【指導参考事項】
成績概要書(作成昭和64年1月)
1.課題の分類 総合農業 生産環境 土壌肥料 2-1-2-b 野菜 野菜 土壌肥料 流通利用適性 北海道 2.研究課題名 消費者二ーズを考慮したホウレンソウおよびトマトの内部品質指標 (消費者二一ズに応えた野菜の品質基準策定) 3.予算区分 道費(共同研究) 4研究期間 昭和60年、63年 (予備調査を含む)。 5.担当 道南農試土壌肥料科 6.協力・分担関係 女子栄養大(東京) 藤女子短大(札幌) |
.目的
近年、野菜に対する消費者の二ーズは多様化し、経済性や価格の安さより、栄養価、安全性、し好性などの内部品質を重視する傾向が生じており、このため、本試験では消費者の二ーズを考慮しつつ、生産者の技術対応が可能な範囲内で、夏どりホウレンソウおよびトマトの内部品質指標を策定する。
8.試験研究方法
道南農試:ホウレンソウおよびトマトを各種の環境条件下で栽培し、成分分析を行い、その変動実態を調査するとともに、環境条件の相違が各種成分含量に及ぼす影響を基礎的に検討する。
女子栄養大、藤女子短大:卸売市場から野菜を購入し、市販野菜の成分分析および官能検査を行なう。
9.結果の概要・要約
1)ホウレンソウの内部品質指標の策定に当り、安全性の面では硝酸が、栄養価の面ではビタミンCが、またし好性(食味)の面では還元糖が、それぞれ重要成分であると考えられた。
2)ホウレンソウの硝酸(N03)含量指標値は、各種の実態調査、栽培試験(図1)、官能検査結果に基づき、またFAO/WHOの食品添加物の基準値などを考慮し、300mg/100gFW以下とした。
3)夏どりホウレンソウのビタミンC含量指標値は、各種の実態調査(図2)と栽培試験で得られた結果に基づき、30mg/100gFW以上とした。
4)葉柄部屈折計示度は、ホウレンソウのビタミンC含量の簡易判定が可能であり、その値が3.0%以上であれば、ビタミンC含量の指標値以上になった(図3)。
5)本試験では、ホウレンソウの還元糖含量とし好性の間には相互関係が認められず、還元糖含量の指標値策定は不可能であった。
6)トマトの指標値策定に当っては、し好性を重視し、その関連成分としては還元結含量、屈折計示度、滴定酸度が重要であると考えられた。
7)トマトの内部品質指標値は、各種の官能検査に基づき、「屈折計示度5%以上で、かつ糖酸比12以上」とした(図4)。
8)以上の結果と、生産者の栽培指針および消費者の選択指針を一括して取りまとめ、夏どりホウレンソウ、トマト別に総括表を作成した(表1,2)。
10.成果の具体的数字
図1 ホウレンソウの硝酸含量と収量の関係
図2 ホウレンソウのビタミンC含量の変動実態
図3 ホウレンソウの屈折計示度(葉柄部)とビタミンC含量
(1985〜88東京、札幌)
図4 トマトの官能検査(総合評価)と屈折計示度
および糖酸比の関係(1987.東京)
表1 夏どりホウレンソウの内部品質指標値とその栽培および選択指針
項目 成分 |
指標値 (mg/100gFW) |
簡易判定法 | 将来目標 | 生産者の栽培指針 | 消費者の選択指針 |
硝酸 | 300以下 | 検討中 | @指標値の再検討 (より低く) A迅速測定法の開発 |
@N施肥量は施肥基 準量を越えないこと A土壌の残存Nを評 価し、Nを減肥する B土壌水分は過乾、 過湿にならないよう 留意する C遮光処理は行わない D適品種を選択する |
@葉色の濃いもの を選ぶ A低硝酸と高ビタミ ンCを求める場合に は、葉/茎比の高い ものを選ぶ |
ビタミンC | 30以上 | 葉柄部の屈 折計示度(Brix) 3.0%以上 |
@指標値の再検討 (より高く) A迅速測定法の開発 |
表2 トマトの内部品質指標値とその栽培および選択指針
指標値 | 将来目標 | 生産者の栽培指針 | 消費者の選択指針 | |
屈折計示度 糖酸比 |
5%以上 12以上 |
@非破壊方式による迅速 測定法の開発 A成分の個別表示 |
(現状) @完熟出荷を心がける A適品種を選択する |
@熟度の高い(赤い) ものを選ぶ |
11.成果の活用面と留意点
(1)指標値成分の測定に当っては、収穫後の早い時期に行なうこと。
(2)測定したホウレンソウの屈折計示度は、ビタミンC含量に換算しないこと。
12.残された問題とその対応
(1)指標値を達成するための栽培管理法(施肥、水分管理、品種など)を確立する。
(2)各成分の迅速測定法を開発する(特に、トマトは非破壊分析法を確立する。)