完了試験研究成績
【指導参考事項】
(作成63年1月)

1.課題の分類 草地 草地 草地管理 C-4
         北海道 家畜草地合同

2.研究課題名
  天北地域の放牧草地におけるペレニアルライグラスの利用法と維持管理
  (放牧方法によるペレニアルライグラス主体草地の植生維持に関する試験)

3.予算区分 道単

4.研究期問 (昭56〜62年)

5.担  当 天北農試草地飼料科

6.協力分担関係 な し

7 目   的
 天北地域におけるペレニアルライグラスの永続性と秋の放牧利用法並びに、オーチャードグラスとの混播草地における適正な植生維持のための放牧利用法を、長期にわたる実放牧により実証した。

8.試験研究方法
 1)秋の利用法と永続性
  (1)秋の放牧利用回数・間隔、最終利用時期の違いが収量、植生維持に及ぼす影響(試験Ⅰ)
  (2)永続性に関する要因解析(試験Ⅱ)
 2)混播草地における放牧利用法と植生維持
  (1)放牧利用回数の違いが、収量、植生および牧草密度に及ぼす影響(試験Ⅲ)
  (2)混播草地における草種間競争に関する要因解析(試験Ⅳ)
 3)ペレニアルライグラス主体放牧草地の草地利用性
  (1)単・混播草地における放牧利用回数の違いが、季節生産性と牧草密度に及ぼす影響
  (2)単・混播草地およぴオーチャードグラス単播草地の草地利用性

9.結果の概要・要約
 1)秋の利用法と永続性
  (1)ペレニアルライグラスの秋(8月下旬〜11月上旬)の利用法は、利用間隔を20-20-30日とすることで、植生を最も良く維持できた。 (表1)
  (2)放牧期問延長のための晩秋1回利用(11月上旬・70日)は、ペレニアルライグラス率が低下するので、好ましくない。(表1)
  (3)ペレニアルライグラスの越冬態勢に影響を及ぼすと思われる10月中・下旬の最終利用は、利用間隔を20-30日とすることで、翌春終了の低下を軽減できると考えられた。(表2)したがって、晩秋(10月中旬-11月上旬)の利用は、最終番草の生育日数を、その別の番草よりも長くする(最低30日)ことが望ましい。
  (4)ペレニアルライグラスの越冬前の草高を低くする放牧利用(重放牧)は、翌春の収量を低下させる傾向がみられるため、秋の利用は標準放牧圧で行うことが望ましい。 (図1)
 2)混播草地におけるペレニアルライグラスの植生維持
  (1)ペレニアルライグラス、オーチャードグラスおよびラジノクローバ混播草地を7年間実放牧で利用した結果、マメ科は利用4年目で激減したが、全乾物収量は年次変動があるものの7年目でも良く維持された。 (図2)
  植生維持には、オーチャードグラスの生育を抑える年間多回利用の9回区と秋重点利用の7回区が、効果があった。
  (2)混播草地における収最、茎数および茎重の草種間競争は、ペレニアルライグラスが、利用回数の増加により、茎数の競争力が強まり、牧草密度確保に効果があった。
 3)ペレニアルライグラス主体放牧草地の草地利用性
  (1)ペレニアルライグラスを年間多回利用する場合、混播利用は収量確保に、単播利用は季節別収量の平準化に、それぞれ効果が認められた。
  (2)利用草量で放牧草地の草地生産性を比較すると、ベレニアルライグラスの年間多回利用は、収最の低下(10〜18%減)を、高栄養価、放牧利用率の向上で、十分補う(6〜9%減へ)ことが可能であった。 (図3)
  ペレニアルライグラスは、単・混播のいずれの利用も、オーチャードグラス単播利用より効率的であった。
 以上のことより、ペレニアルライグラス主体放牧草地の利用法は、永続性、植生維持およ草地利用性からみて、年間9回或いは秋重点利用の放牧方式が有効であった。

10.成果の具体的数字

表1 造成後7年目草地の累積効果(乾物収量㎏/10a)
前年秋の利用同数
と利 用 間 隔
1〜3番草PR収量 年間合計収量 年間合計収量
中のPR収量
(%)
5/27 6/15 7/11 PR 全乾物
46 75 36 490 600 82
58 75 36 480 662 73
29 79 50 480 618 78
49 59 24 430 693 62
41 67 24 391 583 67
32 74 37 467 622 75

表2 10月中・下旬最終利用区の秋の利用間隔と翌春収量(乾物㎏/10a)
前年秋の
利用間隔
造成5年目草地 造成2年目草地
5/25 6/19 7/14 5/25 6/19 7/14
22 191 122 84 244 135
8 147 124 16 162 159
16 126 115 92 242 130
8 118 117 49 223 140


図1 秋の残草高と翌春収量


図2 放牧利用回数の違いによる収量の年次推移


図3 草種・放牧利用回数の違いによる草地利用性の比較

11.成果の活用面と留意点
 1)ペレニアルライグラスの栽培適地帝に限る。
 2)ペレニアルライグラスの永続性を確保するためには、秋の長草利用を避ける。
 3)オーチャードグラス主体放牧草地への簡易追播による、追播草種(ペレニアルライグラス)の植生維持に応用できる。

12.残された問題とその対応
 1)放牧草地における混播マメ科草の維持。
 2)集約利用方式による放牧草地の家畜生産性の比較。
 3)草地サイドからの家畜による放牧草採食量の簡易推定法の確立。
 4)オーチャードグラスと混播する場合の播種割合。