【指導参考事項】
完了試験研究成績(作成 昭和62年1月)
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1.課題の分類 総合農業 作物生産 夏作物 北海道 畑作 あずき 2.研究課題名 小豆の紙筒、ソイルブロック移植およびマルチ栽培に関する試験 3.予算区分 道費 4.研究期間 (昭和57〜61年) 5.担 当 道立中央・畑1科、道立十勝・豆2科 6.協力分担 道立十勝・豆1科、道立上川・畑作科 |
7.目 的
豆類の生産阻害要因としては出芽不良や鳩害による株数不足および低温年の生育遅延などがあげられる。これらの改善方法として紙筒およびソイルブロックなどの移植栽培ならびにマルチ栽培が考えられ、一部の農家でとり入れられている。本試験は紙筒およびソイルブロック移植ならびにマルチ栽培が小豆の生育、収量におよぼす影響について検討した。
8.試験研究方法
1)試験場所 中央農試、十勝農試および現地(道央2、十勝1)3場所
2)供試品種 1〜3品種
3)処理区別
(1)紙筒移植(昭和57〜61年)、直径3cm×長さ5cmの新紙筒を主に用いて直播との生育、収量を比較した。また、紙質(旧、新紙筒)、移植時の葉令(初生葉展開期、第1本葉展開期)などの処理を用いた。
(2)ソイルブロック(昭和59〜61年)、旭川ビニール製のブロック、底辺2×2cm、長さ5cmを用いた。
(3)マルチ栽培(昭和59〜61年)、グリーンマルチ(厚さ0.02mm、幅135cm)を共通に、光崩壊性マルチ、透明マルチを年次によって用いた。
9.結果の概要・要約
1)紙筒、ソイルブロック移植について
(1)紙筒移植とソイルブロック移植は、年次および試験場所で多少異なるが、移植後の生育の推移はおおむね類似し、移植栽培の子実重は直播並みかやや劣った。
(2)移植後の生育は、育苗によって葉令が進むことから7月上旬までの主茎長、主基節数などは直播より優るが、開花期頃には直播並みとなり、その後生育が進むにつれて移植の生育が直播に比べ劣った。
(3)移植栽培の主茎長はやや短くなり倒伏も少なくなるがその程度は大豆に比較すると小さかった。
(4)移植栽培の開花期、成熟期は直播に比べ1〜7日程度早まる傾向にあるが、冷害年(昭和58年)ではその効果がみられなかった。
(5)以上のことから小豆の移植栽培は安定多収を得ることにはならないといえる。
2)マルチ栽培について
(1)マルチ栽培は、保水性がよく地温の上昇に伴い主茎長が伸長し、LAIが増大して最大生育量に達するまでの生育は促進された。それに伴い十勝農試では倒伏が多くなった。また開花期、成熟期はいずれの試験場所でも1〜6日程度促進された。
(2)マルチ栽培の子実重は、中央農試および道央地方における3年間平均の対直播比は114〜l18%で増収効果が大きいが、十勝農試および十勝地方のそれは104〜105%で増収効果が小さかった。
(3)十勝農試および十勝地方では、マルチ栽培による生育量の増大が倒伏の増加をもたらしたため増収効果は小さかったものと考えられる。一方、中央農試および道央地方では、直播の主茎長に代表される生育量が十勝地方に比べ少なく、マルチ栽培においても倒伏の増加が極くわずかであったことが増収効果を大きくしたものと考えられる。
(4)以上のことから、道央地方の生育量の少ない地域ではマルチ栽培による増収効果が期待できるが、その他の地域ではマルチ栽培の導入は難かしいといえる。
(5)マルチ資材については、グリーンマルチと透明マルチの増収効果はほぼ同じであった。従って資材の選定にあたっては他の条件(除草効果や資材費など)を考慰する必要がある。
10.主要成果の具体的数字
表1 紙筒、ソイルブロック移植及びマルチ栽培の生育、収量におよぼす影響(昭和59〜61年3月平均)
| 試 験 場 所 |
処理区別 | 初期生育 | 開 花 期 (月日) |
成 熟 期 (月日) |
主 茎 長 (cm) |
倒 伏 程 度 |
子 重 (kg/a) |
100 粒 重 (g) |
対直播比(%) | ||||||||
| 主 茎 長 (cm) |
L A I |
初期生育 | 開 花 期 |
成 熟 期 |
主 茎 長 |
倒 伏 程 度 |
子 実 重 |
100 粒 重 |
|||||||||
| 主 茎 長 |
L A I |
||||||||||||||||
| 中 央 農 試 |
直播 | 12 | 0.47 | 7.31 | 9.14 | 47 | 0.8 | 21.4 | 14.0 | 100 | 100 | 0 | 0 | 100 | 100 | 100 | 100 |
| 紙筒 | 12 | 0.58 | 7.28 | 9.11 | 45 | 0.5 | 21.1 | 13.3 | 100 | 123 | -3 | -3 | 96 | 63 | 99 | 95 | |
| ソイルブロック | 12 | 0.44 | 7.29 | 9.10 | 45 | 0.9 | 19.8 | 12.9 | 100 | 94 | -2 | -4 | 96 | 113 | 93 | 95 | |
| グリーンマルチ | 21 | 0.98 | 7.28 | 9.9 | 59 | 0.9 | 24.4 | 12.7 | 175 | 209 | -3 | -5 | 126 | 113 | 114 | 91 | |
| 十 勝 農 試 |
直播 | 20 | 1.59 | 8.1 | 9.18 | 59 | 2.2 | 26.7 | 12.1 | 100 | 100 | 0 | 0 | 100 | 100 | 100 | 100 |
| 紙筒 | 20 | 1.45 | 7.25 | 9.16 | 54 | 1.4 | 25.8 | 12.2 | 100 | 91 | -7 | -2 | 92 | 64 | 97 | 101 | |
| ソイルブロック | 22 | 1.73 | 7.25 | 9.14 | 57 | 1.9 | 26.8 | 12.1 | 110 | 109 | -7 | -4 | 97 | 86 | 100 | 100 | |
| グリーンマルチ | 26 | 2.39 | 7.30 | 9.16 | 69 | 3.0 | 27.7 | 12.0 | 130 | 150 | -2 | -2 | 117 | 136 | 104 | 99 | |
| (透明マルチ)※ | 28 | 2.54 | 7.28 | 9.12 | 71 | 3.2 | 27.9 | 11.7 | 140 | 160 | -4 | -6 | 120 | 145 | 105 | 97 | |
| 道 央 地 方 |
直播 | 15 | - | 7.26 | 9.7 | 50 | 1.9 | 26.5 | 12.6 | 100 | - | 0 | 0 | 100 | 100 | 100 | 100 |
| 紙筒 | 13 | - | 7.26 | 9.7 | 51 | 1.6 | 26.6 | 12.7 | 87 | - | 0 | 0 | 102 | 84 | 100 | 101 | |
| (ソイルブロック)※※ | 12 | - | 7.31 | 9.19 | 53 | 1.8 | 30.1 | 14.4 | 80 | - | -1 | 0 | 104 | 95 | 107 | 103 | |
| グリーンマルチ | 16 | - | 7.25 | 9.5 | 51 | 2.0 | 31.3 | 12.8 | 107 | - | -1 | -2 | 102 | 105 | 118 | 102 | |
| 十 勝 地 方 |
直播 | 25 | 2.07 | 7.31 | 9.16 | 58 | 2.6 | 23.6 | 11.5 | 100 | 100 | 0 | 0 | 100 | 100 | 100 | 100 |
| グリーンマルチ | 29 | 2.61 | 7.29 | 9.15 | 63 | 2.7 | 24.1 | 11.0 | 120 | 126 | -2 | -1 | 109 | 112 | 102 | 96 | |
| 透明マルチ | 32 | 2.88 | 7.29 | 9.15 | 65 | 3.6 | 25.0 | 11.1 | 128 | 139 | -2 | -1 | 112 | 133 | 105 | 97 | |
表2 紙筒移植栽培に関する試験(十勝農試、2〜3品種平均)
| 年次 (昭和) |
試験の 種類 |
処理区別 | 開花始 (月日) |
成熟期 (月日) |
主茎長 (cm) |
着莢数 (莢/株) |
1莢内 粒数 |
収量(kg/a) | 同左比 (%) |
100粒重 (g) |
備考 | |
| 全重 | 子実重 | |||||||||||
| 57 | 紙質 | 旧紙筒 | 7.29 | 9.15 | 38 | 46 | 6.06 | 33.4 | 21.5 | 93 | 11.3 | 紙筒の播種日:5月18日 |
| 新紙筒 | 7.29 | 9.15 | 38 | 47 | 6.06 | 32.4 | 21.3 | 93 | 11.5 | 移植日:6月4日 | ||
| 直播 | 7.31 | 9.17 | 40 | 47 | 6.13 | 35.6 | 23.0 | 100 | 11.4 | 直播の播種日:5月25日 | ||
| 58 | 移植時 の葉令 |
初生葉展開期 | 8.14 | 未成熟 | 26 | 12.5 | 5.85 | 15.9 | 2.8 | 70 | 12.4 | 紙筒の播種日: 初生葉;5月18日 第1本;5月11日 移植日;両処理とも 6月2日 |
| 第1本は出葉期 | 8.14 | 〃 | 25 | 13.1 | 5.71 | 14.6 | 2.5 | 63 | 12.8 | |||
| 直播 | 8.13 | 〃 | 29 | 15.7 | 5.85 | 17.2 | 4.0 | 100 | 12.3 | 直播の播種日:5月24日 | ||
11.指導上の注意事項
1)紙筒、ソイルブロック移植について
紙筒によって根の伸展が防げられるあるいは移植時の根の損傷などにより活着が不良となって生育が停滞した。また開花期、成熟期は1〜7日程度早まるが冷害年にはその効果がみられなかった。従って小豆の安定多収を目的に移植栽培を導入することは難しいといえる。
2)マルチ栽培について
(1)マルチ栽培では最大生育量に達するまでの生育は促進され、開花期および成熟期は直播に比べ1〜6日程度早まった。また倒伏程度はやや多くなる傾向にあった。
(2)道央地方の生育量の少ない地域ではマルチ栽培による増収効果が期待できる。
(3)グリーンマルチと透明マルチの増収効果はほほ同じなので、資材選定は他の条件(除草効果や資材費)を考慮する。