【指導参考事項】
完了試験研究成績(作成63年12月)
1.課題の分類  総合農業 経営
          北海道 総合農業 経営
2.研究課題名  地域農業発展の仕組みと条件−北海道の水田地帯を中心に−
3.予算区分  経常
4.研究期間  (昭61〜63年)
5.担当  北海道農試・農村計画・
     農業組織研 長谷山俊郎
6.協力・分担関係  なし

7.目的
停滞または後退している多くの市町村農業を内部から打開を図るために、北海道における地域農業発展の仕組みと条件を明らかにすることを目的とする。

8.試験研究方法
1)農業が進展している市町村と後退している市町村を明らかにし、その中から、主要調査対象地を選定し、地域農業展開の主体的要素・要因を解明する。
2)主体的要素の相互作用と連携の仕方を、社会システム論的視点から検討し、地域農業発展の「地域システム」の仕組みと形成条件を明らかにする。

9.結果の概要・要約
1)生産農業所得統計分析と農業センサスを用いた主成分分析によれば、農業の進展・後退は、市町村における「農業者の活力」の大小と相関している。それはまた、共同意識がつちかわれた農業者の多少とも関連を持っている。
2)機関の指導機能の弱い町村(幌加内町)を対象とした、類型化した村落間の比較によれば、農業は村落のまとまり(細織性と統括性)が大きいほど維持され、小さいほど崩れている。したがって、地域農業振興には、村落の活動を旺盛にし、そのまとまりが大きくなるようにすることが重要である。
3)他方、鹿協の指導様能が強く、村落単位の営農集団を全村落に形成し、一定の農業展開がみられるところ(北竜町)の分析によれば、農業活動は、@戦前から協同組合活動が盛んな村落、A共同理念等への学習参加者が多い村落、B構成員の意欲を引き出しながら統括を図っている村落、などで勝れている。それゆえに、地域農業振興には、農協と村落の連携した活動が重要であるが、村落目体の主体的活動を促す取り組みも大切である。
4)さらに、道内堀指の「総合野菜産地」の形成を図ったところ(富良野農協管内)では、農協や村落の取り組みのみならず、生産者主体の作目組織が産地化過程で生じる課題を克服する革新性と、野菜を地域内に広める推進性を有していることが、地域農業の展開に作用を与えている。
5)以上のことから、@北海道における地域農業の展開に必要な主体的要素は、A統括機能を有する村落組織、B計画を作成・推進しうる農協、C生産者主体の作目細織、の三者が摘出できる。Aその三者が有機的に連携した「地域システム」の形成による農業活動は(概念図参照)、構造的に強く変化にも対応できるので、停滞・後退を内部から打開する機能を有する。B「地域システム」が機能を発揮するには、村落では調整を図りうるムラリーダー、農協では計画を作成・推進しうる機関のリーダー、作自組織では産地の請問題に対処しうる細織リーダーの役割が重要であり、それらの育成を欠かせない。C同時に、地域の構成員には、A学習・活動による「共同性」、B視察研修等による「革新性」、C取り組みを地域内に広める「推進性」、のつちかいが必要である。Dそれらを育てる行動が要素主体間の信頼を生み、「地域システム」の様能発揮に作用し、地域農業の発展に寄与する。

10.成果の具体的数字

地域農業発展を担う「地域システム」の基本的仕組み(概念図)

11.成果の活用面と留意点
 「地域システム」化を図る前段として、@村落組織、生産者主体の作目組織、各リーダー等々の育成と、A農協に対して地域農業計画作成方法と推進の仕方の指導が必要である。

12.残された問題とその対応
 北海道における村落の特質、および各要素主体の主体化の仕方の解明などが残された。したがって、この課題は2年間延長し、それらの解明に取り組む。