【普及奨励事項】
1.課題の分類  草地 育種 寒地型牧草−A-3
          北海道 草地
2.研究課題名  オーチャードグラス「北海20号」の育成
3.予算区分  経常
4.研究期間  完 (昭和45〜61年)
5.担  当  北海道農試・草開発二・牧草2研
6.協力・分担関係
    系適(協力)場所 11場所
    特検場所    3場所
    草地試育種化学研

7.目  的
 北海道全域および東北、関東の高標高地を対象に、耐病性、越冬性に優れた採草用、採草放牧兼用の早生品種を育成する。

8.試験研究方法
 1)育成方法:8栄養系の組み合せによる合成品種法。
2)育成経過: 昭和45年より国内外品種、国内エコタイプ、北農試育成系統など143品種・系統
11,246個体を7選抜母集団に分けて養成し、423個体を選抜、栄養系評価と後代検定
を行い、最終的に北海20号の親株を構成する8栄養系を選定した。多交配採種によっ
て合成第1代種子を得て、合成第2代種子を用いて昭和58年より系統適応性検定、特
性検定などの評価試験を行った。

9.成果の概要(主要特性)
 1)出穂期は早生品種に属し、「キタミドリ」と同程度かわずかに遅い。
 2)乾物収量は、「キタミドリ」と同程度(指数102、2年目・3年目104)で、季節生産性は、「キタミドリ」と大差ないが、やや1番草の比率が高い。
 3)主要病害に優れた抵抗性を示し、とくに、すじ葉枯病、うどんこ病抵抗性は「キタミドリ」より優れている。
 4)越冬性は「キタミドリ」よりやや優れ、晩生の「オカミドリ」に近い越冬性を示す。耐寒性は優れる。耐雪性は極強〜強にランクされる。
 5)放牧適性は「キタミドリ」と同程度である。
 6)アルファルファ(AL)との混播では、AL比が「キタミドリ」より高い。
 7)種子収量は高く、北農試2年平均で7.3Kg/aを示した。
 8)秋の基部被度は「キタミドリ」より低い。
 9)飼料成分では、1番草の粗繊維含有率が「キタミドリ」よりやや高いが、その他の成分は同程度であり、粗たんぱく収量104、粗繊維収量107を示した。
 10)形態は大型で、草たけは「キタミドリ」より5㎝程度高く、個体栽培では140㎝に達する。葉幅、葉長でも「キタミドリ」より若干大きく、草型は「キタミドリ」よりやや直立型を示す。

10.総括的な成果の具体的数字
表1 北海20号の乾物収量(対キタミドリ百分比、キタミドリはkg/a)
場所 調査年数 北海20号 キタミドリ フロンティア オカミドリ 品種・系統間の有意性
天北農試 4 101 343.8 103 97 n.s.
北見農試 3 103 207.6 108 98 n.s.
根釧農試 3 103 154.5 102 108 n.s.
新得畜試 4 99 385.4 96 98 n.s.
北農試 4 103 282.4 98 96 n.s.
平均   102 274.7 101 99 n.s.
本州6場所平均 104 323.7 105    

表2 北海20号の特性
形質 地域 北海20号 キタミドリ フロンティア オカミドリ 調査 備考
場所 点数
出穂始 北海道 6月1.7日 6月1.2日 6月3.7日 6月5.4日 6 12  
出穂期 北海道 6月3.7日 6月3.3日 6月5.4日   3 8  
すじ葉枯病 北海道 1.78 2.92 2.57 2.17 4 18(1)  
本州 1.86 2.58 2.44 - 3 7  
雲型病 北海道 2.17 2.87 2.59 2.37 3 6(2)  
うどんこ病 2.02 3.63 2.51 2.17 3 7(2)  
さび病 2.39 2.94 2.99 2.63 3 5(4)  
本州 2.80 3.20 3.10 - 3 5  
モザイク病 北海道 3.27 4.47 4.35 3.92 1 2(1)  
総合病害 2.23 3.40 3.11 2.78 3 7(3)  
本州 1.79 2.33 2.17 - 4 12  
越冬性 北海道 3.5 3.9 3.8 3.6 5 16  
耐寒性 積雪区 2.58 2.54 2.75 2.42 根釧 4 2年調査
除雪区 3.34 3.96 3.92 3.67 4
耐雪性 新潟 極強〜強 強〜極強 強〜中 強〜極強 1 3 3年調査
放牧適性 現存量 2.4 2.1 2.1 2.3 新得 3
採食程度 2.2 2.4 2.5 2.3 3
混播適性 AL率 61 58 54 59 北農試 9 3年平均%
合計収量 331 325 317 310   3年合計kg/a
採種量 kg/a 7.3 7.7 - 6.9 2 2年平均
草丈
(cm)
1番草 83.9 79.0 80.1 78.7 5 13 6月
2(3)番草 63.2 60.6 63.0 62.1 5 14 7〜8月
3(4)番草 55.0 53.2 57.6 53.6 5 13 9〜10月
個体栽培 140.2 135.2 138.3 136.9 1 1 開花期
※病害 1無又は微〜5:甚、( )は1:無又は微〜9:甚、越冬性採食程度1:良から5:不良、
現存量1:多〜5:少

11.成果の活用面と留意点
  北海道および東北・関東の高漂高地に適する。普及見込面積は約8万ha。
  採草および採草・放牧兼用草地に適する。早生で春の軍勢が良好なので春の放牧開始時期をやや早くする。越冬性は「キタミドリ」より優れているが、道東の土壌凍詰地帯では冬枯れの危険性があり、危険帯の刈り取りを避けるとともに、越冬性を向上させるように管理する。
  現在、育種家種子は160gであるが、62年以降大量生産を計画している。なお、原種生産用の種子は4.5kgを保有し、毎年10㎏の供給が可能である。

12.研究成果の区分:①普及に移しうる成果