【普及奨励事項】

1.課 題 てん菜「KAWE-J537」に関する試験成績

2.場 所 名 北海道立十勝、北見、中央、上川、根釧農業試験場

3.新品種候補系統名 てん菜「KAWE-J537」

4.来 歴
 「KAWE-J537」は、西ドイツのクラインヴァンツレーベン種子会社が育成した三倍体、単任の一代雑種である。クラインヴァンツレーベン種子会杜で育成した二倍体、単胚雄性不稔系統「lA0069」と四倍体、多胚花粉親系統「PS54177」とを昭和58年に交配し三倍体、単胚一代雑種「MC84-08」を育成した。

 1)昭和59年に日本甜菜製糖株式会社により輸入され、「MC84-08」の系統番号で、日本甜菜製糖株式会社において輸入品種検定予備試験を行ったが、収量性にすぐれていたので「KAWE-J537」の系統名をつけた。
 2)昭和60年−北海道立十勝、北見農試、北海道農試において輸入品種検定試験を行った。
 3)昭和61年〜昭和62年−「KAWE-J537」の系統名で北海道立十勝、北見、中央、上川、根釧農試、北海道農試において輸入品種検定試験を行った。
 4)昭和61年〜昭和62年−北海道立十勝、北見農試において品種特性検定試験、十勝農試において栽培特性検定試験、褐斑病抵抗性特性検定試験、中央農試において耐湿性特性検定試験、根釧農試において抽苔耐性特性検定試験を行った。
 5)昭和61年〜昭和62年−全道18カ所において育成系統現地検定試験を行った。

5.特 性
 1)一般的性状:「KAWE-J537」は、「モノミドリ」とほぼ同程度の葉長で、葉姿はやや開平である。根形は円錐形で分岐根は少ない。
 2)当年抽苔:「モノエース」と同様に抽苔耐性は強く、当年抽苔することはほとんどない。
 3)耐病性:てん菜の主要病害である褐斑病に対しては、「モノエース」同様に弱く、その他の病害についても「モノエース」との差はほとんどない。
 4)根 重:「KAWE-J537」の根重は、「モノエース」より多く「モノヒカリ」と同稲度かやや優る。
 5)根中糖分:「KAWE-J537」の根中糖分は、「モノエース」より低く、「モノミドリ」並かやや高い。
 6)品 質:「KAWE-J537」の有害性非糖分は、アミノ酸窒素は「モノエース」に比べ高く、カリウム、ナトリウムは「モノエース」よりやや高く、不純物価も「モノエース」よりやや高い。

6.試験成績

各農試における成績(昭和60〜62年の3力年平均)

場 所 系統及び
品種名
根 重
(t/10a)
根中糖分
(%)
糖 量
(㎏/10a)
対モノミドリ比(%)
根 重 根中糖分 糖 量
十勝農試 KAWE-J537 6.52 17.46 1,139 116 99 115
モノエース 5.87 18.08 1,062 104 103 107
モノヒル 6.59 16.96 1,121 117 97 113
モノヒカリ 6.43 17.61 1,135 114 100 115
モノミドリ 5.62 17.56 989 100 100 100
北見農試 KAWE-J537 5.21 16.99 887 120 102 123
モノエース 4.67 17.35 811 107 104 112
モノヒカリ 4.80 17.39 835 110 104 115
モノミドリ 4.35 16.66 724 100 100 100
中央農試 KAWE-J537 6.66 16.86 1119 118 99 116
モノエース 5.97 17.51 1043 106 103 109
モノヒカリ 6.47 17.42 1126 115 102 117
モノミドリ 5.64 17.06 961 100 100 100
上川農試 KAWE-J537 5.26 18.69 982 113 101 114
モノエース 4.85 19.00 920 104 102 107
モノヒカリ 5.33 18.53 987 115 100 114
モノミドリ 4.65 18.57 863 100 100 100
根釧農試 KAWE-J537 4.62 17.46 807 116 102 119
モノエース 4.2 17.90 752 106 105 111
モノヒカリ 4.22 17.36 732 106 102 108
モノミドリ 3.97 17.08 679 100 100 100
北 農 試 KAWE-J537 5.47 16.55 906 111 101 112
モノエース 4.98 16.98 845 101 103 104
モノヒカリ 5.46 16.40 895 111 100 110
モノミドリ 4.94 16.42 811 100 100 100
注.中央、上川、根釧農試の成績は昭和61〜62年の2カ年平均。

7.配付可能種子量 昭和63年:1,000kg,昭和64年以降:3,000kg

8.普及対象地域及び普及見込面積
 道央中・北部、十勝中部、網走内陸及びこれに準ずる地域に適応し、「カーベメガモノ」、「モノエース」の一部におきかえて栽培する。
 3,000ha

9.栽培上の注意点
 1)根中糖分の低下や有害性非糖分の増加を招く多肥栽培は避ける。
 2)本品種は,「モノエース」と同様に褐斑病に弱いので適期防除に留意する。
 3)その他の栽培法は「モノエース」に準ずる。