【指導参考事項】
1.課題の分類  総合農業 作物生産 夏作物−春播小麦 H-2-2
          北海道 畑 作 畑作総合
2.研究課題名  十勝地方における融凍促進による畑作物の早期栽培技術確立試験
          2.春播小麦の高収安定化栽培に関する試験
3.予算区分  総合助成(昭和59〜60年)
         道費(昭和61年)
4.研究期間  (昭和59年〜61年)
5.担  当  道立十勝・作物科
6.協力・分担関係  道立十勝・農業機械科

7.目  的
 融凍促進による極早期播種での春播小麦の安定高収化技術を確立する。

8.試験研究方法
(1)昭和59年
 ①供試品種「ハルヒカリ」
 ②処理区別
   播種期:3×CCC処理:2×栽培法:4
 ③1区面積および区制  1区7.2㎡ 分割区法3反復
(2)昭和60年,61年
 ①播種期と栽培法に関する試験
  ア.供試品種 「ハルユタカ」
  イ.処理区別
    播種期:3×栽培法:4
  ウ.1区面積および区制  1区9.6㎡ 分割区法3反復
 ②CCCに関する試験
  ア.処理区別
    供試品種:2×CCC処理:3×栽培法:2
  イ.1区面積および区制  1区9.6㎡ 分割区法3反復

9.結果の概要・要約
(1)発芽期まで日数に要する積算平均気温は100℃±10℃前後で,積算日平均気温が7℃で13日〜15日,10℃で10日〜12日,13℃で9日要した。(図1)
(2)播種期が早いほど多収を示し,品質も向上した。十勝地方における春播小麦の播種適期は4月15日〜30日の間と考えられるが,その中でも早い播種ほど多収を示したことから,安定多収,良質化を図るためには圃場の融雪、融凍を実施し早播することが重要である。(表1,図2)
(3)その際の栽培法としては、窒素施用量9kg/10a、播種量510粒/㎡を組合わせた多肥密植栽培が望ましい。
(4)CCC処理では、短強稈の「ハルユタカ」では処理による増収効果は認められず、むしろやや減収する傾向を示した。
 一方,稈長の「ハルヒカリ」では倒伏防止効果が認められ,処理による増収効果が認められた。しかし,その倒伏防止効果は十分でなかった。(表3)

10.主要成果の具体的数字


図1 積算日平均気温と発芽期まで日数の関係


図2 播種期と多肥密植区の子実収量

表1 春播小麦の播種期と多肥密植区の収量
年次品種名 項目/
播種期(月日)
穂数 a当り 同左比
(%)
子実重
歩合(%)
L重
(g)
千粒重
(g)
(本/㎡) 総重 子実重
昭和59年
ハルヒカリ
融凍早播(4.28) 507 73.1 26.2 142 35.8 803 36.2
慣行早播(5.4) 475 55.6 19.4 105 34.9 790 35.4
標準播(5.10) 416 53.7 18.5 100 34.5 787 33.6
昭和60年
ハルユタカ
融凍早播(4.22) 569 100.8 37.2 139 36.9 804 37.3
慣行早播(4.30) 621 100.4 34.1 128 34.0 793 36.4
標準播(5.7) 582 88.6 26.7 100 30.1 779 32.0
昭和61年
ハルユタカ
融凍早播(4.17) 571 137.5 41.0 111 29.8 763 35.9
慣行早播(4.25) 563 126.0 36.5 99 29.0 761 35.5
標準播(5.1) 585 133.3 37.0 100 27.8 746 35.4

表2 栽培法と融凍早播区の収量(3カ年平均、「ハルユタカ」)
項目/
栽培法
穂数
(本/㎡)
a当り(kg) 対標準比
(%)
子実重
歩合(%)
L重
(g)
千粒重
(g)
総重 子実重
標準 438 92.3 28.8 100 31.2 787 37.1
多肥 486 99.3 32.2 112 32.4 789 37.8
密植 507 99.2 30.5 106 30.7 791 37.1
多肥密植 540 106.1 35.6 124 33.6 790 37.3



表3 CCC処理と収量(kg/a,2カ年平均)
品種名 ハルヒカリ ハルユタカ
CCC(cc/a)
/栽培法
0 20 40 平均 同左比 0 20 40 平均 同左比
標準 30.1 32.9 33.0 32.0 100% 34.1 32.9 33.5 33.5 100%
多肥密植 27.4 37.8 36.7 34.0 106 38.5 37.2 36.8 37.5 112
平均 28.8 35.4 34.9 36.3 35.1 35.2
同左比 100 123 121 100 97 97

11.普及指導上の注意事項
(1)過度の多肥密植栽培は倒伏の危険があるので避ける。