【指導参考事項】
1.課題の分類 家畜 豚 育種 2.研究課題名 繁殖雌豚の小格化に関する試験 3.期 間 昭52年〜60年 4.担 当 滝川畜試 種畜部 養豚部 5.予算区分 道 費 6.協力分担 |
7.目 的
種豚の本来もっている繁殖能力を損なうこと安く小格の繁殖豚を育成し、肢蹄の負担を軽くして連産性をたかめるとともに豚房等施設の有効利用や飼料の節減をはかり、種豚の選抜のための指標を得る。
8.試験研究方法
試験1.豚産肉能力直接検定を終了したランドレース種(8腹16頭)を小格区と慣行区に分け、小格区は娃娠期の給与量を当場慣行法の60%(飼い直し時80%に増量)で小格化し、慣行区と比較した。
試験2.豚産肉能力直接検定を終了したランドレース種(10腹20頭)を小格区と標準区に分け、小格区は妊娠期の給与量を日本飼養標準(1975年)の85%として小格化し、日本飼養標準に準拠した標準区と比較した。
試験1、2において比較は体重体尺値の推移、繁殖成績、子豚の産肉成績等について行った。
9.主要成果の概要
試験1.妊娠期の給与量を慣行区の60%とした小格区は体重体尺値の全てが小格化されたが、子豚の発育、繁殖成績が低下するなどの影響が見られた。その後給与量を慣行区の80%まで増やして飼い直しを行った結果、繁殖成績等の向上が見られた。
試験2.
1)妊娠期の給与量を日本飼養標準区の85%とした小格区は体重尺値の全てが小格化された。
2)分娩哺育成績は小格区と標準区と同様の成績を示した。
3)子豚の産肉検定成績は処理間に差は認められず、腹間では背腰長Ⅱを除く全ての形質で有意差が認められた。
4)標準区は後 起立不能で途中除外したものが多かったが、小格区は起立不能はなかった。
5)飼料消費量は4産目終了までの全期間の合計で小格区は標準区の87%であり、配合飼料費は1頭当り、およそ16,400円の節減となった。
以上の結果から、産肉能力検定を終えた豚を妊娠期の給与量を日本飼養標準の85%にして小格化しても分娩哺育成績、発育や受胎の状況、子豚の産肉成績等に全く悪影響が見られず、肢蹄の負担が軽減され、飼料の節減もはかられることが明らかとなった。
10.主要成果の具体的数字
表1 妊娠2ヶ月の体重体尺値の小格化率(試験2)
時期 | 体重 | 体長 | 胸囲 | 管囲 | 体高 | 胸深 | 前幅 | 胸幅 | 後幅 |
初産 | 92 | 97 | 94 | 99 | 98 | 95 | 96 | 95 | 96% |
2産 | 88 | 97 | 93 | 97 | 97 | 94 | 92 | 92 | 95 |
3産 | 85 | 96 | 93 | 96 | 99 | 95 | 93 | 91 | 93 |
4産 | 82 | 96 | 91 | 94 | 97 | 94 | 91 | 92 | 91 |
表2 分娩哺育成績(試験2)
産 次 |
区 分 |
頭 数 |
産子数 | 哺育 開放数 |
1腹 総体重 |
平均 体重 |
離乳 頭数 |
4週齢 | 哺育率 | 産子 得点 |
|
総体重 | 平均体重 | ||||||||||
初 産 |
小格区 | 頭 10 |
頭 11.3 |
頭 9.7 |
kg 13.46 |
kg 1.21 |
頭 7.5 |
kg 43.3 |
kg 5.7 |
% 76.1 |
点 4.5 |
標準区 | 10 | 9.7 | 8.8 | 13.12 | 1.26 | 7.3 | 44.8 | 6.2 | 75.1 | 2.7 | |
処理間 | - | - | - | - | - | - | - | - | * | ||
腹 間 | - | - | - | - | * | ** | - | - | ** | ||
4 産 |
小格区 | 9 | 11.0 | 10.5 | 14.16 | 1.32 | 9.0 | 57.7 | 6.2 | 85.6 | 4.4 |
標準区 | 6 | 12.3 | 12.2 | 18.18 | 1.32 | 10.8 | 56.2 | 5.4 | 86.8 | 5.4 | |
処理間 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | ||
腹 間 | - | - | * | - | - | - | - | - | - |
表3 子豚の産肉能力検定成績(試験2)
区分 | 腹 数 |
開始 日齢 |
終了時 日齢 |
所要 日数 |
日増 体重 |
飼料 要求率 |
背腰長 Ⅱ |
背脂肪 厚 |
ロース 断面積 |
ハム 割合 |
総合 得点 |
小格区 | 腹 18 |
日 94.6 |
日 163.5 |
日 79.8 |
g 768 |
3.57 | cm 70.7 |
cm 2.76 |
c㎡ 16.8 |
% 32.6 |
34.2 |
標準区 | 18 | 84.2 | 161.8 | 77.7 | 781 | 3.56 | 70.7 | 2.75 | 16.9 | 32.9 | 35.2 |
処理間 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | |
腹 間 | ** | ** | ** | ** | ** | - | ** | * | ** | * |
11.今後の問題点
養豚農家における更新候補豚の選定のための産肉能力の現場検定法の確立
12.普及指導上の注意事項
1)繁殖雌豚の小格化の開始時期は初産の交配後とし、それまでの育成は通常の方法とする。
2)飼料は個体ごとに正確に給与する。群飼条件下では競争を避けるため給餌柵の改良等のの工夫が必要である。
3)妊娠期の給予水準は日本飼養標準の85%とし、授乳期は飼養標準に合わせて必要量を給与する。
4)初産離乳後の発情再帰の遅れを防ぐため初産授乳中は不断給与とする。