【指導参考事項】
成績概要書(統一様式)　　　(作成平成2年1月)
1.課題の分類　　果樹　ブドウ　栽培　Ⅱ-2
　　　　　　　　　　北海道　果樹　ブドウ　栽培
2.研究課題名　　醸造用ブドウの整枝法試験
3.予算区分　　道単
4.研究期間　　昭和55年〜平成元年
5.担当　　中央農試園芸部果樹科
6.協力分担関係　　なし

7.目的
醸造用ブドウの栽培において、本道のような積雪寒冷地に適合する整枝法を明らかにする。

8.試験研究方法
(1)整枝法及び栽植距離
整枝法 栽植距離 10a当たり樹数
1　片側水平コルドン 2.5m×2.4m 167樹
2　両側水平コルドン 〃 〃
3　短幹多主枝 〃 〃
4　片側水平コルドン(更新) 〃 〃
5　片側水平コルドン(密植) 2.5m×1.6m 250樹
6　両側水平長梢(単梢) 〃 〃
7　両側水平長梢(複梢) 〃 〃
8　長幹株 〃 〃
9　棚一本主枝 3.6m×5.4m 51樹
(2)供試品種　「ツパイゲルトレーべ」、「ミュラー　トルガウ」
(3)供試台本　テレキ8B
(4)接木年次　昭和55年
(5)栽植年次　昭和56年4月
(6)供試樹数　1区6樹
(7)調査項目　樹体生育、雪害、寒害、収量、果実品質など

9.結果の概要・要約
(1)耐雪性は、短幹名主枝整枝及び片側水平ゴルドンの各整枝で優った。棚一本主枝整枝及び両側水平長梢(単梢)、両側水平長梢(複梢)両整枝で劣り、両側水平コルドン整枝、長幹株整枝もやや劣るものと思われた。
(2)耐寒性は、短幹名主枝整枝及び片側水平コルドン(更新)整枝で優った。
棚一本主枝整枝及ぴ長幹株整枝で劣り、両側水平長梢(単梢)、両側水平長梢(複梢)両整枝でもやや劣った。
(3)生産性は、「ツパイゲルトレーべ」では棚一本主枝整枝で劣り、両側水平長梢(単相)整枝、両側水平コルドン整枝でもやや劣ったが、その他の整枝では大きな差はなかった。「ミュラー　トルガウ」では寒害の影響が大きく、特に棚一本主枝整枝で劣り、片側水平コルドン(密植)整枝、長幹株整枝でも劣った。短幹名主枝整枝、次いで両側水平良梢(複相)整枝及び片側水平コルドン(更新)整枝で良好であった。
(4)果実品質は、棚一本主枝整枝、両側水平長梢(単梢)整枝で糖度のやや低い年があったが、そのほかの整枝では明らかな差はなかった。
(5)これらのことから、本道においては、片側水平コルドン整枝、片側水平コルドン(更新)整枝、短幹名主枝整枝及び両側水平長梢(複梢)整枝が適合すると考えられた。
(6)栽培性は、両側水平長梢(複梢)整枝で優り、短幹名主枝整枝で劣った。
(7)本試験の結果から、冬期の最低気温、積雪深による整枝法と品種の適応表を作成した。

10.成果の具体的数字
第1表　芽数、新梢数、収量/a及び果実糖度(昭和62年〜平成1年平均)
品
種		 項目
/整枝法		 えき
芽数		 枯死芽数 生存
芽数		 新梢数 収量 果実糖
度(%)
折損 寒害 計 果房数 重量(kg)
ツ
バ
イ
ゲ
ル
ト
レ
ー
ベ		 1　片側水平コルドン 773 41 194 235 539 359 564 82.9 18.7
2　両側水平コルドン 834 33 230 263 572 337 530 69.2 18.6
3　短幹多主枝 954 56 264 320 634 395 636 90.6 18.8
4　片側水平コルドン(更新) 823 30 283 312 512 329 558 74.9 18.6
5　片側水平コルドン(密植) 803 32 235 267 537 370 588 90.4 18.5
6　両側水平長梢(単梢) 487 132 97 229 257 261 368 61.6 18.1
7　両側水平長梢(複梢) 984 161 296 457 527 377 627 89.0 18.4
8　長幹株 943 17 412 431 513 360 521 75.3 18.4
9　棚一本主枝 333 7 119 127 206 116 193 24.2 18.2
ミ
ュ
ラ
ー
ト
ル
ガ
ウ		 1　片側水平コルドン 466 32 112 145 322 216 351 37.1 18.0
2　両側水平コルドン 572 32 136 169 403 228 416 52.5 17.9
3　短幹多主枝 664 14 136 150 514 265 479 63.7 17.8
4　片側水平コルドン(更新) 499 3 103 106 392 239 453 57.4 18.0
5　片側水平コルドン(密植) 416 42 82 124 291 193 272 24.7 18.3
6　両側水平長梢(単梢) 521 61 172 234 288 181 327 39.6 17.8
7　両側水平長梢(複梢) 820 79 200 279 541 306 477 57.7 18.4
8　長幹株 417 54 107 161 256 157 253 27.2 18.5
9　棚一本主枝 237 22 62 84 152 83 199 19.7 17.3

第2表　特性評価表
項目/
整枝法		 耐雪性・耐寒性 生産性 果実
品質		 栽培技術 栽培労力
耐雪性 耐寒性 回復性 Z・g M・T 整枝の
難易		 病害虫
防除		 剪定 枝梢
管理		 土壌
管理
片側水平コルドン ○ ○ △ ○ △ ○ ○ ○ ○ ○ ○
片側水平コルドン(更新) ○ ○ ○ ○ ○ ○ △ ○ △ ○ ○
短幹多主枝 ○ ◎ ○ ○ ○ ○ ▲ △ △ ▲ ▲
両側水平長梢(複梢) △ △ ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ◎ ○ ○
注1)Z・g:ツバイゲルトレーベ、M・T:ミュラー　トルガウ
　2)評価基準は、◎:優る、○:並〜良、△:やや劣る、▲:劣るとした。

第3表　冬期の最低気温、積雪深による整技法と品種の適応表
　　　　　　　　最低気温
　　　　　　　積雪深(cm)
整枝法		 -15℃以上 -15℃〜-20℃ -20℃〜-25℃ -25℃以下
120
以上		 60〜
120		 60
以下		 120
以上		 60〜
120		 60
以下		 120
以上		 60〜
120		 60
以下		 120
以上		 60〜
120		 60
以下
片側水平コルドン A A A A B   B C   C    
片側水平コルドン(更新)         A B   B C   C  
短幹多主枝           A   A B   B  
両側水平長梢(複梢)     A     B     C      
注1)品種A:耐寒性のやや低い品種(ミュラー　トルガウ並)、B・Cを含む。
　　　　　B:耐寒性の中程度の品種(ツパイゲルトレーぺ並)、Cを含む。
　　　　　C:耐寒性のやや高い品種(セイペル5279及ぴセイペル13053並)。

11.成果の活用面と留恵点
(1)整枝法と品種の適応表における最低気温及ぴ積雪深は平年値を用いるものとするが、実際の栽培に当たっては、特に寡雪時期の最低気温や年較差を考慮すること。

12.残された問題とその対応
(1)整枝法、品種、栽培地域に応じた適正着果量