【指導参考事項】
1 課題の分類  カボチャ 栽培一般
2 研究課題名  カボチャの早熟栽培における育苗、及び定植後の管理に関する試験
3 期  間  昭和61年度(昭59〜62年)
4 担  当  中央農試園芸部花きそ菜科
5 予算区分  補助:地域重要新技術開発
6 協力分担

7 目  的
  カボチャの早熟トンネル栽培でしばしぱ雄花の開花が遅れて、結果させられないことが起る。その対策のため育苗条件(日長、温度)、苗令及び定植後の環境環境条件が雌雄花の開花に及ぼす影響を検討する。

8 試験研究方法
試験項目 試験処理方法 備考
年度/
要因
59年 60年 61年
育苗環境 日長 自然・長日16h 自然・長日8h 自然
10・15
27


×
22・27・32
自然
×


高・中・低
(5株・32)
長日:電照
短日:17〜9時遮光
温度:電熱及び換気ファン制御
温度(℃) 10・15・20 10・15
育苗日数(日) 30 27
(1区株数・反復) (5株・2) (5株・なし)
苗令 育苗日数(日) 25・30・35 定植後温度
高温:59年ポリ+タフベル二重トンネル
   :61年ポリ+不織布べたがけ
中温:慣行ポリトンネル
低温:59年夜間のみタフベルべたがけ
   :61年不織布トンネル
日長 自然
温度(℃) 15
(1区株数・反復) (5株・2)
定植後の
環境
温度 高・中・低
(1区株数・反復) (5株・2)

9 結果の概要
 雄花を安定的に先熟開花させるために育苗及び定植後の環境による影響について検討した。
1)育苗環境については
 ○温度(最低温度)では、中〜高温(10〜20℃)で苗の生育も順調で雄花が先熟開花した。低温(9℃以下)では生育が停滞し、従って開花が遅れた。なお雌花は低温環境になるに従い着生が低節位になった。しかし、この場合も生育が遅れることから、開花には大きな差異が認められなかった。
 ○苗令(育苗日数)では、最低温度10℃環境において、27日前後を境に、雄花と雌花の開花の順序が逆転(若令苗では雌花先熟、高令苗では雄花先熟となる)するようで、高令苗の安定性が高い。しかし、25日の若令苗でも中〜高温環境であれば雄花を先熟開花させることができた。
 ○日長では、雄花の着生及び開花には影響が少なかった。
  雌花の着生及び開花には短日環境が促進的に影響したが、苗の生育に遅れを生じた。
2)定植後の環境(温度)について
 ○低温では生育が遅れることに伴ない、雄花の開花が遅れたが、中〜高温保温(10℃以上)することで回避できた。
3)以上のことから
  雄花を安定的に開花させるためには、育苗温度を中〜高温(10℃以上)に保持する。
  苗令では、第2〜第3葉腋に10数mmの雄花蕾をもっている程度のもの(最低温度10℃環境で27日前後)が安定性が高い。しかし、定植後の低温(10℃以下)がこの効果を打消すことがあり、北海道の早熟トンネル栽培の定植時期にはそのような環境になることが多い。  従って、雌花の開花時期に健全な花粉を確保するためには、花粉用の株をハウス栽培で準備しておくことが良い。
 (参考)花粉用株の栽培方法
播種期 一般早熟トンネル栽培より10日間早播き。
育苗方法 最低10℃以上の夜間温度保持。
苗令27日程度(10数mmの雄花蕾着生株)
栽培方法 ハウス密植栽培、2m畦巾対向植、株間30cm、ハウス内トンネル保温
(10℃以上)
株数 一般栽培株10a当330株に対して、花粉用株40株前後

10.主要成果の具体的数字
(1)育苗環境が開花に及ぼす影響(59年)


区名 定植時の苗素質(5月18日) 開花始 第1雌花(果)
茎長 葉身長 着蕾数 最大
花長
(6月 日) 着生
節位
着果
節位
雄花 雌花
1 N・10・30 cm
6.8
cm
6.7
2.5 mm
9
15.4 22.0 10.2 11.4
2 N・15・30 12.2 11.1 6.6 25 7.7 20.1 11.4 12.3
3 N・20・30 14.5 10.9 8.3 27 3.8
*
24.4 12.6
*
12.1
4 L・10・30 6.1 7.5 4.7 10 14.4 21.0 9.0 11.6
5 L・15・30 10.4 11.0 11.6 20 7.4 20.8 10.3 11.1
6 L・20・30 12.7 10.5 11.8 24 5.6
*
23.8 12.1
*
12.7
  10平均 6.5 7.1 3.6 9.5 14.9 21.5 9.6 11.5
15 〃 11.3 11.1 9.1 22.5 7.6 20.5 10.8 11.7
20 〃 13.6 10.7 10.1 25.5 4.7
*
24.1 12.1
*
12.9
N平均 11.2 9.6 5.8 25.5 8.9 22.2 11.4 12.3
L 〃 9.7 9.7 9.4 27.0 9.1 21.9 10.7 11.8
注、葉長:第3葉、苗は4葉を残して摘芯、雌花開花始:子づる3本仕立の1番花の平均

(2)育苗環境が開花に及ぼす影響(60年)


区名 定植時苗生育 開花期 第1雌花(果)
茎長 葉身長 (6月 日) 着生
節位
着果
節位
雄花 雌花
1 N・10・27 4.0 9.1 15.5 9.9 11.7 21日
2 N・15・30 9.0 10.1 14.3 9.8 11.7 22
3 S・10・27 6.8 9.3 20.7 9.4 10.1 20
4 S・15・27 9.3 10.3 15.0 8.9 12.4 21
  10℃平均 5.4 9.2 18.1 9.7 10.9 20.5
15℃平均 5.4 9.2 18.1 9.7 10.9 20.5
N平均 9.2 10.2 14.7 9.4 12.1 21.5
S平均 8.1 9.8 17.9 9.2 11.3 20.5

(3)苗令による開花への影響(59年)


区名 定植時の苗素質 開花始 第1雌花
茎長 葉身長 着蕾数 最大
花長
同左
着生節
(6月 日) 着生
節位
着果
節位
着果率
雄花 雌花
1 25日苗 cm
6.1
cm
6.9
0 mm
0
0 5.8 23.8 12.1 11.7 55.0
2 30 〃 12.2 11.1 6.6 19.4 2.4 7.7 20.1 11.6 12.3 63.0
3 35 〃 18.9 8.6 8.8 22.0 3.1 8.3 25.8 14.6 12.5 76.5
注、葉身長:第3葉、苗は4葉を残し摘芯、雌花開花始:子づる3本仕立の1番花の平均

(4)定植後の温度が開花に及ぼす影響(59年)


区名 6月8日の生育 6月22日の生育 開花始 第1雌花
つる長 葉数 つる長 葉数 (6月 日) 着生節位 着果節位
雄花 雌花
1 高温区 cm
87
11.3 cm
261
20.4 5.5 23.6 12.4 12.5
2 中温区 66 9.5 225 19.0 8.4 23.0 10.5 10.6
3 低温区 31 8.1 193 17.0 10.3 24.0 8.4 9.7
注、雌花開花始:子づる3本仕立の1番花の平均

(5)3要因が定植後の生育、開花期に及ぼす影響(61年)


区名 定植11日後(5.28) 定植22日後(6.9) 開花始(6月 日) 雌花
着生節位
雌花(5株)
葉数
(枚)
茎数
(mm)
葉面積
(c㎡)
つる長
(cm)
葉数
(枚)
葉面積(㎡) 雄花 雌花 雌花
2花
第1花 平均 交配数 着果率
親づる 子づる
1 定植後高温 7 9.1 642 62 12 1.4 1.7 3.1 16 18 18 5 7 25 64
2  〃  中〃 7 9.9 61951 11 1.3 1.3 2.6 17 18 18 18 5 6 28 65
3  〃  低〃 7 9.8 621 29 10 1.2 0.6 1.8 19 19 20 4 6 34 67
    - * ns * * * * * ns ns * ns ns ns -
4 22日前 5 8.5 421 33 10 1.4 1.1 2.5 21 20 22 4 5 22 79
5 27 〃 7 9.7 738 54 11 1.3 1.3 2.5 17 17 18 5 7 33 65
6 32 〃  8 10.6 773 55 12 1.2 1.2 2.4 14 17 17 5 7 33 52
    * * ** * * * ns ns * * * ns * * *
7 低温育苗 7 9.3 561 45 11 1.2 1.2 2.4 18 19 20 4 6 30 62
8 中 〃 7 9.7 686 49 11 1.3 1.2 2.5 17 18 19 5 7 29 68
    ns ns * - - ns - ns ns ns * ns ns ns -

11.今後の問題点  品種の検討

12.普及上の注意事項