試験研究成績

【指導参考事項】

作成(昭和63年1月)

1.課題の分類
北海道 畜産 乳牛 飼養技術 根釧農試

2.研究課題名 ロールベールサイレージの効率的調製法
         (ロールベールサイレージの効率的利用技術)

3.予算区分 地域重要新技術開発促進事業

4.研究実施年度・研究期問 昭62年(昭61年〜62年)

5.担  当 根釧農試酪農施設科、酪農第一科、経営科

6.協力分担

7.試験目的
 ロールベールサイレージの調製に関し、ベール巻式、梱包方式、密封方式について作業性能を明らかにし、効率的な調製作業体系を検討する。

8.試験方法
 1)試験期日 昭和61年4月〜昭和62年12月
 2)試験場所 道立根釧農業試験場、および現地(根室管内)
 3)試験項目及び要領
 (1)巻式別作業動力の測定:ロールベーラの巻式別にサイレージ調製時の牧草水分・作業動力、作業速度、ベール形状・及び重量を計測した。
 (2)梱包方式別の作業能率:梱包方式(トワイン1本・2本・ネット巻き付け方式)別に作業能率(圃場面積、形状、作業時間、牧草水分、調製ベール数、重量)を測定した。
 (3)密封方式別の作業能率:ベール密封作業のうち、ベールラップ方式について作業能率、ラップ使用量、および貯蔵中の温度、炭酸ガス濃度変化を測定した。また現地農家での一般的な密封作業の実態と作業能率の調査を行った。
 (4)給与作業実態調査:ロールベールサイレージ給与作業の実態を調査した。

9.結果の概要・要約
 (1)巻式別作業動力 ロールベーラによるサイレージ用牧草の梱包を行なった場合の所要動力について巻式別に比較した結果、標準集草でPTO軸トルクは芯ありが49kg-m、芯なしが68kg-mであり、芯なしはトワイン掛け直前で負荷が急増するため大きな値を示した。作業時の所要動力が乾草調製時と同程度であることから、乾草調製作業と同一の機械体系でサイレージ作業が可能である。
 (2)梱包作業能率 トワイン掛けの時間は従来の1本掛けの50〜55秒が、トワイン2本で23秒、ネット巻で13秒に短縮された。作業能率は、トワイン1本掛けの1.56ha/hが、2本掛けで1.3倍(2.03ha)、ネット巻で1.4倍(2.20ha)になった。
 (3)密封作業能率
 1)バッグ方式:現地農家での一般的な密封作業は、2〜3名の組作業で1袋あたり1〜2個のベールを詰めるバッグ詰め方式と個別には密封せずに1山(9〜20個)単位で密封するスタック方式がある。農家でのバッグ詰め方式は1個入り2重バック、2個入り1重、2個入り2重と様々である。バッグ詰め作業は1重で24.0〜29.9秒/個、2重で37.4〜67.3秒/個であった。またバッグ密封方法はトワインによってバッグの口を縛る方法が多くこの時間は、1バッグあたり38〜48秒であった.
 2)ラップ方式:ラップ枚数は2〜5の4段階で設定でき直径約150cmのベールを巻いた場合の重なり枚数は設定3、4、5に対しそれぞれ2.9、4.5、5.4枚であった。
 枚数設定4で、ベールの搬入、移動を除いた作業能率は芯なしの場合3分11秒/ベール、芯ありの場合2分30秒/ベールであった。正味のラップ所要時間は、芯なしで2分3秒、1分あたりの巻数は16.4回/分であった。同様に芯ありは硬く梱包されており、片くずれも少ないためラップ時間は1分47秒と短かく、巻数は18.2回/分であった。ベールの搬入、移動時問を55秒/個とすると、1時間あたりの密封作業能率は、芯なしでは14.5個、芯ありで17.6個となる。バッグ詰め作業が2名以上の組作業を必要とするのに対し、ラップ方式は1名作業が十分可能で作業者あたりの能率はバッグ方式と同程度以上である。
 フィルム使用量は1ベールあたり1.2〜1.3kgであった。フィルム1本(正味21㎏)で16ベールの密封が可能である。
 (4)給与作業実態調査 給与方法には草架に投入する方法と、牛舎内にトラクタで搬入して人力またはトラクタにより給与する方法がある。搬入する量は2日分を1日で行う場合が多い。給与搬入時間は草架に投入する場合(移動距離l00m、2べ一ル)で12分、牛舎に搬入し給与する場合(移動距離30m、2ベール)で約28分であった。

10.主要成果の具体的数字

表1:巻式別作業精度及び作業動力試験結果
巻 式 芯あり 芯なし 芯なし
乾 草
試験番号 1 2 3 4 5 6 7 8
牧草水分 (%) 61.7 69.5 15.3
作業速度 (m/s) 1.35 1.70 2.10 1.74 2.15 2.73 1.79 2.25 2.18
5m草量 ㎏ 41.6 37.1 37.6 23.2 - 29.9 58.3 60.1 15.6
ベール重量  (㎏) 900 870 880 950 970 830 860 830 310
直径 (㎝) 140 140 145 151 151 151 148 149 159
幅 (㎝) 115 117 117 125 127 124 130 129 125
藁密度 ㎏/m3 508 483 455 428 429 376 387 371 126
PTO軸トルク ㎏-m 45.0 48.0 49.0 67.5 67.5 - 81.0 87.0 71.7
PTO回転数 rpm 518 513 513 518 518 - 518 471 510
所要馬力 PS 32.5 34.4 35.1 48.8 48.8 - 58.6 57.2 51.1
毎時 t/h 40.4 45.4 56.8 29.1 - 58.8 75.1 97.4 24.5
処理量 DMt/h 15.5 17.4 21.8 8.9 - 17.9 22.9 29.7 20.8

表2:梱包方式による作業能率比較表
区 分 作業面積
ha
拾 上 梱 包 排 出 旋 回 合 計 作業能率
ha/h
min s min s min s min s min s
ネット巻式 1.06 16 21 4 4 6 5 2 23 28 53 2.20
トワイン2本 0.84 12 12 5 46 4 28 2 26 24 52 2.03
トワイン1本 1.06 16 21 15 50 6 5 2 23 40 39 1.56
ネット巻式:調製ベール19個、トワイン2本:調製ベール15個、トワイン1本は梱包
時間を50秒/個として梱包時間を求め、他の時間はネット巻式の作業時間を適用した。

表3:ラップ枚数設定とラップ重複枚数(供試機UNDERHAUG7500)
試験番号 設定 ベール回転数 時間 ベール
高さ(㎝)
ベール幅
(㎝)
ラップ重なり
枚数(枚)
A-1 3 24.5 1'44" 152/125 150/154 2.9
A-2 4 31.0 2'47" 145/125 160/166 4.5
A-3 4 30.0 3'24" 118/153 156/157 ---
A-4 5 39.0 3'18" 147/136 150/150 5.4

表4:現地農家におけるロールベールサイレージ密封作業時間
農家区分 R-4 R-6 R-5 R-5 R-6
ベール個数-重ね枚数 1-2 1-2 2-1 2-1 2-2
作業人数(人) 2 2 3 2 3
平均
作業
時間
(s/個)
ベール運搬 25 24 24 29 40
袋詰め 67 37 24 30 44
袋積み 33 37 9 19 27
移 動 33 30 27 25 38
ベール1ヶあたり合計(s) 158 128 84 103 149
トワイン結束(s/1パック) 76 76 40 48 76

表5:ベールラッパによる密封作業能率
区分 芯なし 芯あり
平均 最大 最小 平均 最大 最小
巻回数 33 36 31 31 35 30
取付け 36" 1'08" 28" 18" 28" 10"
ラップ巻 2'03" 2'28" 1'42" 1'47" 2'02" 1'39"
後処理 34" 41" 31" 25" 35" 17"
総時間 3'14" 4'01" 2'44" 2'30" 2'50" 2'14"
回/min 16.4 19.2 14.2 18.2 19.8 16.7
注:フィルム使用量
芯なし:12.9㎏/10ベール=1.3㎏/個
芯あり:5.95㎏/5ベール=1.2㎏/個

表6:給与作業時間調査結果
区分 項 目 内 訳
農家A 給与方法 草架、2ベール
運 搬 (s) 245
開封給与(s) 315
移 動 (s) 160
その他 (s) 35
所要時間(s) 755
農家B 給与方法 牛舎、2ベール
運 搬 (s) 197
開封給与(s) 1358
移 動 (s) 127
その他 (s) -
所要時間(s) 1682

11.今後の問題点

12.普及上の留意点