【普及奨励事項】

(作成 昭和63年1月)

1.課   題
 てん菜「KAWE-J338」に関する試験成績

2.場所名 北海道立十勝、北見、中央、上川、根釧農業試験場

3.新品種候補系統名 てん菜「KAWE-J338」

4.来   歴
 「KAWE-J338」は、西ドイツのクラインヴァンツレーベン種子会社が育成した三倍体、単胚の一代雑種である。クラインヴァンツレーベン種子会社で育成した二倍体、単胚雄性不稔系統「2AO079」と四倍体、多胚花粉親系統「9X0022」とを昭和56年に交配し三倍体、単胚一代雑腫「MC82-02」を育成した。
 昭和57年に日本甜菜製糖株式会社により輸入された。

 1)昭和57年−「MC82-02」の系統番号で日本甜菜製糖株式会社において輸入品種検定予備試験を行った。その結果、収量、糖分にすぐれていたため「KAWE-J338」の系統名をつけた。
 2)昭和58年〜昭和59年−「KAWE-J338」の系統名で北海道立十勝、北見農試、北海道農試において輸入品種検定試験を行った。
 3)昭和60年−北海道立十勝、北見、中央、上川、根釧、天北農試、北海道農試において系統適応性検定試験を行った。以上の結果から収量性も良く、高糖性と認められ、昭和61年から各種の試験が行われた。
 4)昭和61年〜昭和62年−北海道立十勝、北見、中央、上川、根釧農試、北海道農試において輸入品種検定試験を行った。
 5)昭和61年〜昭和62年−北海道立十勝、北見農試において品質特性検定試験、十勝農試において栽培特性検定試験、褐斑病抵抗性特性検定試験、中央農試において耐湿性特性検定試験、根釧農試において抽苔耐性特性検定試験を行った。
 6)昭和61年〜昭和62年−全道18カ所において育成系統現地検定試験を行った。

5.特   性
 1)一般的件状:「KAWE-J338」は、「モノエース」とほぼ同程度の葉長で、葉婆はやや開平である。根形は円錐形て分岐根は少ない。
 2)当年抽苔:「ハイラーベ」と同様に抽苔耐性は強く、当年抽苔することはほとんどない。
 3)耐病性:てん菜の主農病害である樹斑病に対しては、「モノエース」同様に弱く、その他の病宮についても「モノエース」との差はほとんどない。
 4)根  重:「KAWE-J338」の根重は、ほぼ「モノエース」並である。
 5)根中糖分:「KAWE-J338」の根中糖分は、「モノエース」よりやや高い。
 6)品  質:「KAWE-J338」の有害性非糖分は、アミノ態窒素、カリウムは「モノエース」よりやや高いが、ナトリウムは「モノエース」よりやや低く、不純物価は「モノエース」並で良質である。

6.試験成績

各農試における成績(昭和58年〜62年の5カ年平均)

場 所 系統及び
品種名
根 重
(t/10a)
根中糖分
(%)
糖 量
(㎏/10a)
対モノミドリ比(%)
根 重 根中糖分 糖 量
十勝農試 KAWE(J338 5.52 18.12 1,002 101 104 106
(昭和60〜62年) (6.10) (18.19) (1,110) (102) (104) (107)
モノエース (6.16) (17.80) (1,098) (103) (102) (105)
ハイラーベ 5.59 17.05 953 103 98 101
モノミドリ 5.44 17.36 945 100 100 100
北見農試 KAWE(J338 4.52 18.27 826 103 105 109
(昭和60〜62年) (4.81) (18.05) (868) (103) (106) (109)
モノエース (4.88) (17.77) (866) (104) (104) (109)
ハイラーベ 4.79 17.06 818 110 98 108
モノミドリ 4.37 17.32 757 100 100 100
中央農試 KAWE(J338 6.55 16.93 1,105 107 105 113
モノエース 6.37 16.72 1,057 104 104 109
ハイラーベ 6.77 16.25 1,096 111 101 113
モノミドリ 6.10 16.14 974 100 100 100
上川農試 KAWE(J338 5.14 19.01 972 105 105 109
モノエース 5.18 18.63 961 106 102 108
ハイラーベ 5.18 17.82 919 106 98 103
モノミドリ 4.89 18.19 888 100 100 100
根釧農試 KAWE(J338 4.05 18.15 736 102 107 109
モノエース 4.15 17.80 738 105 105 109
ハイラーベ 4.23 16.86 715 107 99 106
モノミドリ 3.97 16.98 674 100 100 100
天北農試 KAWE(J338 5.08 16.88 855 95 103 98
モノエース 5.25 16.92 889 98 104 102
ハイラーベ 5.80 16.19 939 109 99 108
モノミドリ 5.34 16.32 871 100 100 100
北 農 試 KAWE(J338 5.09 17.49 889 103 105 108
(昭和60〜62年) (5.16) (17.06) (880) (102) (104) (107)
モノエース (5.13) (16.93) (867) (102) (104) (105)
ハイラーベ 5.36 16.38 875 108 98 106
モノミドリ 4.96 16.70 826 100 100 100
注)中央、上川、根釧農試の成績は昭和60年〜62年の3カ年平均、天北農試は昭和60年の成績、北農試の成績は昭和58年、60〜62年の4カ年平均、十勝、北見、北農試のモノエースの成績は昭和60〜62年の3カ年平均

7.配付可能種子量 昭和63年 1、000㎏、昭和64年以降 10、000㎏

8.普及対象地域及び普及見込面積
 道央南部、道南を除く全道一円に適応し、「カーベメガモノ」、「モノエース」の一部におきかえて栽培する。
 10,000ha

9.栽培上の注意点
 1)本品種は、糖分の高い品種であるが、根中糖分の低下や有害性非糖分の増加を招く多肥栽培は避ける。
 2)本品種は、「モノエース」と同様に褐斑病に弱いので適期防除に留意する。
 3)その他の栽培法は「モノエース」に準ずる。