完了試験研究成績  (作成 64年1月)

1.課題の分類  食品 ナガイモ−流通利用技術
           北海道
2.研究課題名  特産果実・野菜の加工用素材開発 (2)ナガイモの利用に関する試験
3.予算区分  道単
4.研究期間   (昭和61年〜63年)
5.担当  中央農試園芸部流通加工科
6.協力・分担関係


7.目的
 ナガイモの利用法開発の一環として、乾燥粉末科および粉末の利用法を明らかにする。

8.試験研究方法
・試験材料 栗山町産ナガイモ
・試験方法
(1)乾燥粉末化
 乾燥方法
  自然乾燥(室温日光下放置 5日間)
  熱風乾燥(熱風温度・時間 30℃・48時間、65℃・24時間、90℃・8時間)
  真空凍結乾燥(凍結温度-40℃、棚温15℃、24時間)
  低温乾燥(-10℃でシリカゲルとともに容器内に密閉した)
 乾燥形態
  自然、熱風、真空凍結…剥皮後おろしがねですりおろし、とろろ状にしたものを厚さ約5mmに
                  なるようにシャーレに流し込んだ。
  低温乾燥…厚さ約1cm,5mm,2mm,1mmの切片とし、容器内に吊した。
(2)粉末の粘性改善〜粉末に増粘剤を添加し、粘性向上におよぼす効果を調べた。
 増粘剤…アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、α-デンプン
 加水率…(1)(2)とも粉末:水=1:4の割合で加水した。
 測定方法…(1)(2)とも加水粉末を混合均一化しレオメーターで圧縮引張強度を測定した。
(3)粉末利用〜真空凍結乾燥粉末を添加してそばを製麺し、麺の物性等をレオメーターにて測定した。
 製麺方法…そば粉、チホク小麦粉、ナガイモ粉末を配合し、混ねつ、圧延後簡易製麺機にて製麺した。

9.結果の概要・要約
(1)ナガイモの剥皮については水酸化ナトリウム浸漬、ブラッシングによる剥皮が可能で、処理条件は水酸
 化ナトリウム濃度5%で50℃5分、または75℃2分処理が適当である。
(2)乾燥粉末化については、自然、熱風、真空凍結、いずれの方法でも粉末化は可能だが、粉末の性質は
 乾燥方法別に異なる。加水粘性については真空凍結乾燥粉末が最も高く、次いで自然、熱風の順となり、
 また、65℃以上の熱風乾燥では変色が認められた。低温低湿下での乾燥は半乾燥状態までしか進行せ
 ず、粉末化は難しい。
(3)規格別の粉末化適性に関しては規格間で適性に大きな差はなく、規格外品、ハネ品(非売品)についても
 粉末化原料として十分利用できる。
(4)粉末の粘性に関しては乾燥前の加温処理、粉末への増粘剤の添加により加水粘性を増加させることが
 可能であり、さらに粉末の加水率を加減することにより加水粉末(とろろ)の粘性を調整することができる。
(5)粉末の利用については、真空凍結乾燥粉末は製麺原料として主原料に添加するとそば、うどんとも麺の
 物性改良に効果があり、とくにチホク小麦粉との組合せは麺の強度増加に有効である。添加割合は20%程
 度が適当でそれ以上に高めると茹時の溶出が大きくなる。

10.成果の具体的数字

表1  乾燥方法別粉末の性質
  乾燥前 乾燥方法
自然 熱風
(30℃)
熱風
(65℃)
熱風
(90℃)
真空凍結
重量減少率(%)   78.9 79.3 79.4 80.2 79.6
変色度   ± - ± -
圧縮強度 100 25 20 19 17 34
引張強度 100 13 13 13 11 23
注1)変色程度  +:強、±:多少、−:無
 2)加水時  圧縮引張強度は乾燥前の値を100としたときの比率


表2  増粘剤添加と粘性
    乾燥前 無処理 アルギン酸ナトリウム(%) ポリアクリル酸ナトリウム(%) α-デンプン
0.5 1 2 4 0.5 1 2 4 0.5 1 2 4
熱風乾燥
(65℃)
圧縮強度 100 17 18 19 24 32 20 21 24 34 22 23 26 31
引張強度 100 9 10 11 12 15 11 12 16 20 11 11 12 14
真空凍結
乾燥
圧縮強度 100 30 31 34 35 46 32 34 38 49 32 32 34 40
引張強度 100 19 23 25 31 45 24 27 32 49 25 26 26 33
注)加水時  圧縮引張強度は乾燥前の値を100としたときの比率


表3  原料配合比
記号\配合比 そば粉 チホク小麦粉 ナガイモ粉
A 25 25 0 20
B 25 25 5 22
C 25 25 10 24
D 25 25 15 26


表4  麺の物性
記号\項目 引張強度
(g/mm2)
引張弾性率
(×106dyne)
伸び率(%) 茹増重率
(%)
茹溶出率
(%)
官能評価
5(良)〜1(悪)
A 1.8 2.7 2.2 1.4 27.3 35.7 51.2 3.2 3
B 2.8 2.7 3.1 1.5 16.4 10.0 96.4 3.3 3
C 3.0 3.8 3.7 2.0 13.6 7.1 82.1 4.7 4
D 3.3 4.0 5.5 1.9 9.1 21.4 89.6 5.5 4
伸び率 切断時長さ−初めの長さ ×100
初めの長さ
茹増重率 茹後の重さ−生の重さ ×100
生の重さ
茹溶出率 茹溶出物の重さ ×100
生の重さ


11.成果の活用面と留意点
 真空凍結乾燥粉末は粘性が高く、増粘効果があるため、麺類をはじめ各種食品のつなぎとして利用価値がある。熱風乾燥粉末は製造コストが低く、菓子等の副原料として使用できるほか、若干の増粘剤のの添加により粘性を増大させれば、用途の拡大が期待できる。熱風乾燥を高温で行うと粉末が変色し、粘性が低下するので65℃以上の高温乾燥は避けるのが望ましい。

12.残された問題とその対応
 真空凍結乾燥粉末は加水後の粘性が高いため、食材としての利用価値は高いが、製造コストが高く、需要が制限される。今後は低コストで粘性の高い粉末を製造できる乾燥方法を開発することにより一層の需要拡大が期待できる。