【指導参考事項】
完了試験研究成績(作成 63年 1月)
1.課題の分類  食品 ホウレンソウ・キャベツ・ナガイモ−加工、流通技術
          北海道
2.研究課題名  氷室内冷熱による農産物貯蔵システムの開発に関する研究
         1)ホウレンソウ、キャペツの予冷およびナガイモの貯蔵に関する試験
3.予算区分  道−民間
4.研究期間 (昭和61年〜62年)
5.担当  中央農試園芸部流通加工科
6.協力・分担関係  道立工試・株式会社ヒムロ

7.目  的
  氷室(雪氷変換機により雪から製造した氷を利用する冷蔵庫)によるホウレンソウ、キャベツの予冷・保冷方法とナガイモの長期貯蔵方法を検討する。

8.試験研究方法
(1)ホウレンソウ、キャベツの予冷・保冷:
1)予冷・保冷庫;氷室(試験用1.6㎡、氷8トン 2〜3℃、100%)強制通風予冷庫(2℃、90%)
2)容器;段ポール箱または発泡スチロール箱
3)包装;無包装または2軸延伸ポリプロピレン袋(OPP)
4)予冷後条件;10、20、30℃
5)鮮度評価:外観上の変化を観察し、試験開始時5点〜著しく不良1点として5段階評価
6)葉色:測色色差計
(2)キャベツの大量予冷における積付け:
1)氷室;1℃、80㎞2、氷166トン
2)積付け;ポリコンテナー192箱密集、96箱小プロック
(3)ナガイモの貯蔵:
1)仮貯蔵:61年11月3日〜62年3月19日まで5℃
2)本貯蔵;62年3月19日〜62年11月2日まで氷室(0〜5℃、100%)および低温庫(1〜2℃、90%)
3)包装:0.05㎜ポリエチレン袋、無包装

9.結果の概要・要約
1.予冷中(7月中旬、9月初め)の氷室内温度は2〜3℃できわめて安定していた。
2.段ポール箱につめ、蓋をした場合のホウレンソウの品温は、氷室では18℃から4℃まで13時間強制通風予冷庫では20℃から4℃まで8時間で降下した。蓋を開けて冷気が直接あたるようにして冷却すると無包装の場合は20Cから4℃まで2時間半で降下し、袋づめすると24℃から4℃まで約4時間で降下した。
3.ホウレンソウは、しおれは氷室のほうが軽度で、総合的にみて氷室保冷のほうが鮮度良好であった。予冷後OPP袋づめし10℃に保つのが鮮度保持に最も効果的であった。葉色は予冷後温度が10℃では差はないが、20、30℃では氷室のほうが明らかに黄化が抑えられた。
4.段ポール箱につめ、蓋をした場合のキャベツの品温は、氷室では18℃から4℃まで16時間、強制通風予冷庫では17℃から4℃まで15時間で降下した。実用規模の氷室で大量処理した場合の冷却速度は非常に遅く、棒積み小プロックでも初温17℃のキャベツの品温が5℃まで降下するのに32時間を要し、密集させて積み付けると同品温になるのに6時間長くかかった。氷室はホウレンソウのような軟弱葉菜類の少量処理に向き、冷却速度はややおそいが、予冷後の鮮度保持効果は強制通風予冷と同等以上である。
5.氷室で8日間保冷したキャペツはしおれが全くなく、鮮度はきわめて良好だった。強制通風予冷庫で保冷したものはややしおれがみられた。
6.ナガイモを1年間貯蔵したところ、氷室、低温庫のいずれにおいても、また、ポリ袋詰め、無包装のいずれにおいても、しなびや表皮の変色はまったくなかった。重量減少もごくわずかで、無包装でも、氷室で6.6%、低温庫で8.6%であった。ポリ袋詰めすると氷室で1.1〜1.2%、低温庫で1.0〜2.9%であった。
7.先端(尻部)の腐敗がみられたが、これは取扱い中の打撲による。病斑(乾いた陥没)はポリエチレン袋づめ区に発生し、無包装区ではほとんど発生しなかった。全区とも肉色は純白で、肉質・舌ざわりは良好。トロロにして1日後も褐変は皆無であり、食味は良好であった。

10.成果の具体的数字
 表1 ホウレンソウの予冷後の鮮度


項目 しおれ 黄化 総合
区/
日数
氷室 AC 無予
氷室 AC 無予
氷室 AC 無予
10℃

0日 3.7 4.0 4.0 5 5 5 4.3 4.5 4.5
1日 3.3 3.6 4.0 4.7 4.0 5 4.0 4.0 4.0
2日 3.0 3.0 - 4.0 4.0 - 3.0 3.0 -
10℃ O
P
P
0日 5 5 5 4.5 4.5 5 5 5 5
1日 5 4.8 4.0 4.5 4.3 4.0 5 5 4.0
2日 4.5 4.3 - 4.3 4.0 - 4.5 4.3 -
20℃ O
P
P
0日 5 5 4.0 5 4.8 4.3 5 5 4.0
1日 3.8 4.0 3.0 4.5 4.0 4.0 4.0 4.0 3.0
2日 3.3 3.0 - 3.8 3.0 - 2.8 2.5 -
30℃ O
P
P
0日 5 5 3.3 5 4.8 3.3 5 5 3.3
1日 3.8 3.3 2.0 3.5 3.0 2.8 2.8 2.0 1.0
2日 3.0 2.3 - 2.8 2.0 - 2.0 1.0 -
 AC:強制通風予冷

 表2 1年間貯蔵したナガイモの品質評点
処理 項目
/規格
平均
個体
重g
しな
萌芽 発根 先端
腐敗
病斑 肉色 肉質 重量減少率(%)
A B C

PE 530 5.0 4.6 4.0 4.1 4.0 5.0 5.0 0.7 1.1 0.9
780 5.0 5.0 4.0 4.6 3.8 5.0 5.0 0.6 1.2
1211 5.0 4.9 4.0 4.2 4.6 5.0 5.0 0.6 1.2
710 5.0 4.5 4.0 4.3 5.0 5.0 5.0 4.3 6.6


PE 512 5.0 5.0 5.0 4.4 4.3 5.0 5.0 0.7 2.9
789 5.0 5.0 5.0 4.7 4.4 5.0 5.0 1.2 2.1
1177 5.0 5.0 5.0 4.4 4.6 5.0 5.0 0.7 1.0
755 5.0 5.0 5.0 4.3 4.9 5.0 5.0 4.5 8.6
 A:仮貯蔵終了時
 B:本貯蔵終了時
 C:土砂割合

 表3 ナガイモの腐敗および病斑発生程度別個体数割合(%)
処理 項目/
評点
先端腐敗 病斑
5 4 3 2 1 5 4 3 2 1

PE


50 30 10 0 10 25 50 12.5 12.5 0
70 20 10 0 0 20 40 20 20 0
33 45 22 0 0 78 11 11 0 0
40 50 0 10 0 100 0 0 0 0


PE


60 30 0 10 0 60 20 10 10 0
80 10 10 0 0 60 30 0 10 0
60 20 20 0 0 60 40 0 0 0
30 60 0 0 10 90 10 0 0 0
 注 PE ポリエチレン袋詰め
   無 無包装

11.成果の活用面と留意点
 (1)冷却効率を高めるための構造上の改良

12.残された問題とその対応
 (1)リンゴの貯蔵方法の検討
 (2)ニンジンの貯蔵法の検討