7.最終番草の生育日数と翌春1番草収量の関係

普及指導上の注意事項
1)ペレニアルライグラスの導入に当っては冬枯れが少なく土壌凍結の心配ない地域に限定する。
2)秋の利用法は地域によって異なると考えられるので本試験の結果は天北地域に限定する。
3)放牧草地の管理に当っては過放牧を避け、不食草が目立つ場合は掃除刈を行う。
4)年間施肥量は施肥基準に準拠する。
5)当面放牧利用とする。