【指導参考事項】(作成61年1月)
1.課題の分類 畜 産 肉用牛 衛生 新得畜試 北海道 2.研究課題名 肉牛における殺虫用イヤータッグの衛生昆虫に対する効果 3.予算区分 受託 4.研究期間 昭和60年 5.担 当 新得畜試 衛生科,肉牛科 6.協力分担関係 な し |
7.目 的
殺虫剤を含有させた殺虫用イヤータッグの衛生昆虫に対する防除効果を検討する。
8.試験研究方法
(1)試験Ⅰ 放牧開始時に装着した殺虫用イヤータッグ(以下耳標という)の衛生昆虫に対する効果を検討。
供試牛 ヘレフォードとアバディーン・アンガスの子付き成雌牛それぞれ3群。
処 理 両耳区(耳標を両耳に装着),片耳区(片耳に装着),対照区(無装着)。
(2)試験Ⅱ 放牧後に装着した耳標の衛生昆虫に対する効果を検討。
供試牛 ヘレフォードとアバディーン・アンガスの育成雌牛それぞれ1群と試験Ⅰの無装着牛。
処 理 試験区(育成雌牛・放牧5週後に片耳に装着),対照区(試験Ⅰの対照区)。
(3)試験Ⅲ 改良した耳標の衛生昆虫に対する効果を検討。
供試牛 黒毛和種1群と試験Ⅰの無装着牛。
処 理 試験区(黒毛和種,片耳に装着),対照区(試験Ⅰの対照区)。
調査項目・ノサシバエ,ハエ,アブの牛体付着数
・体重 ・衛生昆虫に対する放牧牛の忌避行動
・輪換牧区の草量 ・伝染性角膜炎の発症頭数
・耳標の脱落と重量 ・血液成分
9.結果の概要,要約
(1)試験Ⅰ
1)両耳区,片耳区ともにノサシバエ,ハエの付着はほとんど認められず,長期にわたって防除効果が認められた。ハエについては両耳区が片耳区より少ない傾向にあったが,ノサシバエ,アブについては両処理区に差は認められなかった。
2)母牛,子牛いずれにおいても両耳区は対照区より増体量が多かった。片耳区も母牛において対照区より増体量が多かった。
3)対照区は尻尾を振ったり,体表をふるわせる衛生昆虫に対する忌避行動が多かった。
4)母牛では両耳区と片耳区は伝染性角結膜炎の発症率が低い傾向にあった。又、第Ⅱ期病像以上の症状を示した眼球の割合は対照区で高かった。子牛では,いずれの処理区においても伝染性角結膜炎の発症率は低かった。
5)耳標の脱落は少なく,また,重量は2.1g減少した。
(2)試験Ⅱ
1)ノサシバエは耳標装着1日後に防除率が95.2%となって有意に減少した。また,ハエもほとんど付着していなかった。
2)装着9週後まで耳標の脱落はなかった。
(3)試験Ⅲ
1)ノサシバエは耳標装着1日後に防除され,また,ハエも減少した。
試験Ⅰ,Ⅱと同様にハエ類を防除した。
2)試験1,Ⅱの耳標では脱落が認められたが,改良した耳標の脱落はなかった。また,重量は1.Og減少した。
10.成果の具体的数字
試験Ⅰ 母牛と子牛の増体量(kg)
母 牛 | 子 牛 | |||
放牧時〜14週後 | 5週後〜14週後 | 放牧時〜14週後 | 5週後〜14週後 | |
両耳区 | 35.5A | 27.8A | 97.7Aa | 60.3A |
片耳区 | 42.5A | 20.9A | 89.6b | 51.5B |
対照区 | 17.1B | 1.4B | 89.2B | 47.7B |
試験Ⅰ 伝染性角結膜炎の発症率(%)
母 牛 | 子 牛 | |||||
検査頭数 (頭) |
発症頭数 (頭) |
発症率 (頭) |
検査頭数 (頭) |
発症頭数 (頭) |
発症率 (%) |
|
両耳区 | 30 | 9 | 30.0 | 24 | 0 | 0 |
片耳区 | 32 | 11 | 34.4 | 19 | 1 | 5.3 |
対照区 | 44 | 26 | 59.1 | 36 | 1 | 2.8 |
試験Ⅰ 衛生昆虫飛来に対する忌避行動(回/5分)
首 | 後肢 | 皮膚 | 尻尾 | |
両耳区 | 0.4 | 0 | 0.2a | 9.0A |
片耳区 | 0.5 | 0.2 | 0.7 | 10.5A |
対照区 | 0.9 | 0.4 | 3.9b | 30.2B |
試験Ⅰ 衛生昆虫数の推移
試験Ⅱ 総昆虫数の推移
試験Ⅲ 総昆虫数の推移
11.成果の活用面と留意点
1)殺虫用イヤータッグの装着は放牧前が望ましいが,遅くともハエが増加する前に装着することが適当と思われる。
2)片耳に装着しても防除効果はあるが,子牛の増体などを考慮すると両耳に装着することがより適当と思われる。
12.残された問題点とその対応
1)ハエの牛体頭部,特に眼結膜への付着に対する防除法の検討。