【指導参考事項】
完了試験研究成績                (作成平成2年1月)
1.課題の分類  総合農業 生産環境 土壌肥料 4-2-1
          農業環境 環境資源 気象 生態反応 2-1-3
          北海道 土肥環保 環境保全 大気
2.研究課題名  農作物に対するSO2とNO2の混合接触による影響
          (SO2とNO2の複合汚染による生育等阻害要因解析試験)
3.予算区分  道費
4.研究期間  (昭和61年〜平成1年)
5.担当  道立中央農試環境資源部環境保全科
6.協力分担  なし

7.目的
農作物に対するSO2とNO2の複合汚染による影響を検討し、大気汚染防止対策上の資とする。

8.試験研究方法
(1)試験構成と供試作物
 急性害(実験a);ソバ、アカクロ一バ、大豆、水稲、オーチャードグラス
 慢性害(実験b);ソバ、アカクローバ
(2)栽培法
1/5000aポットで、牧草は2ヵ月間、他の作物は2週間〜1ヵ月間程度栽培し、実験に供した。
(3)接触条件
自然光型人工気象室(温度25℃)を使用し、単独区(SO2,NO2)と混合区(SO2+NO2、以下mix区)を設け、栄養成長段階でのガス接触を行った。具体的条件を表に示した。
(4)調査項目
 急性害;可視被害、蒸散量、S含有率。
 慢性害;乾物重、茎/葉比、炭水化物、窒素化合物、葉汁の分析。
表 ガス濃度、接触時間


実験No. a1 a2 a3 a4 a5 a6 a7 a8 a9 a10
接触日数 0.5 1 2 5 5 1 2 2 2 1
NO2(ppm) 6 4 2 5 2 2 2 1 1 1
SO2(〃) 0.5 0.5 0.5 0.3 0.3 0.3 0.2 0.2 0.2 0.2


実験No. b1 b2 b3 b4 b5 b6 b7
接触日数 14 7 6 6 8 18 21
NO2(ppm) 2 2 2 1 1 0.5 0.1
SO2(〃) 0.3 0.3 0.2 0.2 0.1 0.05 0.05

9.結果の概要・要約
ソバ、アカクローバを主体に1〜2ヵ月間栽培した5種類の作物を供試し、SO2とNO2の単独および混合のガス接触実験を人工気象室内で1日〜3週間、数回にわたり行った。その結果、単独と混合の接触による影響の違いについて、急性害の面から被害程度や作物間差、慢性害の面から生育抑制やその要因について、それぞれ検討した。
(1)急性害(可視被害)
①混合接触による作物の可視被害の感受性の難易は、SO2単独接触と類似の傾向がみられた。また、単独接触で被害を受け易い作物は、混合接触においても被害を受け易い傾向を示した。
②可視被害の程度はSO2単独接触と同程度がやや小さかった。
③この原因として、蒸散量の低下によるガス吸収能の抑制が関与していた。
(2)慢性害(生育抑制)
①慢性害による生育抑制の影響に混合接触で大きく、茎/葉比も低下した。
②混合接触による体内の炭水化物は葉で高く、茎で低い傾向を示しており、このことは窒素代謝にも波及し、生育抑制に加え、葉の同化産物の転流に対してストレスを大きくしていることが示唆された。
③混合接触による葉汁のpHの低下、EC、全酸の増加など、葉の生理状態の変化からみて、害作用は単独接触より大きいことが明らかになった。
④ソバ、アカクローバに対するSO2とNO2の同一濃度の混合ガス接触による生育抑制はおよそ9割がSO2、1割がNO2によるものと推定された。

10.主要成果の具体的数字
表-1 各作物別の可視被害の難易(実験a1〜a5)
      区
      実験No.

作物
NO2 SO2 mix
a a a a a a a a a a a a a a a
1 2 3 4 5 1 2 3 4 5 1 2 3 4 5
ソバ
アカクローバ
大豆
オーチャードグラス
水稲
●:被害有り、○:被害無し

表-2 急性害における被害程度、
蒸散量、S含有率の平均序列
項目 N02 S02 mix
被害程度 1.5 2.3 2.2
蒸散量 1.8 2.7 1.5
S含有率 1.0 2.7 2.3
各項目(小→大、1→3)

表-3 慢性害における各種調査の平均序列
項目(部位) 作物 N02 S02 mix

乾物重 - 2.9 2.0 1.1
茎/葉比 - 2.7 2.3 1.0



クロロフィル(葉) - 2.1 2.8 1.1
炭水化物(葉) ソバ 1.9 1.6 2.5
 〃  (茎) 2.3 2.6 1.1
N含有率(葉) 1.7 1.6 2.7
 〃  (茎) 2.1 1.9 2.0
炭水化物(葉) アカクローバ 2.7 1.7 1.6
 〃  (茎) 2.8 2.2 1.0
N含有率(葉) 1.8 2.2 2.0
 〃  (茎) 1.7 1.3 3.0




pH - 2.8 1.8 1.4
EC - 1.0 2.1 2.9
全酸 - 1.1 1.9 3.0
水溶性N - 1.9 1.6 2.5
NH4 - 1.6 1.5 2.9
マロンジアルデヒド - 1.5 1.9 2.6
各項目(小→大、1→3)


図-1 ソバ、アカクローバにおけるガス濃度とNAR比の関係

11.成果の活用面と留意点
(1)SO2やNO2の管理監視体制行政の基礎資料となる。
(2)SO2とNO2を主体とした複合汚染に対する指標作物としては、SO2と同じソバが適当である。

12.残された問題とその対応
複合汚染による農作物の品質への影響
気象環境要因と被害程度の関係