成績概要書

【指導参考事項】

作成(62年12月)

1.課題の分類
畜産 乳牛 栄養飼料 北海道
北海道 畜産

2.研究課題名
  乳牛に対する蒸煮シラカンバの給与技術
  (蒸煮木材による泌乳牛の長期飼養試験)

3.予算区分 大型別枠(バイオマス)

4.研究期間  59年〜61年

5.担当 北農試・畜産・畜4研

6.協力・分担関係 畜試・栄養部・東北農試・畜産部・九農試・畜産部

7.目的
 バイオマスとしての林産資源を変換プロセス(蒸煮など)によって飼料化し、これを草資源などと共に、牛に給与して畜産物を生産しようとする林一畜一草の系を結ぶ地域システムを確立するために必要な技術開発研究として蒸煮処理広葉樹(シラカンバ 以下木材と略す)による乳牛の飼養試験を行なう。

8.試験研究方法
 (1)供試木材の品質管理を行なうため酵素を用いて、木材の乾物消化率を測定し、製造条件による木材の品質の差を検討した。
 (2)木材の乳牛への馴致および摂取量を検討した。
 (3)木材を用い、乾草、配合飼料(ミネラル・ビタミン添加)、大豆柏を組み合わせ、乾固妊娠期、泌乳最盛期、泌乳中(後)期の3期について、各期毎に必要とするTDNの木材による代替率0,20,40%(乾固妊娠期、泌乳中(後)期)、または0,15,30%(泌乳最盛期)の3区を設け、飼養試験を行った。TDNは日本飼養標準の100%、DCPは100%以上とし、補足ミネラル・ビタミンについては必要量を下まわらないようにした。

9.成果の概要
 (1)種々の製造条件による乾物消化率は47〜65%であった。最終的な供試木材の製造条件は11気圧、20分問蒸煮、解繊機クリアランス7mmであり、この条件での酵素消化率は62%であった。
 (2)木材をはじめて摂取する牛に対して、1日1頭あたり12kg(乾物として6.6kg)を摂取させるのに、約3〜4週間を要した。
 (3)体重、乳量、乳成分(脂肪、無脂固形分)について、試験開始時の値と試験期間中の平均値を比較した結果、各期とも各区間に大きな差はないものとみられた(表1〜3)。

10.成果の具体的数字(総括)

表1 蒸煮木材によるTDN代替率0,20,40%区における体重、
  乳成分の試験開始時値と試験期間中平均値(59年度、泌乳中後期)
試 験 区 0%代替 20%代替 40%代替
測定項目 平均値 開始時 試験期間中 開始時 試験期間中 開始時 試験期間中
体 重(Kg) 661 669 664 691 651 658
乳 量(Kg/日) 15.8 16.1 12.5 13.8 13.2 13.1
乳 脂 肪(%) 3.16 3.44 3.63 3.73 3.64 4.01
無脂固形分(%) 8.32 8.43 8.69 8.70 8.51 8.81

表2 蒸煮木材によるTDN代替率0,20,40%区における体重の試験開始時値と
  試験期間中平均値(60年度、乾固妊娠期)
試 験 区 0%代替 20%代替 40%代替
測定項目 平均値 開始時 試験期間中 開始時 試験期間中 開始時 試験瑚間中
体 重 (Kg) 689 723 691 740 676 721

表3 蒸煮木材によるTDN代替率0,15,30%区における体重、乳量、乳成分の
  試験開始時値と試験期間中平均値(60年度、泌乳量最盛期)
  (61年度…( ))
試 験 区 0%代替 15%代替 30%代替
測定項目 平均値 開始時 試験期間中 開始時 試験期間中 開始時 試験期間中
体 重 (㎏) 665 647 634 643 681 657
(690) (678) (713) (701) (651) (634)
乳量(Kg/日) 29.2 26.8 30.5 28.6 30.1 26.7
(31.8) (28.1) (29.3) (24.6) (34.0) (28.6)
乳 脂 肪(%) 3.74 3.50 3.58 3.64 3.71 3.46
(3.94) (3.46) (3.89) (3.76) (3.80) (3.69)
無脂固形分(%) 8.73 8.29 8.27 8.16 8.62 8.33
(8.35) (8.12) (8.41) (8.26) (8.54) (8.32)

11.成果の活用面と留意点
 これらの成果をふまえて「蒸煮シラカンバによる乳牛および肉用牛の飼養マニュアル」(農水省)が62年7月に作成された。

12.残された問題とその対応
 蒸煮処理木材(シラカンバ)とサイレージの組み合わせによる乳牛への給与方法。他樹種(針葉樹など)の飼料化および乳牛への給与方法