【普及奨励事項】

1.課題の分類 分類番号 整理番号

2.場 所 名  北海道立道南農試

3.新品種名 オウトウ「南陽」

4.来   歴
 (1)本品種は、昭和32年山形県農業試験場置賜分場で、オウトウの胚培養の試験のさいに得た、「ナポレオン」の交雑実生のなかから選抜されたものである。その後、昭和46年から山形園芸試験場で引きつづき特性調査をおこなったのちに昭和49年農産種苗法による種苗名称登録を出願し昭和53年登録された。
 (2)育 成 者  山形県立園芸試験場

5 特性の概要
 (1)樹  性  樹勢は「ナポレオン」程ではないが強い方である。樹体は「北光」「佐藤錦」よりは大きくなるが「ナポレオン」よりは小さい。1年枝は太く赤褐色である。葉身は大きく、縁が波うつのが特徴である。花は白色で大きく、小花数は3花程度である。
 (2)生育相  「ナポレオン」より発芽期で2日、満開期で3日程度遅い。
 (3)熟  期  「ナポレオン」と同程度か、やや早く、平均して道南では、7月10日頃、北後志では7月20日頃収穫が始まり7月下旬に収穫が終了する。
 (4)結果性 花芽の着生は「ナポレオン」と同程度である。
 (5)果  実  果実の大きさは8〜10gで極めて大きい。果形は短心臓形で「ナポレオン」よりは、やや丸味を帯びる。果色は「ナポレオン」に似て陽向面が帯赤するが全面に着色することは少ない。糖度は、ブリックスで14%程度と高く、酸は「ナポレオン」より少なく食味は極めて良い。
 (6)生産力  結実は中位であるが、一果重が大きいため生産力は高い。
 (7)裂果性 降雨による裂果は「ナポレオン」より明らかに少ない。
 (8)耐病虫性  病害虫については、一般栽培で特に問題はない。
 (9)その他
 ① 大玉のため、単位時間あたりの収穫量が多い。
 ②「北光」、「ナポレオン」と相互交配親和であるが、「佐藤錦」とが相互交配不親和である。

6.試験成績概要
第1表 樹体生育、生育相、収穫期、収量
場 所     項目
品種
樹 体 生 育(㎝) 生 育 相 収穫始め
〜終わり
1樹当り収量(kg)
幹 周 樹 高 樹 巾 発芽期 満開期 着果重量 良品収量
道南農試   62年度(9年生) 60〜62年平均 57〜62年平均 積算(56〜62) 平均(60〜62)
南 陽 59.0 357 455 5.3 5.17 7.9〜7.23 89.2 11.6
ナポレオン 70.7 455 545 5.1 5.14 7.12〜7.24 80.0 4.4
北 光 51.7 336 500 5.1 5.17 7.12〜7.25 53.6 9.2
佐藤錦 47.7 378 433 5.3 5.19 7.3〜7.18 49.6 6.7
仁木町A   61年度(10年生) 61年度 61年 61年
  開花始 満開期
南 陽 52.5 - - 5.9 5.14 7.22〜7.29 90
北 光 49.0 - - 5.6 5.12 7.13〜7.28 75
仁木町B   - 62年度 62年 -
  開花始 満開期
南 陽 5.15 5.18 7.18〜8.3 -
北 光 5.13 5.15 7.5〜7.25
増毛町   - 61年度 61年 -
  開花始 満開期
南 陽 5.14 5.18 7.20〜 -
北 光 5.12 5.15 7.13〜

第2表 果実品種、裂果性、時間あたりの収穫量
場 所     項目
品種
果 実 品 質 官 能 テ ス ト 圃場で
の裂果
率(%)
裂果
指数*
時間あたりの
収穫量(㎏/h)
一果重
(g)
糖 度
(%)
酸 度
(%)
食 味 外 観 すぐり
もぎ
最終
もぎ
道南農試   57〜62年
(平均)
58〜62年
(平均)
「ナポレオン」と比
べて「南陽」が
好ましいとした
人数40名中
37名
「ナポレオン」と比
べて「南陽」が好
ましいとした人
数40名中37
60〜62名
(平均)
60〜62名
(平均)
62年
南 陽 9.1 13.9 0.58 35 1.40 12.8 13.2
ナポレオン 7.5 13.6 0.87 71 2.19 7.7 10.4
仁木町A   61年 - - 61年 - -
南 陽 8.6 14.8 0.48 2.2
北 光 6.5 14.6 0.52 5.8
仁木町B   62年            
南 陽 9 - -            
北 光 7 - -            
増毛町   61年            
南 陽 8.9 14.6 -            
北 光 6.5 14.0 -            
*水中侵漬による裂果指数(成績書参照)

第3表 主要品種との交配親和
相手品種
項目
ナポレオン 北光 佐藤錦
南陽 ♀(%)
14 42 0
♂(%)
24 13 0

7.普及対象地域及ぴ普及見込面積
 道南及び道央のオウトウ栽培地域一円、オウトウ全栽培面積(昭和61年度335ha)の30%程度 約100ha

8.保有種苗
 道内で現在16ha(昭和61年度)の栽培実績があり増殖用種苗に問題はない。

9.栽培上の注意
 ① 受粉用品種としては「北光」などの親和性のある品種を用いる。
 「佐藤錦」は受粉用品種としては使用できない。
 ②陽当りが不良であると着色が鈍くなるので、栽植距離を十分にとり整枝せん定によって陽当りを良くする。
 ③ その他はオウトウ一般栽培に準ずる。